区議会報告(第3回定例会)「観光」より「健康」。2018年度決算に反対!

23区でもっとも医療費のかかっている大田区

10月10日、議会最終日は、各会派が、大田区2018年度一般会計、特別会計に対しての討論をしました。
大田・生活者ネットワークはその全てに反対の立場から討論をいたしました。観光国際都市を掲げての予算組みはやはり区民生活とは乖離していますし、持続可能な自治体であるためには子育て支援、そして超高齢化時代に対応する環境作りが肝心です。23区で医療費が最もかかっている大田区。「観光」より「健康」です! 長期的な視野と生活実態に寄り添った施策が求められます。

 

 

以下、全文です。

 


大田・生活者ネットワークは第57号議案2018年度大田区一般会計歳入歳出決算と第58号議案、第59号議案、第60号議案の各特別会計歳入歳出決算の認定に反対の立場から討論いたします。

2018年度は、「暮らしてよし、訪れてよし、地域力あふれる 国際都市おおた」の実現をめざした予算編成でした。観光国際費には55億1886万円余の予算で、支出が48億9376万8円余、不用額が3億218万円余です。職員の数は2016年度より3年間で毎年9人ずつ増やしています。65人だったものが現在では85人という力の入れようです。

2018年7月実施の「大田区政に関する世論調査」によると大田区を国際交流、多文化共生が進んだまちと感じていますかという問いには「感じている」、「やや感じている」が28.4%で、「あまり感じていない」「感じていない」が53.4%でした。「未来につながる空港臨海部をつくります、埋め立て地の空港臨海部では羽田空港や港湾・物流施設、工場などが広がる中に大森ふるさとの浜辺公園などの公園緑地や海辺の散策路の整備などが勧められてきていますが、あなたにとって身近なまちとなってきましたか」という設問に対しては、「身近でない」「あまり身近でない」が57.4%です。観光の視点から大田区の強みとして「魅力的な観光スポットの多さ」を上げたのは10.4%です。自由記述には生活の厳しさを訴える声、保育園や学童保育の待機児解消や高齢者の居場所、親子が安心して遊べる場所がほしい、生涯学習の場を求める声など、身近な生活に関する要望がたくさんありました。こんな声もありました。「観光に力を入れるのは経済面で大事であるとは思いますが、区民の日常生活に係る予算の配分を増やすべきだと感じています。区のめざしているものと区民が本当に必要としているものとに乖離があるように強く感じています」

区民からこのように思われてしまうことに対しては、私たちは反省をしなければならないのではないでしょうか。
このアンケート調査による項目「世界へ羽ばたくまち」「未来につながる空港臨海部」「大田区の観光」には多くの区民が実感を持てなかったのだと思います。高齢化が進むなかで、地域での日常の生活が安心できるものとなることを多くの区民は望んでいるのです。行政の役割は区民の福祉向上です。東急電鉄が生活名所という表現で東急沿線を楽しもうという企画をしていましたが、この生活名所という表現はなかなかよいと思います。区民も商店も元気でいきいきとした生活がそこにある、それこそが名所になると私は捉えましたが、区民の生活重視のまちづくりを持って持続可能な観光施策とはできないでしょうか。

車イスや歩行器や杖をつく人が増えています。歩道はまだまだバリアフリー化が進んでいるとはいえません。狭い歩道に電信柱、歩道の傾斜、ぼこぼこのブロックには普通に歩いていてもつまずいて転んでしまう高齢者がいるのではないでしょうか。日々の生活に大きく関わるインフラ整備にこそ力を注ぐべきです。

 

 

2018年度は、2016年に行った「子どもの生活実態調査」を受けて作られた「子どもの生活応援プラン」を推進しようという年でした。子どもの生活実態調査は生活困難層が全体の21%で、生活困難層には母子家庭が多いこと、虐待や育児放棄をしているのではないかと悩んでいる人が多いこと、子どもにおいては自己肯定感が低いことなどがわかった非常に貴重な調査でした。貧困対策は急がれる行政課題であり、自治体としてあらゆる面から全力で取り組むべきだと思いますが、大きな動きはみえません。虐待相談も増えています。もっと民間とも協力して地域の中に予防にもなる居場所作りなど温かな切れ目のない支援が必要です。

待機児対策のために保育園整備が急ピッチで進んだことは評価いたします。しかし一方で家庭保育をする人にはサポートがあるでしょうか。現在の「一時預かり保育」は区内に4か所、1時間900円という高い料金と地域的な偏りは問題です。双子であれば、1時間1800円です。半数が貧困ラインにあるというシングルマザーが預けることができるでしょうか。

不登校児童生徒も小中合わせて500人を越えるという高止まりです。SDGs持続可能な開発目標の考え方が広まっていますが、もっとも大事なのは、子どもを大切に育むことではないでしょうか。隙間からこぼれおちている子どもはいないのか、教育機会確保法の理解と周知は進んでいるでしょうか。不登校はだれにでも起こりうることで、休息の必要性がうたわれていること、社会的な孤立を防ぎ、社会的な自立をめざすのであれば、フリースクールをはじめとした学校以外の居場所も柔軟に考えられるべきです。

児童福祉法にもとづく児童相談所を作ろうとしている大田区です。子どもの最善の利益を追求すべきです。

2018年度、全ての小中学校に読書学習司書が配置されたことは評価できますが、読書学習司書の勤務は週に3回であり、それが図書館の開館の日ともなります。読書の重要性はいうまでもありませんが、読書学習司書との出会いも子どもにとっては大事な学校の環境です。子どもの居場所は学校、家庭、その他にもできるだけたくさんあって、多くの信頼できる人と出会うことが、子どもを育むことになるのではないでしょうか。学校図書館は毎日開館してしかるべきです。小中合わせて、非常勤職員としての読書学習司書への報酬は6千6百万円余です。週5日の勤務にしても教育費の不用額11億1204万円余をあてても余りあるのではないでしょうか。

羽田跡地の165億円での購入、その全容と意義は区民に十分に伝わっていて賛同が得られているのか、いよいよ来年3月から運用開始の羽田空港競争力強化のための新飛行ルートの区民への影響も心配です。大田区の掲げているプロジェクトが区民生活と乖離しないで、必要なものが区民に届くことを願うものです。
区民主体の、区民に開かれた区政、区民と共に創る区政であってほしいと願います。

特別会計に関連して、
2025年、団塊の世代が後期高齢者になることは、医療費と介護費用が増えることは明らかで、また独居高齢者や認知症の増加、また経済格差の大きい中では社会全体がどういう備えをしなければならないかは国をあげて真剣に取り組まないといけないことです。特に大田区は一人当たりの医療費が23区で最上位を続けています。ここずっと江東区とトップを争っていますが、直近は大田区が1位です。調剤の診療費を例にとると港区が5万円を切るところを大田区は7万円を越えます。生活習慣病の有病率も第1位で最も少ない新宿区との開きは10%以上もあります。この状況に大田区は危機感を持っているでしょうか。

大田区国民健康保険第2期データヘルス計画が始まった2018年度ですが、執行率が41.84%。小手先の検診受診の勧奨だけではだめで、区を挙げて「健康作り」に取り組まなくてはならないのではないでしょうか。生涯学習、社会参加、スポーツのできる環境、人と出会える地域の居場所、あらゆる手を尽くして、健康なまちづくりとは、ということを考えるべきです。

議員研修では、「100年後を見据えた健康モデルタウン」と題して、千葉大学予防医学センターの近藤先生が「自然と健康となるような社会環境整備をすすめるべき」と言われていましたが、区民の健康作りは区民部や健康政策部の仕事だとか特別会計の問題だと捉えるのではなく持続可能な自治体を目指すためには全庁的に取り組んでいただきたいと思います。どの自治体に住むかで、健康寿命が変わるというわけです。大田区は「観光」よりも「健康」ではないでしょうか。社会保障費を抑制するのではなく、予防に力を入れて、自然に社会保障費が削減されるような健康な社会をめざすべきです。若い頃からの健康増進を進める施策を強く打ち出すべきです。

議会について一言、
海外視察では今回、スウェーデンが加わります。スウェーデンの議会は市民が委員会に参加して議論をすると聞きました。専門的な知見をもった市民の参画があることで、議論が深まり、より市民のためになる政策を作れるそうです。ほとんどの陳情を不採択にする大田区議会ですが、ぜひ区民の声を聞き、寄り添いながら、区民の利益になる政策を作るための海外視察にしていただきたいと願います。

区民生活の実態から出発する大田区政を希望し、討論といたします。