避難生活を想定・生きる力を育てる 防災宿泊訓練 見学してわかったこと

 横浜市立北綱島小学校 2012年10月12・13日

昨年の3・11では、保護者が迎えにくるまで、夜遅くまで学校が児童を預かったという話を聞きます。保護者が帰宅困難になった場合、学校はどういう対処をすればよいか、ということは、学校にとって課題ではないでしょうか。

北綱島小学校の防災宿泊訓練。1日目、前半は全校生徒で地震を想定しての避難訓練、後半、第二部は、5・6年生だけで、防災教室や避難所作り、ランプ作り、夜間行動訓練などを経て希望者のみ宿泊(といってもほとんどの児童が参加)。翌朝は朝ごはんを食べてから解散、というプログラムが実施されました。私は高学年のみの第二部を見学させていただき、夜8時まで同行したので、ご報告いたします。

http://www.edu.city.yokohama.jp/sch/es/kitatsunashima/

 第二部

目標 

1.大地震発生による親の帰宅困難を想定して、学校で安全に生活できる経験により、実地での対応力を養う。

2.自宅での避難生活、避難所での避難生活も想定して、状況に積極的に対応して工夫して生き抜く力を育てる。 

想定

東京湾北部を震源とするM7.3の地震。大火災等、大きな被害。保護者の中には帰宅困難になっている方も多い。100名を超える児童が学校に留め置き、宿泊させて保護。電気・水道・下水は使用不可。各所で火災等二次災害が発生するが、消防隊の出動が困難なため、火災延焼防止には、職員・地域住民だけで対応せざるをえない。

 訓練内容

    起震車体験

    レジ袋など身近なもので応急手当てをする実技

    学校での宿泊体験・テント生活体験

    第二次避難場所への避難訓練

    炊き出しごはんとレトルトカレーによる夕食づくり

    簡易ランプづくり体験を含む夜間行動訓練

    体温の保持を図って快適に眠る訓練

    炊飯袋による炊飯訓練         

 北綱島小学校総合防災訓練(第二部)[5・6年生対象]「北綱島防災宿泊訓練2012」のご案内より         

 

見学してみてわかったこと

    ② ③

5.6年生が3つのグループに分かれて訓練。それぞれの場所で、地域の大人が指導。起震車では消防隊、応急手当では家庭防災員、テント張りにはボーイスカウト。(家庭防災員というのは、横浜市独自のもので、地区ごとに年に3回研修会があり、自治会長の推薦を受けた2人ずつが、地震や風水害に備えて、自助、共助のための技術を習得できる仕組みだそうです。指導に来ていた方々は、なかでも熱心な方々で、月1回、自主的な勉強会を積み重ね、地域の減災を研究されているとのこと。)子どもたちは、三角布を使って包帯を作る方法等の他に、大きなビニール袋に首と手を出す穴をあけて、服を作り、防寒の知恵も教わっていました。

学校付近で火災が起きたことを想定して、日吉台中学校まで、第二次避難を行いましたが、このときは地域の自治会の人たちがいっしょに歩いてくれました。

各自持ってきた器にサランラップをかけて、その上にご飯とカレーをかけます。ラップは器を汚さないための工夫。ご飯は、ボランティアの保護者たちが非常用のガス釜で炊いたもので、おいしく炊けていました。

外に張った、テントで寝ます。

簡易ランプというのは、サラダ油とティッシュのこよりとアルミホイルとコップでつくるロウソクのようなもの、サラダ油ランプ。こよりを伝ってくるサラダ油がなくならない限り、ずっと火を灯してくれます。校長先生の指導で作りました。電気を消した体育館に子どもたちの作ったランプが並ぶと、幻想的な美しさ。夜間行動訓練は、グループごとに真っ暗な校舎を懐中電灯で足元を照らしながら歩く訓練。「本当の災害のときは、物が散乱しているかもしれない、穴が開いているかもしれないから、よく、足元を見て歩きましょう」というのが出発前の注意でした。

サラダ油ランプ、校長先生が作り方を指導
サラダ油ランプに火がついた

 

   

 朝ごはん。炊飯袋(細長いビニール袋)にお米と水を入れて、輪ゴムで密閉して、湯で煮ると、ご飯ができるのだそうです。

 

テントを張って寝場所を作ったり、真っ暗な中で明りを見つめたり、ビニール袋の防寒服の温かさを実感したりという“体験”、地域の大人たちの見守りと教職員のチームワーク。訓練の重要性をみんなで共有しあっていることの証が、どの子どもも実に落ち着いていて、地域の大人や先生たちの話をとてもよく聞いていることでした。 

もう一つ、印象的だったのは、案内のお手紙の中の次の文章です。 

○ 準備するもの

・「非常持ち出し袋」に、生きるために必要なものを自分で考えて準備して持参

 

子どもを含めた家庭で、“考える”ということが大事だと示唆されているようです。

災害への対応は、最終的には、いかに臨機応変に動けるか、的確な判断ができるか、一人一人の生きる知恵、力によるところが大きいということでしょうね。訓練を通して、子どもたちを守ろうという学校の意気込み、子どもたちに“立ち向かえる力”を養っているということが伝わってきました。