保育を開くということ ~地域とかかわる保育の実践~

私が毎月、楽しみに参加している「子ども環境ラボ」(一般社団法人 園Power http://en-power.org/about/index_about.html主催)では今回、※「渋谷東しぜんの国こども園」を運営する齋藤紘良さんと園長の名古屋彩佳さんがその保育の実践について語られました。   ※渋谷東しぜんの国こども園  https://toukoukai.org/hoiku/small-alley

私もかつて幼稚園で働いていたので、保育の在り方については、大変興味があるところです。

渋谷駅から徒歩10分と聞いただけで、都会の真ん中で、コンクリートのビルに囲まれていて、子どもの育つ環境としてはいかがなものか、と思ってしまいます。園庭がないと聞くと、さらにその思いが強くなります。しかし、保育に込めた思いや実践を聞くと、環境とはただ単にそこにある自然環境ではなく、人が創り出すものだという、新しい地平が見えてきました。子どもを中心に関係性の中で柔軟に展開する保育の在り方を知ることができました。

 

まず園舎の設計に大きな特徴があります。東急東横線の線路跡地にある細長いビルですが、1階はカフェ、奥に地域活動支援スペースがあり、音楽会が開かれるなど、外部の一般の人との交流拠点になっています。2階と3階が保育室になっていますが、まるで路地のような長い廊下が、さまざまな要素を持ちながら、人と混じり合う空間を創りだしています。保育のコンセプトは「保育を開く」「つながる」だそうで、設計にはその理念がよく表現されています。

  

保育の一つの要素には「街あそび」があるといいます。地域との交流、大人との出会いを楽しむ保育です。昨年は代官山レフェクチュールに見学に行ったご縁で、ドレスを作った余り布をもらって、子どもたちがドレス作りを楽しんだり、キンコーズという印刷屋さんでは端材をたくさんもらって、工作に活用したり、遊びの素材は街に、子どもの心の中にあることに保育者が日々、気づかされるそうです。できあいのおもちゃではなく、廃材の中に実はキラキラしているものがあると。子どもたちには、街全体が保育園の庭という感覚が生れているようだと語られていました。街との関係性を築くために「地域コネクター」という役割の人を置くなど、交流のための下地づくりの努力も欠かさないそうです。

 

大都会の中で、子どもと共に生きる社会をつくりたい、子どもの発想を大事にしたい、子どもとの生活はこんなに楽しいと大人に伝えたい、と創造的な保育を模索している「渋谷東しぜんの国こども園」の挑戦には既成概念にとらわれがちな私にとって大きな刺激になりました。