大田区は、子どもの人権が守られているといえるか:大田区議会第3回定例会・決算特別委員会報告

2018年10月27日 20時42分 | カテゴリー: 子ども, 子育て支援, 議会報告

第3回定例会・決算特別委員会が終了したので、ご報告をいたします。
私は決算特別委員会では、「総務費」と「教育費」の款で質問をいたしました。

 

 

 

 

 

 

 
 

まず9月28日、「総務費」では「子どもの人権」について。以下、全文です。

 


大田区は、子どもの人権が守られているといえるか。

虐待相談もいじめも増え続けている。
昨年1年間、大田区管内で深夜徘徊により補導された少年は1,455人。

居場所がない、相談する場所がない

 

世界人権宣言第1条で「すべての人間は生まれながらにして自由であり、かつ、尊厳と権利について平等である」とうたわれるように私たちは、一人一人がお互いの存在・違いを認め合いながら、幸せな社会・家庭生活を送る権利があります。「おおた未来プラン10年後期」には「区はこの権利を守り、誰もが安心した生活をおくるための支援を継続していくことが求められています」とつないでいます。「おおた子育てすくすくプラン」ではすべての子どもが尊重され、子ども自身の育つ力が発揮される」とあります。しかし子ども家庭支援センターの報告によると平成29年度の虐待相談の件数は952件で過去最高、昨年より200件近くも増えており、子どもに対する人権侵害は大変深刻です。
区民と共に生命、人権を尊重する大田区でありたいと考えます。
大田区の子どもに対する人権教育や人権擁護についてお聞きします。

【1】人権・男女平等推進課では子どもに向けての人権啓発パンフレットを配布していますが、その目的はどういうものですか。その効果をどう検証しましたか。

答弁(人権・男女平等推進課長 元木重成さん)
現在区では、区立の小学校に通う5年生の児童生徒全員に対し、人権啓発冊子「大切なこと」を配布しています。この啓発冊子ですが、いじめやインターネット、SNSで発生する人権問題などを、項目ごとにわかりやすくまとめたものです。さらに児童がいじめなどの人権問題で困った時の相談先も掲載しています。今年度は6月に配布を行ったところです。本冊子を児童に読んでいただくことで、さまざまな人権の問題について理解を深めてもらうことを目的としております。また人権意識の涵養に寄与しているものと認識しております。
 

ぜひ目標を掲げて、具体的な効果の検証にも取り組んでほしいと願います。
人権教育は大変大切です。自分にはだれにも侵すことのできない人権があり、それは尊重されるべきという考え方を小さい頃からしっかり持つことは大事です。人権意識は主体性や自己肯定感、自分への自信、有用感にもつながり、困った時にはSOSを出して自分を守る力にも通じるものだと考えます。ですからパンフレットは子どもたちにわかりやすい表現を研究していく必要があると考えます。

さて、いじめは不登校やその後のひきこもりとも密接な関係があり、心に大きな傷を残す人権侵害です。大田区のいじめの認知件数は教育委員会に問い合わせましたが、出すことができないということでしたが、増えているということでした。文部科学省の平成27年度の調査によるといじめの認知件数は過去最高で増加傾向が続いています。ちなみに大田区の平成28年度の不登校生徒児童は小学校・中学校合わせて519人で、これも増加傾向です。

【2】お聞きします。人権・男女平等推進課はいじめについてどのような問題意識を持ち、どのような対策をとりましたか。

いじめは、重大な人権問題として捉えております。また絶対に許さないという姿勢で取り組んでいるところです。今後の対策として、先ほどお答えした人権啓発冊子「大切なこと」の小学校5年生への配布を継続してまいります。また区立小・中学校の児童生徒の人権意識を高めるために、人権意識を啓発・推進するポスターや標語などの作品を募集するとともに、人権意識の涵養を目的に「区立小・中学校人権啓発作品展」を開発しています。今後もこれらの施策を教育委員会と連携しながら実施していくことで、いじめは重大な人権侵害であり、絶対に許されないことを普及啓発してまいります。
 

普及啓発も大切ですが、なかなか減らない状況に対してもっと踏み込んだ分析や対策も検討していただきたいと思います。

世田谷区では人権に熱心な弁護士が授業で、さまざまないじめの実例を話し、話し合いをすることで、それまで、「いじめられる方も悪い」と言っていた子どもたちがそう思わなくなったと聞きました。具体的にイメージできる体験的な学習で意識を替えることができることを教えられます。

次に中高生世代の人権擁護についてお聞きします。

母子家庭で17歳と18歳の息子。母親は精神を病んでいることもあり、まったく家事ができず、学校生活に必要なお金もくれません。息子たちはそれぞれバイトをして買ってきたお弁当を食べ、寝るためにだけ家に帰っています。窮状を聞いた私が子ども家庭支援センターに問い合わせると、虐待なら児相経由で一時保護所に措置されるとのこと。しかし二人とも学校生活があるので、一時保護所には行きたくありませんし、18歳の方は対象外です。

残念ながらこのケースの場合、大田区には相談に応じることのできる窓口はなく、救済の道も見出せませんでした。16,17,18歳くらいの子どもたちの人権擁護に関するサポート体制がないことに気づかされました。

豊島区の中高生専門の児童館を視察した折、多くの中高生が集い、卓球やバンド活動やダンスやバスケットなどに興じる、にぎやかな居場所になっており、職員とも話しやすい人間関係が作られていました。そういう中で深刻な相談も度々受けるということを聞きました。たとえばある高校生は「特殊サギの“受け子”をやらされているが、出頭した方がいいだろうか、自分が出頭することで暴力団からの報復があるかもしれない、どうすればいいだろう」と恐怖の中から助けを求めてきたそうです。その児童館には月に2回、子どもの人権問題に熱心に取り組む弁護士がきており、職員だけでは手に負えない問題にも対応してくれて、とにかく子どもの絶対的な見方になり、寄り添い、守る、という姿勢で子どもに対応するそうです。またバイト先での搾取、ブラックバイトのことなど様々、たくさんの問題が持ち込まれるそうです。複雑な問題を抱えた中高生の場合は保護だけではすまないことがあることがわかります。

世田谷区では区長部局と教育委員会が一体となって子どもの権利侵害に取り組む子どもの人権擁護機関「せたがやホッと子どもサポート」を開設しています。弁護士などの子どもサポート委員とそれを補佐する社会福祉士、精神保健福祉士、臨床心理士などのチームで電話、メール、面接で、相談を受けています。児童福祉法では18歳未満の子どもが対象ですが、ここは高校に行っている18歳、19歳も対象にしています。相談で最も多いのは対人関係の悩み、ついでいじめ、その次が学校・教職員の対応、家庭の悩みと続くそうです。子どもの立場に立って、実際の解決にまで踏み込む子どもオンブズマン制度です。

相談事業をやる中で、課題が見えてくると個々への対応と同時に学校との連携で課題解決を模索するとのことでした。相談事業からのフィードバックが現場を改革していくという好循環を生み出しているわけです。

さて、平成29年度の警視庁の統計によると大田区管内で深夜徘徊により補導された少年は1,455人、そのうち女子は347名です。犯罪で検挙された少年は121人、最も多いのは窃盗108人、サギも13人なので、もしかしたら受け子にさせられた高校生がいるかもしれません。
東京全体のことではありますが、小学生の補導が全体の20%を占めており、年々問題は低年齢化しているということでした。

深夜徘徊は家庭での虐待など、家に居場所がない、という問題をはらんでいるかもしれませんし、犯罪に巻き込まれる恐れもあるので、看過できない問題であり、未成年の子どもたちをどう守るかは大田区の未来に関わる大切な問題です。やはり高止まりの高校中退者へのサポート体制も今後の課題です。大田区においては特に青少年に対する相談・サポート体制への取り組みが足りないことが確認できたわけですが、社会的包摂、人権尊重の理念のもとに、人権侵害に関わる実態把握と、対策や救済の道筋を作る必要があると考えます。単に対処療法的なことではなく、何が問題なのかを十分検証して問題の社会化、子どもの権利実現のカギを見出すことが求められます。様々な事例への受け皿の整備や予防的観点からのファミリーソーシャルワークの展開、教育と福祉の融合などまだまだ課題があると考えますが、制度にはやはり魂が必要です。

世田谷区には「世田谷こども条例」、こども文教委員会が視察した長野県には「長野県子ども支援条例」があります。

【3】お聞きします。大田区は今、子どもの権利擁護のための児童相談所をつくる準備をしています。同時に子どもの最善の利益をめざし、実効性のある様々な施策展開の土台となる「意志」を明確にして庁内一丸となって進むことが必要ではないでしょうか。区長部局、人権・男女平等推進課がリーダーシップをとって子ども家庭部と教育委員会と手をたずさえて子どもの人権に関わる条例づくりにとりくむことを求めますがいかがですか。
 
子どもの人権や自由の尊重等を目的とした「児童の権利に関する条例」が平成元年の国連総会にて採択されました。日本では、平成6年に批准をしたところです。この条例の理念に基づいて、都内の一部の自治体において、子どもの権利に関する条例が制定され、施行されていることは承知しております。子どもの人権に関わる条例制定についてですが、子どもの人権の課題だけでなく、教育、子育てなど様々な課題を整理していく必要があると考えております。ご提案の主旨につきましては、ご意見として受け止めさせていただきます。

大田区の子どもたちが自分の力を十分発揮して、世界を切り開いていくことができるように大田区からもエネルギーをもらえるように、「いつも応援しているよ」というメッセージにもなる条例の制定を期待いたします。

 

 

 

 

 

 

 


*参考
●西東京市ではこの第3回定例会で子どもの人権を守るための「こども条例」が採択されました。10月1日より施行。

西東京市子ども条例