音を頼りに生きている人(視覚障害者)にとっての航空機騒音とは ―大田区議会中間報告

第3回定例会に「羽田空港新飛行ルート・都心上空低空飛行の見直し」を求める陳情8本!

 

2020年3月から運用をはじめようとしている新飛行ルート案では、南風時の15時から19時まで、埼玉南から羽田に向かって南下するコースは品川・大井町では頭上300m、八潮団地では200mという低さで着陸態勢に入ります。地下鉄並みの80デシベルという騒音が2分ごとに聞こえる生活とはどんなものでしょうか。陳情は新飛行ルートによる騒音が、保育園の子どもの外遊びを制限することになるのではないか、人口密集地に飛行機からの落下物があれば危険過ぎるのではないかなど、新飛行ルート案への不安によるものばかりです。

大田区議会には毎回、このように羽田空港新飛行ルート案に関する陳情が多数寄せられますが、残念ながら、いつも全て不採択になっています。今回も8本すべてが不採択でした。
会派別にみると、陳情に不採択を表明したのは、自民党、公明党、令和大田区議団、つらぬく会、無所属の会、大田区民の会令和、都民ファーストでした。

今回、陳情の中で不安を感じたのは「羽田空港機能強化にともなう騒音で、視覚に障害のある方たちの外出困難を心配する陳情」というものです。視覚障害者は自分のまわりの音から状況を判断しながら歩くので、飛行機の騒音が周りの音をかき消してしまったら、歩くことができなくなるというのです。
視覚障害者への影響はもちろんあらゆる生活の場面を想像し私たちは真剣に考えないといけません。
品川在住の視覚障害をお持ちの方にお話を聞かせてもらい、その話をもとに討論をしたのでご報告いたします。

羽田空港の機能強化 新飛行経路(案)における航空機騒音(大田区空港まちづくり課作成)

【「23区羽田問題プロジェクト」緊急学習会】を開催します。
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「羽田空港機能強化にともなう騒音で、視覚に障害のある方たちの外出困難を心配する陳情」の採択を求める討論をいたします。

視覚障害の方々は、外出時、「音」でまわりの状況を判断するのをご存知でしょうか。私に話を聞かせてくださった品川在住の視覚障害者の方は、車の音、自転車の音、周りの音全てに神経を集中させて外を歩くそうです。音のしない信号機のところでは、車の音で、どの方向が青なのかを判断して横断歩道を渡るそうです。音のしない電気自動車は視覚障害者にとっては怖い存在だといっていました。街中の雑踏のあらゆる音を聞き分けて安全を確保しながら歩くのです。

ですからたとえば80デシベルにもなる東海道線の高架下では自分の位置がわからなくなるそうで、誘導ブロックがあればそれを頼りにして自分の位置を確認できますが、もし誘導ブロックがないところであれば、激しい騒音にさらされると自分がどこにいるかわからなくなり、全く動けなくなるそうです。点字ブロックは全ての道にあるわけではなく、道路の方に向かって進んでしまうかもしれない恐怖感を味わうこともあるそうです。縁石に注意をしながら、車の音やその他の音を聞き分ける中で、安全だと思われるところを歩いていくのです。

2020年3月から運用開始予定の羽田新飛行ルートでは、南風時の15時から19時までのAⅭ滑走路への着陸ルートでは埼玉県南部上空から南下した航空機は、羽田に向かって低空飛行をするわけですが、たとえばⅭ滑走路に向かうルートの大井町付近では東京タワー(333m)よりも低い約305m、そして大井埠頭・八潮団地では約200mの超低空を大型機が1時間に30機、2分ごとに1機、飛行します。80デシベルという騒音です。

マッサージをなりわいとしている視覚障害者の方もいらっしゃいます。収入のある仕事の場合にはガイドヘルパーをつけてもらえないことになっていますが、上空の爆音が周りの音を全てかき消すような80デシベルが2分間隔にあるとすれば、とても1人では外を歩くことはできないでしょう。

もし大田区にこれまで、視覚障害者から苦情や相談がないとすれば、視覚障害者は情報障害者といってもよいほど、あらゆる情報が少なく、したがって新飛行ルートについての情報がなかったり、具体的な音の大きさを体験していないので、苦情や抗議のしようもないし、どこに問合せてよいのか、わからないのが実態ではないかとのご意見でした。区は大田区の視覚障害者の団体などに新飛行ルートの周知をしたでしょうか。

品川区議会では頭上から飛行機の爆音がするようなことを想定して、視覚障害者団体から提出された、「視覚障害者の外出の安全・安心を確保するための対策を講じるよう求める請願」が採択されています。
確かに新飛行ルート案では騒音被害は品川区が最も大きな被害をこうむることが予想されますが、それだからいいということではありませんし、大田区においてもⅭ滑走路北側からの着陸、またB滑走路西向き離陸の騒音に対しては、確かな騒音想定がまだ示されておらず、影響はわからないのです。

羽田空港の歴史において、最も国と密接な関係を築いてきている大田区こそが都民全体の生活を視野に入れて発言していくべきではないでしょうか。
音を頼りにして生きている人間がいることを忘れないでほしいと語られた言葉が胸に響きました。生活圏における騒音問題は視覚障害者の人権に関わる大きな問題です。

十分な調査をし、それによって新飛行ルートの見直しをはじめ、様々な対策を国と協議することを求め、この陳情の採択を求めます。

 

 


 

東京・生活者ネットワーク
「23区羽田問題プロジェクト」緊急学習会

日時 ● 2019 年9 月30 日(月) 15:00 ~ 17:00
場所 ● 東京・生活者ネットワーク 4F 第1・第2 会議室
新宿区歌舞伎町2-19-13 ASKビル4階
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講師 ● 杉江 弘さん( 航空評論家 エッセイスト 元JAL機長)
主催 ● 東京・生活者ネットワーク

 

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