自分らしく生きるって? ジェンダー問題を考える

11月16日、OTA未来カフェのテーマは「ジェンダー問題」。普段意識はしていなくても私たちの生活にかなり深く浸透している概念、たとえば“性別役割分業意識”は私たちを生きづらくしているのかもしれません。政治の世界や行政機関においても政策決定に関わる人は圧倒的に男性が多い日本。そのせいか女性の視点で捉えた社会のニーズが満たされていないのではないでしょうか。具体的な事例に「そうそう」、「確かに!」と気づかされ、改めて社会の在り方を考えさせられた刺激的なひとときでした。

 

OTA未来カフェ風景

 

【社会は変わってきているか】
パリテ・カフェの活動をされている西川有理子さんからジェンダーの視点での日本の課題と「当たり前を疑う」視点を教えていただきました。

パリテ・カフェとは?

 

パリテ・カフェ

 

・大田区防災会議 50人中女性は5人、発言するのは女性ばかり。男性は各団体の充て職。審議会・管理職・政治家、圧倒的に男性が多い。
・性別役割分業意識、これでいいの?→ 女には育児、介護の仕事が向いている?
・女はきれいで優しければ、いつか素敵な王子様が現れて幸せにしてくれる。
  →しかし、最近、変化してきたプリンセスたち
   アナと雪の女王・・・美しさが求められてきていない
   アリーテ姫の冒険・・・積極的で強い姫
・「男女共同参画推進法」が2018年に成立。男女の候補者の数ができる限り均等になることをめざすと明記された。→マスコミが男女比率を取り上げるようになってきた。

 

日本の課題
ジェンダーギャップ指数で日本は149か国中、110位。カナダは新内閣の数が男女半々。
政策決定の場に極端に女性が少ない。

 

管理的ポストの男女比率

 

閣僚の女性比率

 

選択制夫婦別姓、医科大学不正入試(女性差別)、シングルマザーの貧困(社会保障が男性稼ぎ型モデル)、避難所運営のあり方(防災会議において女性の意見が活かされない)、
パンプスを強要する職場、メガネの使用を禁止する職場(女性はこうあるべきというステレオタイプから抜け出せない日本の風土)、男性の支配欲・・・

 

非正規の7割は女性

 

SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の17の項目の中の一つに「ジェンダー平等の実現」とある。持続可能な社会をめざしていこう。

 

持続可能な開発目標 SDGs

 

ジェンダーの視点から社会を見直してみよう!おすすめの絵本など

●「ピンクがすきってきめないで」ナタリー・オンス 講談社

ピンクがすきってきめないで (講談社の翻訳絵本)

 

●「おんぶはこりごり」アンソニー・ブラウン 平凡社

おんぶはこりごり

 

●「びくびくビリー」アンソニー・ブラウン 評論社

びくびくビリー (児童図書館・絵本の部屋)

 

●「ラチとらいおん」マレーク・ベロニカ 福音館

ラチとらいおん (世界傑作絵本シリーズ)

 

●「スモールさんはおとうさん」ロイス・レンスキー 福音館

スモールさんはおとうさん

 

●「としょかんねずみ3」ダニエル・カーク 瑞雲舎

としょかんねずみ3 (サムとサラのせかいたんけん)

 

●「男が痴漢になる理由」斎藤章佳 イーストプレス

男が痴漢になる理由

 

●「反省させると犯罪者になります」岡本茂樹 新潮新書

反省させると犯罪者になります (新潮新書)

 

 

【絵本で考えるジェンダー問題】

絵本の研究をしている堀淳子さんからも、絵本をたくさん紹介していただきました。

●「しげちゃん」室井滋・作  長谷川義史・絵 金の星社
女の子だけれど「しげる」という名前。男の名前という固定概念にしばられ、名前を嫌うがお母さんから名前に込められた想いを聞いて納得。自己肯定感に通じる。

しげちゃん

 

●「ゆうかんなアイリーン」ウィリアム・スタイグ・作  セーラー出版

ゆうかんなアイリーン

 

●「ぼくは赤ちゃんがほしいの」シャーロット・ゾロトウ・文  童話屋
人形遊びがしたい男の子。父親はじめだれも理解してくれないが、おばあちゃんだけはわかってくれる。性別役割分担の固定概念にとらわれていることに気がつかされる。

ぼくは赤ちゃんがほしいの

 

●「レッドあかくてあおいクレヨン」マイケル・ホール 子どもの未来社

レッド あかくてあおいクレヨンのはなし

 

●「ふたりママの家で」 パトリシア・ポラッコ・作 サウザンブックス社

ふたりママの家で

 

●「しげるのかあちゃん」 城ノ内まつ子・作 岩崎書店

しげるのかあちゃん (えほんのぼうけん)

 

●「女と男のちがいって?」ブランテルグループ・文  あかね書房
性別役割分業を刷り込まれている状況を考えさせられる。40年前、スペインにて、民主的な国作りにふみだそうとして子どもたちのために作られた絵本。

女と男のちがいって? (あしたのための本)

 

どれも身近な問題から社会通念を疑ってみることの大切さを教えてくれる、優れた絵本でした。


 

お二人のお話からは、日本のジェンダー平等の意識が先進国の中では相当に遅れていることを痛感しました。しかし北欧も20年前は今の日本と変わらなかったといいます。意識や習慣、そして社会の仕組みを変えるために政策を作った北欧、それに対して何もしてこなかった日本。

 

平等と公平のちがい・積極的是正処置

 

今、LGBT等、マイノリティーの問題がクローズアップされてきていますが、だれもが自分らしく、力を発揮できる社会になるためには、一人ひとりが意識を替えていくこと、そしてパリテ・カフェがめざすように、政策決定の場に男性と同数の女性を送り込むことができたらどんなにいいでしょう。政治が社会を形作るのですから。たとえば制服において、ズボンを選択することができるようにした世田谷。社会は少しずつ変わってきているし、変えるチャンスです。大磯町議会は男性女性の比率が半々だそうです。日常の「当たり前を疑う」ことを心がけながら、女性の政治参加を呼び掛けていきたいと思います。