クリスマスには絵本を!ー【1】  目に見えない“すばらしいもの”に気がつく静かなひとときを

『クリスマスのおくりもの』

ジョン・バー二ンガムさく 長田弘やく ほるぷ出版

私が幼稚園で働いていた頃からずっと、クリスマスになると必ず子どもたちといっしょに読んだ絵本をご紹介していきますね。これらの絵本を通して、いつも心通うほのぼのとした幸せな時間をすごすことができました。この絵本も心に響く一冊です。

 

クリスマスのおくりもの

 

あらすじ

クリスマスイブの夜、世界中の子どもたちにプレゼントを配り終えたおじいさんサンタとトナカイが家に戻ってきました。トナカイたちは疲れ切っていて中には具合の悪いトナカイもいます。おじいさんサンタもベッドに入ろうとしたそのとき、なんと袋の中に一つ、プレゼントが残っていることに気が付いたのです。遠い遠い山の上に住むハービー・スラムヘンバーガーへのプレゼントです。しかもその子は貧しくて、これまでにおじいさんサンタからプレゼントを一度もらったことがあるだけです。おじいさんサンタは、たった一人で遠い遠い山をめざして歩いていきました。途中、多くの人がおじいさんサンタを助けてあげるのですが(車に乗せてくれたり、スキーに載せてくれたり・・・)山は険しすぎて、うまく進めません。さあ、クリスマスの朝までにたどり着けるでしょうか。

 

絵本の力

子どもたちは、この話の冒頭、大きな袋の中に一つだけプレゼントが残されていた、という場面で、ハッとして“大変だ~”という表情を一様にします。そしておじいさんサンタが一生懸命、たった一人の子どものために遠くて険しい道を歩いていき、どんな乗り物もうまくいかない場面が続くところでは、不安げな表情に。最終的にはおじいさんサンタは自分の足でたどり着き、寝ている男の子のそばにそっとプレゼントを置くのですが、この場面を見て、ほ~とため息をつく子どもたち。(よかったね~)という安堵感が部屋中を満たします。だれも言葉を発しなくてもわかるのです。子どもたちの優しい目の輝きで。クリスマスの喜びは世界の隅々まで届いてほしい、たった一人の子どもも取り残さないでほしいと子どもたちが願っていることが私に響いてきました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵本「クリスマスのおくりもの」

 


 

私はこの絵本を読むたびに、子どもたちの「愛」の深さに感動します。たった一人くらいプレゼントをもらえない子どもがいたっていいじゃないか、なんていう子どもは一人もいません。おじいさんサンタが必死になって、山道を進む様子を応援するかのように体をゆすって見ている子どももいます。おじいさんサンタの必死さに同化してしまえるのが子どもであり、最後のプレゼントをちゃんと届けてもらえたハービー・スラムヘンバーガーに同化してしまえるのも子ども、そしてその力を引き出すのが絵本の力です。
絵本の最後で、男の子がもらったプレゼントは何だったかは描かれていません。「おくりものが なんだったか しりたいな」というのが最後の文章ですが、贈り物がなんだったかにこだわる子どもは不思議とだれもいないのです。おじいさんサンタの一生懸命さ、「愛」そのものがプレゼントであると心の深いところで感じとっているのでしょうか。
たった一人への愛は、全ての子どもへの愛、全ての人への愛に通じているといえるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

今年の我が家のクリスマスの飾り