国連「子どもの権利条約」批准25周年記念シンポジウム のご報告

広げよう!子どもの権利条約
つくろう!子ども条例

シンポジウム

子どもの相談・救済・回復=子どもの権利擁護機関を位置づけよう

11月1日 東京都議会 議会棟6階 第1会議室にて
主催:子どもの権利条例東京市民フォーラム・ネットワーク

 

いじめや体罰、虐待は深刻な権利侵害です。一刻も早くなくすためにも、支援体制と同時に「子どもの権利」の保障が急がれます。シンポジウムでは人権擁護の現場からの報告を聞き、権利擁護の意義、安心して相談できる体制の必要性を確認しました。国連子どもの権利委員の大谷美紀子さんが、「まずは人権教育」と言われましたが、日本が全ての子どもたちに「独立した人格と尊厳を持つ権利の主体であること」を伝えきれていない現実を重く受け止めました。

 

荒牧重人さん

 

 

・片岡智子さん(東京都子供の権利擁護専門相談事業 子供の権利擁護専門員/弁護士)
子供の権利擁護専門相談事業は2004年から東京都の事業として始まる。専門員3名(児童福祉に関する学識経験者1名と子どもの権利に携わる弁護士2名が選任)と電話相談員とで、電話、面接相談、関係機関との調整を行う。東京都教育庁や区市町村教育委員会とも協力関係が形成されている。子どもが児童養護施設に入所するときには「子どもの権利ノート」と一緒に相談はがきが配布され、子どもが直接相談できるようになっている。2018年度の権利侵害に関する相談は215件、専門員への引継ぎ件数は30件。

 

・半田勝久さん(世田谷子どもの人権擁護機関「せたがやホッと子どもサポート」子どもサポート委員/日本体育大学准教授)
子どもサポート委員3名と補佐するために社会福祉士、精神保健福祉士などの相談・調査専門員5名。子どもの人権を擁護し、権利を侵害された子どものすみやかな救済を図ることを目的とし、相談、助言、支援をする。独立性と権限を持ち、調査、要請、意見を述べることができ、区の機関は協力しなければならない。電話、メール、面接、FAX、その他でも相談は可。2018年度の相談件数は431件で、対人関係の悩みが多い。

 

・野村武志さん(西東京市子どもの権利擁護委員代表委員/東京経済大学教授)
子ども条例に基づいて「子ども相談室」を開設。弁護士、心理士など多職種による「子ども権利擁護委員」と「子どもの権利擁護相談・調査専門員」とで6名で、相談や調査、子どもの立場にたって応援、救済にあたる。自治体の制度の改善につなげる。条例の意義は“子ども目線が大事にされること”で、ネックになりがちな個人情報も子ども目線ということで調査できる。市は協力しなければならない。

 

・喜多明人さん(チャイルドライン東京ネットワーク代表/早稲田大学教授)
東京都が2019年3月「東京都子供虐待防止条例」を制定したことは評価。「保護者は、体罰その他の子供の品位を傷つける罰を与えてはならない」と高度な暴力規制。精神的暴力を前提とした「体罰(=心罰)防止ガイドライン」も必要。(教師の暴言等)
結愛ちゃん、心愛ちゃん事件→文科省「安心して相談してください」との声明を出したが、教師の負担は大きくなる。スクールカウンセラーは、学校での共有を必要とするため、守秘義務は守られない。
チャイルドラインが旨とする「傾聴」、守秘義務、指導・助言はしない、切りたいときは切ればよいとする、主体は子どもというスタイルは重要。
“だれにも相談できない”と思う子どもは何によって“安心感”を得るのか、課題。

 

喜多明人さん

 

・大谷美紀子さん(国連・子どもの権利委員会委員/弁護士)
国連子どもの権利委員会に18人の委員、条約が守られているかどうかの監視をしている。24年間のうちに4回の審査と勧告。日本がずっと解決できていないのは「子どものための総合法がないこと」「独立の監視機関がないこと」。人権擁護のための監視機関には、独立性を確保するために「権限」と「予算」が必要である。政策提言や救済が大事だが、まず「人権意識」の浸透、人権教育が重要。

 

大谷美紀子さん

 

荒牧さんと