安全より経済優先? 羽田空港新飛行ルート案
羽田空港の騒音被害には長い闘いの歴史があります。その中から現在の「海から入って海へ出る」コースが確立されてきています。しかし、国土交通省は 2020年のオリンピック・パラリンピックに向けて訪日外国人を増やすという目標の中で、羽田発着の増便計画・新ルート案を提案してきたのです。しかも 「オープンハウス型」という掲示による一方的な説明だけで、共通認識も得られず、責任ある回答も得られるような場ではありませんでした。東京都心上空を低 空で飛行してくる新ルートでは、騒音被害のほか、落下物の危険性など不安はぬぐえません。都民の平穏な生活を奪ってまで、経済効率をいうのでしょうか。
だれのためのなんのための増便?政府は国民の見方ではないのか?大田区議会にも「白紙撤回を求める」複数の陳情が出されました。
しかし残念ながら、大田区議会は「不採択」という結果をだしてしまいました。
そのことに対する私の反対討論です。
◆東京生活者ネットワークとしても国土交通省に要望書を出す準備をしています。
↓クリックで拡大します。
28第49号「住民生活を脅かす、B滑走路西側離陸都心低空からのAⅭ滑走路北側着陸に反対の陳情」、28第50号「羽田空港の新飛行ルートは、安全な区民生活を守るよう求める陳情」、28第51号「羽田空港機能強化案に関する陳情」の採択を求めて討論いたします。
28第49号、28第50号は羽田空港の機能強化に伴う危険性について指摘するものであり、28第51号は羽田空港の機能強化についての教室型の住民説明会を求めるものです。
国土交通省は2020年のオリンピックの来訪者を見越して、また経済活性化をめざして、の国際便増便計画による新ルートを示しました。1時間あたりの発着回 数を80回から90回を可能とするために示された新ルートは、まず南風時15時から19時までの運行ルートで、東京都心部を北西部から南東方向に縦断して 羽田に入るのですが、練馬・中野・新宿・目黒・品川を通って大井町の上空では東京タワーより低い高度300メートルで降下、羽田空港A滑走路とⅭ滑走路に 着陸するというものです。
2つの滑走路には1時間に44機が着陸というのですから2分も空きません。合間を縫ってB滑走路からは出発便が1時間に22便、川崎の石油コンビナートの上を飛んでいくのです。
ここでの大きな問題は騒音です。着陸便は2分も空かない間隔で過密都市東京の上空を低空で飛んでくるのですが、高度300メートルで通過するときの騒音値は 80デシベル、地下鉄の車内と同じ程度の騒音といいますから、特に品川大井町付近に暮らす人の生活が一変することは想像に難くありません。B滑走路からの 出発便に関しても、もっとも内陸側・住宅地側のB滑走路を川崎側への離陸に使うということは、離陸時がもっとも騒音が大きいといいますから、羽田地区の住 民をまた苦しめることにはならないでしょうか。羽田空港の沖合移転は、内陸への負担軽減だったはずです。
A滑走路とⅭ滑走 路への着陸に関しては、緩衝地帯もまったくない、人口密集地区を降下してくることでの危険性も考えなければなりません。たとえば着陸態勢に入る、車輪を出 すときに、氷の塊の落下物があるという報告が、成田では毎年複数件あるときいています。羽田の場合は、国土交通省の勧告によって、海上で車輪を下すように しているので、これまで報告がありませんでしたが、今後住宅密集地で上空からの落下物があった場合、大きな事故につながらないとも限りません。
また平成26年の年間のゴーアラウンドが368回でしたが、さらに増えることが予想され、その場合は大田区上空を低空で飛ぶことが危惧されます。
以上述べたように、新飛行ルートには、騒音に関してはこれまで以上に直接被害を受ける人が多く、首都圏の人口過密地帯を低空で飛ぶということでの落下物、 ゴーアラウンド、大気汚染、墜落事故など、不安材料が大きいことから、これらの陳情にあるように、大田区だからこそ、歴史的な経験を生かして、区民のみな らず都民全体のためにも、国土交通省に対して新飛行ルートに対して、反対の意思を表明するべきです。
またこの計画について、国土交通省からの説明の場は、オープンハウス型という一方的な説明・解説といったものであり、日々の生活に直結する重要な問題なのにも関わらず、地域住民として認識が共有される場ではありませんでした。
羽田においては高度成長時代の空港拡張と騒音問題、一方では成田闘争、国家主導で住民の意思をないがしろにしたことの傷跡は深くあとをひくものでした。今ま た多くの都民が知らない間に生活環境を悪化させるようなことになっていないでしょうか。国は住民に誠実に情報公開をし、理解を得る努力をすべきです。この 陳情者がいうように住民の不安払しょくの訴えをきくべく、責任ある回答のある教室型の説明会の開催を求めるという陳情はもっともであり、採択を希望しま す。
根本的な問題には、羽田空港西側に米軍管轄の広大な横田空域があり、そのせいでルートが限定されているということがあ ります。もしこの空域が全面的に返還されれば、羽田・成田の出発、および到着経路を自由に設定できるために、混雑が緩和でき、騒音も分散、飛行距離も飛行 時間も短縮できて経済効果は大きいのだそうです。発着枠拡大をいうのなら、国は住民にがまんを強いる前に、国家間の調整にこそ、努力すべきです。