障がいがあってもいきいきと働けるように~大阪【エル・チャレンジ】 視察報告

大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合 エル・チャレンジ(Labor Challenge)に、この夏に視察に行ってきましたのでそのご報告をします。

 知的障がい者の就労訓練は、“現場”で
エル・チャレンジ」は、障がい者の就労支援、雇用促進事業、建物サービスの共同受注などを行っている組合です。障がい者の就労というと、福祉作業所を思い浮かべますが、エル・チャレンジの事業は、「施設のない授産活動」なのです。
障がい者が“現場” でビル・クリーニング技術を習得しながら、同時に社会適応訓練(金銭感覚・あいさつ・通勤など)を受けて、民間企業へと就職していけるようにする、社会参加、就労支援の一連の仕組みです。

 
行政の福祉化
では、その“現場”とはどこかというと・・・・現在、エル・チャレンジが訓練現場として受託しているのは、府立大型児童施設「ビッグバン」、大阪国際会議場、大阪府中央卸売市場、大阪府庁、大阪市立大阪プールなど、60施設にもなり、年間100名ほどの訓練生が働いているそうです。実地訓練とはいえ、報酬も得られるので、「自立」への一歩になっています。
では、なぜ、そんなにも公共施設を受託できたか・・・「行政の福祉化」をはかっていた大阪府は、はじめに「ビッグバン」の清掃業務を「随意契約」(知的障がい者の雇用促進の目的で)でエル・チャレンジと結びました。
その後、エル・チャレンジが大阪府の所有する施設の清掃業務について、「知的障がい者の雇用としてではなく、民間企業での雇用促進のための訓練(就労支援)として活用すること」を提案しました。

 官民協働の社会貢献 「総合評価一般競争入札制度」導入
エル・チャレンジの実践が、低いコストで高い雇用開発成果が得られることを証明したこともあり、「入札制度の改善」、つまり障がい者雇用を評価項目に入れる「総合評価一般入札制度」が実現したのです。結果、通年型訓練の現場が60施設にもなりました。 現在は、就労支援生が1200人。12年で500人の就職が実現しています。

エル・チャレンジ 設立の意図

~「働く意欲」は「働くこと」によって生まれる~
●「“障がい”があるから働けない」という偏見やあきらめに挑戦すること   ・当事者・家族が働くことに安心できる環境整備   ・企業が安心して雇用できる環境整備
●エル・チャレンジの役割   ・福祉と労働のすきまを埋める中間的な役割   ・職業的重度障がい者の支援   ・「働き、働き続ける」ための支援へ

私たちは、実際の訓練現場を見学させていただきました。
そこでは、トイレの清掃・フロアーのモップがけ等が“現場”でしたが、仕事の方法、道具、手順等、とまどわないようにわかりやすく決められていました。
訓練生はとてもまじめに仕事をされていて、インタビューさせていただくと、仕事は楽しいとのこと、「困ったことはありますか?」の質問には、トイレが水浸しになっていたときは、困ったとのことでした。
いつもとは違う事態への対応はなかなか難しく、そういうときはエル・チャレンジの事業者である、担当の指導者に連絡をいれることになっているそうです。
一般企業の仕事に就くまでの、この一連のサポート体制、仕組みは、障害者の自立、社会参加、そして家族支援という意味でも、優れたシステムだと思いました。

働く喜びと働いた対価を得る満足感、これらは、障がいがあってもなくても、基本的な権利として、だれもが、持てる社会であるべきでしょう。エル・チャレンジの事業、そして、大阪府の総合評価一般競争入札制度の導入には、大変刺激をうけました。

障害者権利条約にある原則「インクルージョン」(社会の一員としての受容)が、実現するための施策は、あらゆる場面で、「分断」ではなく「共生」である、と改めて心に刻んだ視察でした。

”障がい者雇用の現場”の一つ「社会福祉研修情報センター」