クリスマスには絵本を!―【2】  目に見えない“すばらしいもの”に気がつく静かなひとときを

 『てぶくろ』

ウクライナ民話 エウゲーニー・M・ラチョフえ うちだりさこやく 福音館

 

寒い冬の日にはぴったりの絵本です。子どもが連日、読んでほしいと求めてくる絵本でした。子どもに大きな満足感を与える絵本は、きっと子どもが本能的に求めているものがその絵本にしっかり描かれているにちがいありません。絵本から、子どもの思い、心理を洞察することは保育者にとって大切なことだと気づかせてくれた絵本です。3歳児くらいに。

 

てぶくろ (世界傑作絵本シリーズ)

 

 

あらすじ

雪の降り積もる山の中、おじいさんが手袋を片方、落としていきました。その手袋を見つけたねずみが「ここでくらすことにするわ」といって、入り込みます。次にかえるがかけてきて、「だれ、手袋に住んでいるのは?」と聞くと、ねずみが「くいしんぼねずみ。あなたは?」と答えます。かえるは「ぴょんぴょんがえるよ。わたしも入れて」。この繰り返しで、手袋の中にはどんどん住人が増えていくのです。おおかみもいのししも入って、はじけんばかりの手袋になります。最後は、手袋を失くしたことに気が付いたおじいさんが探しにやってきて・・・。

 

絵本の力

1965年発行のロングセラー、ずっと長く子どもたちに愛され続けた絵本です。私が3歳児、年少組を受けもった時、連日、この絵本を子どもたちのリクエストによって読みました。
模造紙に大きな手袋の絵を描いて、壁に貼っておくと、「あ、てぶくろだ」と言って、子どもたちは思い思いの動物や自分の絵を描いて、手袋の中に入れ込んで遊び、またすっかりセリフを覚えていたので、劇ごっこもしばらく楽しみました。なぜ子どもたちはこの絵本が大好きなのでしょう。
子どもは生まれる前は母の胎内にいて、生まれてしばらく母親の乳を求めながら同時に母のぬくもりを感じています。そのぬくもりは安全と安心の象徴で心地良く、肌を寄せ合うこと、くっついていること、そしてそれをまた包み込む「家」の中にいるということ、これが幸せの原体験なのではないかと思います。そして次に子どもの求めるものは、友だちです。「てぶくろ」を家として仲間がどんどん増える喜び、この絵本は、その意味で幸せの原点をストレートに描いているといえるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

絵本「てぶくろ」

 


 

幼稚園での子どもの遊ぶ様子を見ると、子どもは不思議と狭いところがすきで、段ボールを置いておけば、その中にもぐりこんで遊ぶし、狭いロッカーに体を入れたり、机に布をかけてその下で遊んだりすることも好きです。「包まれている」という感覚を子どもは求めているのではないか、と感じます。安心できる基地から、次の一歩に踏み出すことを子どもたちは遊び中で体現しているのですから、そういう遊びを応援することが保育者の役割といえるでしょう。この絵本は子どもの心の成長に寄り添った優れた絵本だとつくづく思うのです。