福祉費・生活困窮者自立支援法について 決算特別委員会での質問より

税金の滞納、厳しい取り立てだけでは、根本的な解決にはならない。
長時間労働やブラック企業で疲弊して、失業している人も・・・本当は、社会のひずみを直すことからしていかないと。

10月1日、福祉費・生活困窮者自立支援法について決算特別委員会での質問に立ちました。

リー マンショックからずっと、失業など、労働環境は厳しいものとなっています。区民税などの滞納に生活の厳しさを垣間見ることができます。収納を強化するだけ では解決にはならないので、新しい仕組みのなかで、生活再建への支援をしていくというのが、この法の目指すところです。

制度に魂を吹き込むのは自治体の役割です。
制度が有効に機能するように願いを込めて質問しました。



生活困窮者自立支援法について、質問いたします。

特別区民税、おおよそですが、25年度分の収入未済額、36億円、同じように国民健康保険料では、64億円。介護保険特別会計では、4億円、 と様々な滞納は区財政に大きな影響があることを思います。リーマンショック以降の失業など、生活が厳しい人が多くなっている表れです。今後さらに、高齢世 帯の増加などもあり、この問題はますます大きくなる方向でしょう。納税課・住宅課など関係課の対策は、収納強化であり、督促状を出したり、分納を提示した り、財産調査により生命保険や預貯金の差押を実施したりすることもあると聞きました。

納税課に滞納をしている人はどのような状況で滞納に なるのか、と尋ねたところ、区民税は前年度の所得にかかるので、今年になって仕事を失い、求職中の人などで納めるお金がない人が圧倒的に多いとのことでし た。非正規雇用だったり、自営業だったりした場合は、社会保障がなく、失業保険ももらえていない人は苦しい状況だと思う、とのことでした。

納 めたくても納められない状況があるとき、なんらかの支援によって、生活再建がなされ、納税を含めた健全な生活を取り戻すことができれば、持続可能な社会、 もちろん大田区財政の安定化にもつながると思います。問題の背景を探る作業から解決を模索する手法が必要とされています。

たとえば、仕事が見つかるまで、一時的に家賃を待ってもらえれば、就労できた後に納めることができるかもしれません。
家を失ったら、就職活動さえできなくなってしまうでしょう。リストラにあったショックで、うつ状態になり、引きこもってしまっている人の場合は、ハローワークよりも前に、前向きな気持ちになれるような後押しが必要にちがいありません。

2015年4月に施行される「生活困窮者自立支援法」 は、生活保護に至る前の段階の自立支援を強化するものです。制度のめざす目標が「本人の内面からわき起こる意欲や想いが主役となり、支援員がこれに寄り 添って支援する。生活困窮者の早期把握や見守りのための地域ネットワークを構築し、包括的な支援策を用意するとともに、働く場や参加する場を広げていく」 とあります。

ポイントは、自ら生活を立て直そうという意志が重要だということです。だれしも成長したい、向上したいと願うものですが、目標が見えて、希望が持てるときに「がんばろう」という気持ちがわくのではないでしょうか。

生活困窮者自立支援法の必須事業に「自立相談支援事業の実施」 がありますが、この相談窓口はそういう意味で非常に重要だと思います。「がんばろう」と思える窓口になれるかどうか。立ち往生している人に、どのようにア プローチができるか。一人一人の状況に応じた自立に向けた支援計画を作成する、というのがその業務でありますが、抱えている困難は、本人さえもわからない 複合的な場合も多いでしょうから、まずしっかり「聴く」傾聴が大事だと思います。

年に6回、大田区の助成金を受けて実施されている、一般社団法人おおた助っ人による「出口の見える無料相談会」では、相続・不動産・住宅・借金・離婚・解雇・事故その他の相談に応じていますが、弁護士・税理士・行政書士・司法書士・一級建築士・宅地建物取引主任者の中から、その人の悩みに会う3人チームで話を聞くそうです。

現 在、相談のうちの3分の1が生活困窮の相談ですが、借金の問題で来ていても、それは氷山の一角でいろいろな問題がかくれており、たいてい精神的・肉体的・ 経済的な問題が複雑に絡みあい、話を聞く中で、問題の真相が見えてくるので、一人につき、60分はかかる、との話でした。大田区の相談窓口に行ったけれど も既定の制限時間ではなんの解決にもつながらなかった、どこに相談にいっていいかわからない、たらいまわしにされて、気力を失いかけていた人もいるそうで す。

お聞きします。

自立相談支援事業の窓口は、どこで、だれが担いますか、何をめざしますか。どの機関とどのような連携をとっていきますか。そもそも、生活困窮者とはどう定義しますか。

具体的なつめは、これからだとすると、ぜひこれまでの大田区の相談業務が、本当に有効に機能していたか、検証して、今回のこの自立相談支援事業が、真に持続可能な社会に資する有意義な相談機能を有するものとなることを願います。

納 税課やまた地域の民生委員や地域包括支援センターやケアマネージャーたちが窓口につなげていくことが有効だと思いますが、たとえば虐待の陰には「経済的な 困窮」があるかもしれません。全庁的な連携が必要だと思われます。そして、しっかり話を聞く「傾聴」の訓練は欠かせないと思います。聞いてもらって、自分 の問題を整理することで、目標が見えれば、次の一歩につながるでしょうから、ぜひ「出口の見える相談窓口」にしてください。

任意事業の「家計相談支援事業等の実施」について、お聞きします。

モ デル事業に取り組んでいる自治体の報告では、自立相談の中身は、収入・生活費など家計相談が最も多いと聞きました。家計、住まい、人間関係、病気・障が い、が上位だそうです。家計での問題は、たとえば多重債務もしくは過剰債務を抱え、返済が困難になっている、カードに頼って生活や買い物をしていて、いく ら借金があるのか把握していない、児童扶養手当や年金の支給など月単位の収入でなく2~4か月単位の収入のため、家計管理が難しいなど、です。そしてなに よりも本人が問題点に気が付いていない、解決の優先順位を決められずに事態が悪化していることが多いそうです。
そこで「家計相談」の有効性を考えたいと思います。

九 州を中心に展開する生協「グリーンコープ」は5県に「生活再生相談室」を設け、福岡・熊本両県に相談事業を委託されています。相談者に寄り添った相談の中 で、家計表をいっしょに作り、家計の状況を「見える化」することで、本人が問題に気づき、やがては家計を管理できるようになることをめざす事業を行ってい ます。

ある事例です。30代の夫は、自営業で収入は安定せず、貯金はゼロ。車で事故を起こし、罰金50万円を科せられ、苦慮していたとこ ろへ、滞納していた市・県民税約40万円の請求。相談員は夫婦と面談を重ね、生活実態を把握し、1か月の収支を見る「家計表」を作成。検証すると、夫の実 家に必要性の低い仕送りをしていたこと、収入が多いと衣料品の購入が増えていたことがわかった。数年先までの家計を見通す「キャッシュフロー表」を作り、 今後の方向を検討。夫の昼ご飯を外食から妻の手作り弁当に替え、税金を分納。国保は減免。罰金は払わないと収監されてしまうので、グリーンコープからの 50万の貸付金で支払う。やがて夫婦の努力で毎月1万円の黒字を出せるまでになり、貯金もできるようになった。
このように丁寧な家計相談と最低限の貸付で、着実な効果が見られること、継続的な支援が続くので、貸し倒れ率も極めて低いということでした。

お聞きします。

家計相談支援は生活困窮の課題が本人に明確に意識できるという特性から、相談者の自立に向かう意志を喚起し、家計というフィル ターを通して将来を見通し、就労意欲等を生み出す効果が期待できます。大田区でも必須事業の自立相談支援事業とともに、具体的に踏み込んだ家計相談支援事 業も実施し、効果を図るべきではないかと思いますが、いかがですか。

先駆的に取り組んでいる現場からの報 告を聞く機会がありましたが、生活困窮者自立支援法は、想定されている必須・任意6事業のうち、自立相談支援事業と就労準備支援事業・そして家計相談支援 事業の3事業は、一体的に取り組まなければ本来の成果がでてこない。とりわけ、家計相談支援は生活困窮の課題が本人にも明確に意識できるという特性から、 むしろ必須項目として取り組まれる必要があるとの報告を聞きました。

生活困窮は家計の破たんから派生しています。支援員をおくコストで、 その先ずっと納税できる区民を増やしていくのか、家計管理ができずに滞納、やがて生活破綻、生活保護受給にいたる区民を増やしていくのか、家計相談支援は 地味なようで、持続的な効果をもつ、重要なものだと思います。ぜひこれまでの窓口業務を超えた伴走型の支援で効果の研究をしていただくようにお願いいたし ます。

さて、2015年4月からは介護保険制度の改正が行われます。超高齢社会に伴う介護需要を支え手がすくなる中でどう乗り切るか、地域づくりをどうするかはまったなしの課題です。

新たに配置される「生活支援コーディネーター」についてお聞きします。地域の支え合いの推進のために働く役割だと思いますが、どこを拠点にしてどのような業務をするのですか。

高 齢化が進めば外に出にくい人が増えると思います。近隣に集まる場所があり、楽しくおしゃべりしたり、体操をしたり、行事を楽しんだり、囲碁や将棋をした り、時にはお食事会をしたり、相談にのってもらえる場所が身近にあることが大事だと思います。生活支援コーディネーターがそこを拠点にアウトリーチも含め た相談に応じ、地域資源を有効に使う役割を果たせるといいと思います。そのためには、現在社協が応援するようなサロン活動のように場所を確保すること、集 合住宅には1室は「町の保健室」でも「シルバー交番」でもいいので、だれでもが利用できるスペースを確保して、社会とのつながりを保てる仕組みを創るべき ではないでしょうか。

お聞きします。

東京都が助成している、集合住宅における相談窓口「シルバー交番」の設置は、検討できないでしょうか。

地 域包括支援センターは本来中学校区に一つといわれていますから、28は必要なのに、20か所しかありません。足や腰が悪くなって歩くのがつらくなってきた 人に遠い地域包括支援センターまで行くようにというのは酷です。近くに気軽に行ける場所があることに意味があるのです。区営住宅や都営住宅には高齢者が大 勢すんでおり、4階建てでもエレベーターのないところもあります。ゴミや荷物が玄関まであふれている家もあります。一人暮らしの方も多く、本来なら、施設 に入った方が安心ではないかと思われますが、安価で入れる施設はありません。それなら住み慣れた場所で、安心して生活できるような仕組みが必要です。

大田区はコーディネーターを養成することに力を入れていますが、そのコーディネーターが力を発揮する場所はまだ考えていないのではないでしょうか。モデル事業でいいので、ぜひサロンの機能もある「町の保健室」や「シルバー交番」に取り組んでいただきたいと思います。