子どもたちに食の確保を! だんだん子ども食堂 ”とにかくできることをやるしかない”

新型コロナウイルス感染症対策としての学校休業は春休みを含めると3ヶ月近くにもわたりました。そもそも子どもの食が日常的に満たされていないことがあることを知って始めた「子ども食堂」ですから、近藤さんはこの長い学校休業中の子どもたちの食事が心配でたまりません。4月には大田区に対して「大田区こども食堂実践者有志」から要望書を提出、その中で、「休校措置期間中の給食代替え食(弁当など)の配布」を願いました。学校給食が1日の食事の大半である子どもたちにとって、学校給食は大事な栄養源だからです。

 

自治体によっては、給食用食材を活用してお弁当にして、希望する子どもたちが取りに来る形式を取ったところもありましたが、残念ながら大田区を含むほとんどの自治体はリスクを考えて実施することはできませんでした。

 

そういう中、いくつかの子ども食堂がお弁当作り(テイクアウト)に挑戦し、だんだんも「どんぶり弁当ランチ」を3月と4月上旬は土日以外、毎日提供しました。その後、100円野菜の販売や食材のお裾分けなど、手探りで家庭への支援策を講じていました。「とにかくできることをやるしかない」という熱い思いに賛同する人は多く、バナナなどの寄付も集ってきました。

今日もおいしくて彩りのよい「どんぶり弁当ランチ」を作りました。

 

  • 青年会議所との連携

5月後半には7日間、大田区青年会議所からの仲介で区内の飲食店のお弁当を販売する試みも行われました。これは青年会議所が資金を集め、協力する7店舗の飲食店に材料費を提供し、ご自慢の弁当を作ってもらい、「だんだん」にてワンコインで販売するものです。

目的は商店街にも子どもたちや地域の実情をしってもらいたいというもので、売り上げは子ども食堂の活動費にと寄付されました。目新しい試みに1日最高60個のお弁当が出る盛況ぶりでしたが、外出自粛、営業自粛の期間は飲食店にとっては辛い日々のはずです。

店の宣伝になるとはいえども、前向きな姿勢に感謝し、新しい出会いと地域の連携の道が探れたことを喜んでいた近藤さんです。

https://www.facebook.com/tokyojcota/posts/3072508489481387

 

さて、6月1日、やっと学校が始まりましたが、給食は来週からです。近藤さんは今また「どんぶり弁当ランチ」を提供しています。頑張っているお父さんやお母さんの応援団でいたいと。

 

小学3年生の姉と小さな弟、2人でお弁当を買いに来ている子どもたちがいました。はじめは、ひっこみじあんでお母さんといっしょでないと行けないと言っていたそうですが、青年会議所のお兄さんにほめられてから自信がついたようで、もう姉弟だけで「だんだん」に来られるようになったそうです。青年会議所との連携には副産物もあったようですね。

小学3年生の姉と就学前の弟と、二人で「だんだん」に来られるようになりました

新型コロナウイルス感染症対策の名の下に家庭の姿が見えなくなりましたが、声を出せない人や「子どもを守る」ことをまず第一に考えるべきだという近藤さん、いくらいっしょうけんめい「お弁当作り」に取組んでもここに来られる子どもばかりではない。そのことに心を痛めながらも「できることをやるしかない」と思ったそうです。そしてそれは全国の子ども食堂や子どもの居場所に関わる人の共通する思いだったのではないでしょうか。

 

  • 経済的な困窮が見える

お弁当の提供で関わっていた保護者からとったアンケートでは

「食費や光熱費の出費が増え、経済面は緊迫しています。収入が減った世帯に限定せず、ひとり親世帯への現金給付ないしは、相応の援助が必要です」

「やはり食費がかかることが重大。学校がないことで、子どもも親もストレスが増大しています」

「経済的には、毎日お昼代がかかり、ただでさえ家計はギリギリなのに本当にきついです」

「働かねばならないので、子どものお昼ご飯をどうしようか不安。自営のため、店の家賃が払えなくなる不安がある。家のローンも払えなくなりそうで不安」

「休校で子どもが情緒不安定になってしまいました。子どもだけの留守番が多くなり、帰るとすごく甘えてきたり、急に泣き出したりするようになってきました」

 

ここからは経済的な困窮と同時に、精神的な不安を抱えている家庭の様子が垣間見えます。

経済的な困窮と同時に孤立する家庭やストレスフルな家族関係への支援が必要だということです。

 

  • 災害時、学校の役割は? 様々な人との連携の構築を!

近藤さんはいいます。長期の休業になっても、工夫をして地域の中の拠点である「学校」をもっと活かして子どもの生命、「食」、そしてメンタルを守る機能を持たせることができないものか、また大田区青年会議所との連携があったようにさまざまな人や分野が連携して難局を乗り越える知恵を出す仕組みはつくれないだろうかと。

 

また災害時には不便さを感じがちだが、こんな時こそ、助け合ったり、いっしょに考えることが大事ではないか。新型コロナウイルス感染症対策にしても、子どももいっしょに考えれば、それこそが「学び」になるのではないだろうか、と。

 

この新型コロナウイルス感染症対策、非常事態下における危機管理体制の中ではハード面ばかりが強調されますが、家庭の内側へ思い、人とのつながりに思いを馳せることが大切です。

 

子ども食堂が悩みながら迷いながらも懸命に子どもとその家庭に寄り添ってきた日々から学び、子どもに寄り添った施策につなげていきたいものです。

この日は「どんぶり弁当ランチ」におまけとしてラーメンの粉末スープがついてきました。その説明に加えて、近藤さんからのご家庭への応援メッセージです。