かけがいのない緑を残す 特別緑地保全地区制度

イチョウ、シイ、クヌギ、梅、ヤブ椿、白木蓮、トサミズキ、多羅葉(たらよう)、柿・・・数知れない木々を鳥たちが賑やかに飛び交います。

この10月に都市計画審議会を経て、大田区西嶺町の約3,800㎡もの緑豊かな土地と江戸時代建築の家が※「特別緑地保全地区」に指定されました。区内では4つめです。都内で貴重な樹林地を残すことは「持続可能な地域社会」を形成していくために大きな意味のあることです。特に大田区ではこの10年間に緑被率(緑に覆われた面積)を100㏊も減らしています。

 

鵜の木、嶺町地区は多摩川台から続く国分寺崖線に沿った自然豊かな一帯で、近くの松山公園に遺跡が見つかったように古代から人の生活が営まれていた土地です。1,600年頃には多摩川から取水して開かれた六郷用水により水田が広がっていました。稲作から、やがて畑が増え、桑畑の他、野菜、なしや柿などの果樹も多かったようです。大きな樹木の多さや古民家が残されている様子に連綿と続く家々の歴史、かつての豊かな農村の姿を想像できる、希有な地域です。

この地には、また大田区で最も古い寺子屋が作られています。江戸時代後期、文化、文久年間の50年間続き、その後、鑑蔵院の中にできた「嶺鵜(れいてい)学校」に引き継がれ、今日の東調布第一小学校に続くと聞きました。建物は残念ながら昭和2年に火災で焼失しましたが、石碑が残っています。

ここに2階建ての寺子屋がありました

六郷用水から一帯が豊かな水田になった時代、地域の子どもたちのために一農家(「よろずや」も営む)が寺子屋を始めた時代、「目蒲線」が開通して近代化が始った時代、時代をたどりながら、人々の暮らしや地域の変遷を感じることは、不思議と今を生きる私たちにも地域への愛着を強めてくれます。

 

豊かな緑がずっと残されていくことに感謝しつつ、子どもたちと共に地域の歴史も語り継いでいきたいと考えます。

田んぼの中を走らせる船、田舟

※特別緑地保全地区制度(東京都)

https://www.toshiseibi.metro.tokyo.lg.jp/kiban/kouen_ryokuti/tokubetsu.html

先祖代々受け継いだ緑を残したいと思う方には大変有効な制度です。

 

指定されると豊かな緑を守るために、その土地に建築をしてはならないなどの制限がかかりますが、税制上の優遇を受け、樹林地維持の負担を軽くすることができます。相続の発生などで、事情が変わったときは、所有者は土地の買取りを区に申し出ることができ、区はその土地を買い取ることになっています。その場合、土地の譲渡所得の控除や所得税の減額もあるというのが、この制度です。