「子どもの人権擁護について」 大田区議会第4回定例会報告

大田区議会・第4回定例会が11月27日~12月6日まで行われました。
今回の一般質問では「子どもの人権擁護」について取り上げました。その全文と答弁も含めてご報告いたします。

 

 

 

子どもの人権擁護について
公的第三者機関「子ども人権オンブズパーソン」の設置の必要性

教師同士でのいじめがマスコミで大きく取り上げられましたが、どんな職場であっても「いじめ」はめずらしくありません。ストレス社会でしかも閉鎖的な組織の中、抑圧された不満の行き場が人への攻撃、あるいはうちに閉じこもるなど、精神のバランスを欠いてしまう状況は散見されます。またパワハラ、セクハラなどの大人の社会の人権侵害も大きな問題です。

子どもの状況も深刻です。2018年度の文科省の調査では小中高校でのいじめの認知件数は54万件を超え、小中高生で自ら命を絶っている子どもは332人、小中学校の不登校の児童生徒数は16万人を越え、高校生で5万人、中途退学者が4万8千人、暴力行為は小中高校で発生件数が7万件を超え、小学校で特に増加。警視庁が児童虐待の疑いで児相に通告した件数が8万人を越えました。通告内容では暴言を浴びせたり、子どもの前での夫婦間のDVなどの心理的虐待が全体の71%、身体的虐待が18%、ネグレクトが10%でその他に性的虐待もあります。全ての数値において増加、過去最高値を更新という大変深刻な状況です。大田区においても小中学校でのいじめ認知件数は300件をゆうに超え、不登校も500人を上回り、虐待対応件数も1000件を数えるなど、しかもそれぞれ増加の一途です。

子どもたちがどれだけのストレスを抱え、苦しんでいるか、個々の問題でもありますが、複雑に絡み合った社会全体の問題でもあります。貧困が背景にあるネグレクトによってためこまれるストレス、経済的には豊かでも、家庭における過干渉、「競争主義」「失敗をしてはならない、完璧主義」という有形無形の圧力も含めて、子ども自身も自覚がないままにストレスをためこんでいるといえるのかもしれません。

学校だけではとても背負いきれるものではありません。スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーが導入されたことはすばらしいことですが、内部組織ではない、学校とは距離をおいた中立、独立した相談機関が必要です。大田区には福祉オンブズマン制度はありますが、声を出しにくい、大人に対して圧倒的に弱い立場の子どもの助けを求める声を聴きとり、寄り添い、その子どもの人権を擁護する仕組みはありません。

日本が批准して25年になる国際条約、子どもの権利条約ですが、締約国への監視機関・国連子どもの権利委員会からは日本の現状、子どもへの暴力への懸念と同時に、地方レベルで設置されているオンブズパーソンに触れ、「独立した子どもの人権を監視する救済機関」の設置についての勧告がなされています。

確かに、子どもの命や尊厳が奪われている状況に一刻も早く歯止めをかけ、子どもの最善の利益は何かを考え、子どものエンパワメントにつながる支援体制を強化することが必要です。

日本で初めて「子どもの人権オンブズパーソン」を設置したのは1998年、兵庫県川西市でした。
それから現在までに33の自治体が設置していますが、たとえば世田谷区は子どもの人権擁護機関「せたがやホッと子どもサポート」を区長及び教育委員会の附属機関として設置しています。体制は子どもサポート委員が3名、弁護士、福祉と教育のそれぞれ専門家です。その他に相談員が4名、社会福祉士、精神保健福祉士,臨床心理士、幼稚園教諭、保育士の有資格者があたり、計7名で子どもの相談にあたっています。

せたがやホッと子どもサポート

相談員は、子どもの気持ちをきちんと聞き、相談をしっかり受けとめ、調査や関係組織との調整をはかり、子ども自身の問題解決する力を励ましながら、関係改善を図っていきます。個別救済とそこから見えてきた区全体の課題について、関係機関に対して提言を行います。対象は18歳未満ですが、18歳、19歳で高等学校に在学している場合も含めています。また子どもの権利侵害については大人も相談できます。

2018年度は子どもとのやりとりが733回、大人724回、合計1,457回、どの学年もまんべんなく、相談に訪れますが、もっとも多いのは小学校の高学年で、相談内容の多いものから「対人関係の悩み」、次いで「いじめ」「家庭・家族の悩み」「学校・教職員等の対応」だそうです。年々、相談件数が増え、虐待や体罰の相談も増えてきているのは、「せたホッと」の存在が子どもたちに周知され、安心して相談できる場所になっている表れでしょう。

公開されている活動報告には、たとえばこんな事例が紹介されています。
小学生からの対人関係の悩みです。「新しいクラスで友だちができない。カッとなると友だちに乱暴してしまう。みんなが自分を避けるため、意地悪をされているように感じてやってしまう。仲良くしてくれそうな子に話しかけようとすると、先生に止められて話をすることもできない。自分ばかりのけ者にされて悔しい」という相談です。
「せたホッと」は「本当は仲良くしたいのに上手くいかない」気持ちを受けとめて、委員と専門員が学校を訪問し、本人の気持ちを担任の先生に伝え、「悔しい気持ちが乱暴な行動を引き出してしまっている」ことを確認し、友だちと接触させないのではなく、うまく人とかかわれるようにサポートしてほしいとお願いしたそうです。その後、クラスの友だちや先生から認めてもらう経験がふえると、自分の気持ちをコントロールすることもできるようになったと担任の先生から連絡があり、本人からも「学校が楽しくなった、いろいろ頑張る」と連絡があったそうです。

深刻ないじめの相談以外にも、思春期の親子関係や自我の芽生えと同時に自信喪失など情緒の不安定さからの悩みもありますが、それらを理解し、見守ってくれる大人の存在は重要です。大きな問題に至る前の予防にもなり、子ども自身の問題解決能力が高まることは、自己肯定感と同時に、自分も人をも大事にする「人権意識」が社会に広まることにも通じるのではないでしょうか。

 

 

さて、大田区においては、子ども家庭支援センターにも教育センターにも、子ども自身が相談してくることはほとんどなく、スクールカウンセラーにも子ども自身からの相談は多くないそうです。

大田区の子どもに悩みはないのでしょうか。
今年3月発行の「大田区・子ども・子育て支援事業計画策定に向けたアンケート調査の報告書」をみると「いじめを受けた経験」は中学生23%、高校生34%、「悩みや心配事はだれに相談しますか」に対して「だれにも相談しない」は中学生が11.7%で、高校生は11.5%、「相談できる機関をしっていますか」の問いに「知らない」と答えた中学生36.8%、高校生45.6%です。「学校に行きたくないと思うことがある」と答えた中学生は63.6%、高校生が66.5%です。「学校に行きたくない理由」は「友だちと上手くいかない」が中学生25.5%、高校生25.9%、「先生と上手くいかない」が中学生10.8%、高校生14.7%です。

こう見ると大田区の子どもは悩みを多く持っているのに、どこに相談にいってよいのかわからない、相談に行けていない、という実態が見えてきます。

2019年度の「大田区・人権に関する意識調査」報告書によると、ひどい人権侵害だと感じた自由記述に「子どもが学校で、クラス全員からいじめにあった。クラスメイトが子どもの首にのこぎりをあて、「殺してやろうか」といわれた」「海外派遣に応募するとき、教師から「どうせ落ちる」といわれた」「子どもが学校でいじめにあい、本人が主張しているのに学校側では「いじめがなかったので、書類からいじめの字を消して」と強要してきた」「朝鮮学校に通っている息子は、日本人の中学生5人に囲まれ、袋叩きを受け、大きなケガをした」等々、人権侵害にあたる多くの事例が記載されています。
公立の小中学校ではスクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラーの果たす役割は大きいものですが、中には心情的に学校に知られたくなくてスクールカウンセラーには相談できない場合もあると聞きます。また就学前や公立学校以外の子ども、高校生にとっては相談できるところがありません。

以前、区内で小学6年生の子どもが二人で連れだって飛び降り自殺をしました。教育委員会はそのとき「学校ではいじめはなかったので、原因の追究はしません」という説明でした。問うべきは「学校の責任」ではなく「社会はなぜ子どもを助けることができなかったのか」ということです。子どもが何に苦しんでいたのか、それを聞いてあげる大人がいなかったことが悔やまれます。

たとえば厳しい学力至上主義で子どもを追い詰める家庭があるかもしれません。虐待の通報には至らないでしょうから、児童相談所が乗り込むことはありません。しかし子どもがつぶれてしまう可能性もあるのです。

今後、児童相談所を設置するについても、一時保護所の運営に関しても子どもの人権を守るための「意見表明権」の保障は大変重要なものになります。人権擁護の理念と仕組みを確立する必要があると考えます。

【1】お聞きします。
深刻さを増す権利侵害です。しかし現状、大田区の子どもたちは困難さを抱えていても、相談に行かずに我慢をしていることが多いことが考えられます。まずは一刻も早く子どもたちのSOSを受けとめる環境作りが必要です。大田区は子どもたちのSOSをキャッチし、救済するために何をしますか。

答弁(総務課・総務部長・玉川一二)
現在、区では子どもの権利侵害につきまして、総務部、福祉部、子ども家庭部、教育委員会等、関連部局と連携し、対応しております。
子どもの人権擁護施策としましては、区立小学校に通う5年生の児童全員に対し、いじめを含め、権利問題、人権問題をわかりやすくまとめました冊子「大切なこと」を配布しているほか、区内小中学生に書道・ポスター・標語等の作品募集をしております。また人権啓発パネル展の実行によりまして区民の方々に対して人権意識の涵養に取り組んでいるところです。区といたしましては引き続いて先進自治体の取り組みも参考としながら各部連携いたしましてより効果的な人権施策を推進してまいります。

子どもに寄り添って解決を図る機関、「子どもオンブズマン」制度はぜひとも必要です。子どもの人権擁護のために先進的に取り組んでいる自治体に学び、研究をしていただきたいと要望します。

 

 

2018年に大田区は「地域とつくる支援の輪プロジェクト」の事業の一環で「こども1,000人アンケート」を行いました。就学前から高校生までの1222人が協力していますが、ハッとさせられる、たいへん示唆に富んだ子どもたちの意見をみることができます。たとえば、大人に言いたいこと、してほしいことでは、「子どもの話をちゃんときいてほしい」「ゆっくり話を聞いてほしい」「相談にのってほしい」「学校がつまらない。いじわるされるからやだ」「いっつもいっつも少しのことでたたいたり、怒ったりすんのを本当にやめろ。子どもの気持ちを考えて」「大田区にもっと遊び場をふやしてほしい」「ボール禁止の公園をへらしてほしい」「いじめの対処をしてください。根性論はやめてほしい。」「相談できる環境を作ってほしい。頼りたいときに頼れる存在であってほしい」「学校にいくことを強要しないでください。ストレスです。もう耐えられそうにないです」「難病をもっている自分や子どもでも他の友だちとかわらないように高校に通えて卒業できる環境がほしい」などです。

【2】お聞きします。
子どもの権利条約には「子どもの意見表明権」がうたわれています。社会の一員としての子どもの意見を尊重することを義務付けています。大田区は子どもの意見を今後どのような形で聞き、どのように対応しますか。子ども1000人アンケートは今後も続けるとのことですが、見えてきた区の課題にどのように取り組みますか。

答弁(福祉部・福祉支援担当部長・張間秀成)
「こども1000人アンケート」をはじめとする子どもの声への対応に関するご質問ですが、このアンケートは、区が大田区社会福祉協議会と実施している「地域とつくる支援の輪プロジェクト」の取組みの一つとして、昨年度から実施しております。
本プロジェクトは、地域全体で子どもを見守る体制づくりが大きな柱となっており、子どもの小さな変化やSOSに気づくこと、それを適切な相談窓口やサービスにつなげることを、周りの大人たちが当たり前のこととしてできる地域をめざしています。
アンケートは、そのめざす姿に向けた第一歩であり、日頃から子どもたちを見守り、
支援してくださっている地域の団体の皆様のご協力により実現しました。設問も、幅広い年齢層の子どもたちが自分で考えられるよう工夫しています。
本プロジェクトでは、アンケートから得たさまざまな意見を基に、子どもと大人が対話する機会を設けたり、臨時の子ども相談室を開いたりするなど、子どもの意見を大切にしています。引き続き、本プロジェクトのめざす姿の実現に向けて取り組んでまいります。

参考:こども1000人アンケート