[女性と貧困]
~社会保障と税のあり方の視点から~
赤石千衣子さんのお話しを伺う機会がありました。
表題の講演を聞いて感じたことを、ご報告いたします。
●赤石千衣子さんのプロフィール
しんぐるまざあず・ふぉーらむ理事 / 反貧困ネット副代表 /
東日本大震災女性支援ネットワーク世話人 /
社会的包括サポートセンター運営委員
今、日本は、経済格差が大きな社会問題となっていますが、なかでも単身女性の3割強が可処分所得114万に満たない「貧困」で、そのうち、母子世帯では57%に及ぶといいます。
単身女性の場合、社会通念で「家事手伝い」、あるいは、「扶養されている」「いずれ結婚するから」とみなされ、問題にされてこなかった結果、女性無業者への就労支援は立ち遅れています。
一方、働いていても女性の半分以上は非正規雇用労働者なので、賃金の低さに加えて、社会保障がないという不安定さも加わります。
母子家庭では、就労率は84%であっても、平均就労年収171万円。
住宅費が生活を圧迫、教育費が不足。
低収入のため、二重就労や、託児所完備の夜の仕事に就かざるを得ない状況さえあり、経済的困難と孤立から、ネグレクトにもつながるケースが多いのです。
貧困をなくすためには、女性の稼得能力を上げることが急務です。
現在、日本では、出産後7割の女性が仕事を辞めているのが実態なので、育児環境の整備によって、継続就業率を上げること、正規・非正規を問わず、均等待遇を進め、男女の賃金格差縮小を進めることが雇用を安定させることになり、ひいては、経済活性化にもつながります。
また配偶者控除の縮小・廃止を含めた税制の見直し、第3号被保険者制度の廃止、パートタイム労働者への社会保障・年金制度の適用が必要です。
現行の「配偶者控除103万円」の制度は、夫だけが稼ぎ手であるという、片働き家族がモデルとなって作られた時代のもので、シングルマザーや被扶養のパート女性、派遣女性の拡大という働き方が増大していている中では、女性の賃金が低く抑えられる原因になってしまい、男女平等、同一価値労働同一賃金の視点からもシステムの是正が必要です。
また「第3号被保険者制度」は、配偶者が勤め人で、妻が週30時間未満の就労、年収130万円未満の場合は、保険料を納めなくても将来、国民年金がもらえる制度ですが、この制度のせいで、女性の社会進出を制限することになり、3号でない妻は、自分で国民年金や厚生年金に入って保険料を払う必要があり、公平感に欠ける制度です。
税・社会保障の機能の一つに国民全員の福祉に関する「所得再配分効果」がありますが、現在の日本においては、税金・年金・健康保険の保険料が高くて払えない、子どもの貧困率が再配分後に上がるなど、「所得再配分」がむしろ生活を圧迫している場合もあります。
このような制度のひずみをうめるために、「子ども手当」は、男女の賃金格差を埋める有効な手段であり、「同一価値労働同一賃金原則」への基盤となるものとして、期待されましたが、残念ながらかなり縮小されてしまいました。
また今回の「社会保障と税の一体改革」の中では、パート労働者にも社会保障の適用を広げる要望が提出されましたが、当初該当者が370万人だったものが20万人にとどまりました。
このような中で、家族の在り方の変化、バブルの崩壊とグローバル経済が生んだ不安定な働き方からは、以前のような、家庭・企業頼みの福祉では、もうたちゆかなくなってきています。
労働環境のシステムの転換、税と社会保障の見直し、ひとりひとりのセーフティーネット、仲間と居場所、など、社会資源をつくっていくことが急がれます。
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