愛着ある家、古民家をどう残していくか

愛着ある家、古民家をどう残していくか

          223日 小石川大正住宅にて

          主催:平井さんちの縁側チーム

             (公益信託世田谷まちづくりファンドの助成団体)

       

その古民家は、大正時代に建てられたもの。小石川、白山通りとえんま通りに挟まれた街中、コンクリートの建物の谷間にあって、清々しい木造建築は存在感を際立たせている。古民家の活用方法を考える人やその実践者、また支援をしたいと考えている人たちが集まった。

 

古民家は使い込まれた木造建築の温かさからくる“居心地の良い空間”が“コミュニティー再生”の拠点となる大きな可能性を秘めている。オーナーにとっては、“家族の歴史を残すことのできた喜びと人に喜ばれることの嬉しさ”を味わうことができる”出会いの喜び”の空間だったりする。目前の経済性とは違うが、多くの人の求めている“価値”を確認・共有できたひとときだった。

        

大田区にも古民家がいくつか現存しており、将来的な道筋を見いだせないでいるオーナーはある。土地の歴史や文化、建築技術など後世への遺産ともなる古民家は屋敷林と共に貴重な地域の宝ともいえるので、所有者の意志が活かされ、なおかつ豊かな街作りにも寄与する、古民家の活用方法、官民連携・共働での保存・活用方法など先進的な事例に学んでいくなかで、まちづくりへの提言に結びつけていきたい。

 

主催の「平井さんちの縁側チーム」は(一財)世田谷トラストまちづくり主催の人材育成講座のOBを中心に構成されたメンバーで、世田谷奥沢に残る昭和9年に建てられた洋館付きの和風住宅をいかすべく活動をしている。

(一財)世田谷トラストまちづくり https://www.setagayatm.or.jp/

 

事例紹介

●まずこの家のオーナーのお話から(小石川大正住宅)

https://kominkakoishikawa.jimdofree.com/

両親が住んでいた家を残して活かしたいと思い、耐震・改修工事の後、貸し出しを始める。一度に入る人数を制限して、写真撮影や小さな会合などに使ってもらっている。大きな収入があるわけではないが、いろいろな人との出会いや“喜ばれること”がうれしい。

 

●昭和のくらし博物館

http://www.showanokurashi.com/

昭和26年に住宅金融公庫の融資で建てられ、家族が暮らしていた家を“昭和の暮らしを伝える家”として私立の博物館としている。季節ごとのしつらえやテーマごとの展示も人気を博しているが、建物の中では、特に縁側や庭が喜ばれている。ロケに使われることもあるが、見学者は多様で、小学生の見学や海外からのお客様もある。残していくためにNPO法人としたが、経営は厳しい。

 

●欅ハウス(株式会社チームネット)

https://www.teamnet.co.jp/work/02.html

世田谷区在住のオーナーからの相談は、樹齢250年の欅を含む庭を残したいが、相続税が数億円かかる、どうすればよいかというものだった。チームネットは庭を含めた土地を購入し、オーナーの家と庭をはさんでコーポラティブハウスを建てる。「森を残して世田谷で暮らそう」という触れ込みで住居者を募る。15世帯が入居。地主は庭を売ったが目の前に庭を見るので、喪失感はない。またコーポラティブハウスの居住者は緑の心地よさを味わい、庭の手入れを含めてオーナーとの交流を持つ。

 

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屋敷林と家が相続税対策によって、いつしかマンションになってしまうというのが常だが、オーナー側の意志を反映する不動産の組み立て方があるということを知った。チームネット代表であり、立教セカンドステージ大学、都留文科大学非常勤講師の甲斐徹郎さんが「土地の持っているポテンシャルを大切にすると自然とコミュニティーが生れるのではないだろうか」と言われたことが印象的だった。“街を作る”という意識の不動産活用が増えることを願いつつ、支援のあり方を研究していこうと思う。