最も困窮している人に届かない「10万円」 蒲田・大森野宿者夜回りの会、総務省に申入れ
全国民に給付されるはずの特別定額給付金。たまたま今置かれている情況で人を区別してよいのか。なぜ住民票にこだわるのか。
蒲田・大森野宿者夜回りの会、総務省に申入れ 7月30日
新型コロナの感染拡大に伴う一人10万円の給付、住民票の有無が壁となって、多くのホームレスの人たちが受給できない。そもそも申請書も届かず、給付金制度を知らない人もいる。10年近くホームレス支援をしている蒲田・大森野宿者の会代表で、医師の越智祥太さんが“国民全員への給付”を求めて総務省への申入れをした。
- コロナ禍での困窮者増大
コロナ禍で、仕事と住居を同時に失い、30代の若者も高齢者に混じって野宿に至る例も散見される。非正規労働者の生活はもともと脆弱で貯蓄する余裕もなければ、社会保障も十分ではない。
大田区では「住宅確保給付金」の申請者が昨年は年間51件だったものが今年はすでに1000件に届く勢いだ。しかし制度の隙間に落ちる人も確実にある。
- 住民登録が困難な人たちの実態
以前は住所を持ち働いていたものの、その後困窮状態にいたるなかで、住民票を喪失したり、職権消去されている人、国や人に迷惑はかけたくないと缶集めで日銭を稼いでいる人、一度、貧困ビジネスに囲い込まれて生活保護をほとんど搾取されて福祉制度に拒絶的になってしまっている人もいる。
- 特別定額給付金事業に関する申入れ
1.ワンストップでの相談窓口を設置し、直接給付までできるように。全員に支給すること。
複雑な事情を抱えている人にとっては、コールセンターだけでは、具体的な相談は難しく、戸籍の附票や住民票の除票に遡っての調査に至る対応はコールセンターでは困難。給付金の申請期限が迫る現在、“ワンストップでの相談(聴聞)から住民登録や身元の確認、そして直接給付までできる窓口”を置くことを強く各自治体に働きかける必要がある。
2.現在、住民登録を失っている人にも、住民票に替えて、柔軟な運用を適用して支給が行われること。
7月17日付けの総務省からの事務連絡には、「民間支援団体による代理申請・代理受給ができる」とある。生活保護申請の折には、役所の住所を使うこともある。住民登録がないこと自体が困窮度を示している。聴聞での身元確認と支援者の身元証明をもって個人識別をし、支給対象にするべき。
3. 特別定額給付金の申請期限を、本年度2021年度3月31日まで、延長すること。
今だ、申請書自体を入手することが困難な人、給付金制度を把握できていない困窮者や単身高齢者、給付金申請の余裕もないひとり親家庭も存在する。
4. 特別定額給付金を今回だけに終わらせず、不況の情況に応じ、支給すること。
コロナ感染は第2波拡大が疑われ、コロナ倒産、廃業、また失業者も増大、未曾有の不況が押し寄せる可能性がある。
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長年、野宿者一人ひとりに寄り添い、その困窮度合いを知る越智医師だからこその、申入れだったが、残念ながら総務省の回答は、「難しいです」という言葉に終始していた。
一緒に申入れに行った当事者の一人は「前に定額給付金の案内をみたら、“4月27日時点で住民票のある人”ってあったから、はじめっから諦めていたよ」と。缶拾いをしながら、仲間とのつながりを持って頑張って暮らしている。「信頼する越智先生に委任して、なんとか10万円をもらえないものか」とも語る。