待機児対策・区議会報告・予算特別委員会
大田区議会では予算特別委員会が行われています。 私も保育園の待機児対策について、3月14日に質問に立ちましたので、その内容をこちらでもご紹介したいと思います。
大田区では、認可保育園への申請者数が3,546人、不承諾者数、いわゆる認可保育園に入れなかった人が1,305人という現状です。昨年より150人近く申請者数が増えています。
大田区は平成23年度~25年度の3年間で1000人、保育定員を増やすとし、認可・認証保育園を増設、また定員の見直しをしていますが、追いつかない状況です。共働き家庭が増えたこと、夫婦で共に働かないと生活が厳しくなってきている、非正規労働者の増大、低所得化という社会状況も影響しているといえます。
杉並区、足立区に続いて、7日には、大田区でも保育園に入れなかった親たちが行政不服申し立てに来ていました。
集まっていた親たちの話を聞くと、「認可も認証も保育ママもだめでした」と涙ぐむ母親、「なぜ、区は、出生数を把握しているはずなのに手を打たなかったのか」と怒っている母親、「この年代に経験させてあげられることで、大きな差がつくのはおかしい」と子どもの育つ環境について、区の姿勢を問う父親の発言も聞かれました。
次世代の命を育む、しかしまだ所得の低い、若い子育て世帯に対して “働きながら、子どもを産み育てる環境の充実”を備えることこそが、社会の安定と活力、景気回復にもつながるカギであり、大田区がとりくむべき重要な課題です。
《待機児対策・保育所定員の拡大》
園庭があり、国基準の恵まれた環境で、しかも保育料の安い認可保育園を希望する親が多いのは当然です。
東京都社会福祉協議会がまとめた「保育園待機児問題白書」によると、保育園を選ぶにあたって、親が保育環境として重視していることは、「立地が通園や通勤に便利」と同時に「子どもたちがのびのびと楽しそう」「子どもたちが落ち着いて過ごせる保育室の環境」「敷地内に園庭がある」「採光や風通し、緑など、園内や周辺の環境が良い」で、環境的に恵まれている認可保育園にだれもが入園できるようにすることが理想です。
待機児問題・・・もっとも大きな問題は、“せっかくの育児休業制度を利用せず、途中で切り上げ、0歳児から保育園に入れる人が多い”ということです。
望んでいるのならまだしも、本当は、育児休暇をとって、子どもといっしょにすごしたいのに、“早く入れないと保育園に入れなくなるかもしれない”という不安からというのが、その理由だというので、この実態には不合理を感じざるを得ません。
今回の申請者のうち、0歳入園希望者が1,000人、不承諾者の中には270人の0歳児入園希望者がありました。
【1】予約制・入所時期の分散
育児休暇がとれる人はしっかりとれるような仕組みとして、育休明けに必ず入れるという予約制の導入の検討を強く要望いたします。総体で認可保育園に入れる人を増やすことができます。
現在は、4月入所に集中していますが、これもせっかくの育休を切り上げる原因になっています。4月と10月の2回に入所時期を分けることができないでしょうか。それによって、生まれ月に応じた、育児休暇のとり方を選ぶことができるのです。枠の問題は、現在は、4・5歳児に空きのある保育園が少なくないので、そこにシフトしていけばよいと考えます。試行的に少しずつ10月枠をとっていってみてはいかがでしょう。
この時期の子どもは、半年の成長の差は大きく、ハイハイしている子どももいれば、歩き出す子どももいます。子どもの成長を考えても、4月・10月入所に組み合わせて、誕生日がきた子どもたちを半年に一度、学年をあげることで、低年齢児の枠を増やすことは検討できないでしょうか。
保育園が決まらないと、就職が決まらないという求職者にとっても有効な対策といえます。保育園に入れるという確約があれば、計画的な復職、就職活動をすることができるわけです。
4月入所集中により、職員のこの時期の事務量は大変なものだと聞きました。職員の事務量を一年に振り分けるためにも、課題は多いでしょうが、半年ごとに入所数を分散化することを考えられないでしょうか。
縦割りクラスを採用している保育園も幼稚園もあるので、途中からクラスが変わる不安を持つことがないようにも工夫もできると思います。
【2】施設の有効利用
区立保育園は、国の面積基準を守るなかで、0・1歳児の定員を増やしてきました。けれども24年度の保育園入園状況一覧表を見ると、低年齢児に待機児が多く、3・4・5歳児においては欠員があります。
年齢ごとの在籍者を見直しながら、施設全体の有効活用の検討を希望いたします。これまで0.1歳の定員見直しはされてきましたが、3・4・5歳児についての定員見直しはなされないのですか。
【3】幼稚園の活用について
すでにかなりの幼稚園は、日常の預かり保育も夏休み・冬休みの預かり保育も行っています。さらに、どんな課題をどのように解決すれば3歳以上の働く親の支援のためにも子どもたちが、保育園ではなくて幼稚園でも十分に過ごすことができるのかを、幼稚園個々と協議することで、区独自の幼保一元化施設開設にいたることも考えられないでしょうか。
出生数が減少に転じてきている中、伝統ある大田区の教育環境としての資源である幼稚園を支援するべきではないでしょうか。春休みと冬休みには人あてが大変だという話を聞きます。認可保育園に入れない人が1300人という状況を受けて、これまで以上のアプローチを幼稚園にしていくつもりはありますか。
【4】大田区の今後の方向性
「今」困っている人を救うためには、スピード感をもって対応をしなければならないと考えます。大田区は、行政不服申し立てを、どう考えましたか。区民の申し立ては妥当なものか、全く申し立てにあたらないか、期の途中でも対応するつもりがあるのか、うかがいます。
《入園のしくみ》 【5】入園選考基準指数の問題
保育園入園に際しては、入園選考指数があり、大田区のように保育園に入ることの難しい地域では、その点数の差は、大きく運命をわけるものになります。3点について質問いたします。 (1)非常勤より常勤の方が選考基準指数が高いことについて
まず問題に思うのが、非常勤のフルタイムより、常勤のフルタイムの人の方が、選考基準指数が高いことです。
今の日本は3割以上が非正規雇用、女性は5割も非正規雇用とだといわれています。正規雇用を希望しても非正規雇用にしかなれない、という現実があり、「働いている状況・保育の必要性」に差はないのです。むしろ、一般的には、正規雇用の方が所得も高く、社会保障も充実していますが、非正規雇用の人の方が不安定要素が多く、厳しい生活を強いられているといえます。
また会社が子育てを目的とした短時間勤務を認めていても、入所申請においてフルタイムでないと選考基準指数が低くなってしまうことも、保育提供のあり方・制度が、ワークライフバランスの考え方に逆行しているといえます。
うかがいます。非常勤のフルタイムより、常勤のフルタイムの人の方が、選考基準指数が高いのはなぜですか。この点数方法は時代に即していないといえます。常勤・パートという区分でなく、就労日数や時間での基準に変更できないでしょうか。
(2)選考基準指数における加点について
次に選考基準指数における加点についてです。 月2万円以上かけて、保育事業者に預けていた人に2点の加算は問題だと考えます。厳しい生活の中で、月2万円以上の保育事業者に預けられない人もあります。認証保育園だと6万から7万円もかかります。選考基準指数に「所得」が反映されないとするならば、経済的にゆとりのある人の方が、有利になるといえないでしょうか。
(3)「求職中」の人の選考基準指数について
どうしても働かなくてはならない状況なのに、子どもを預けるあてがなくて、就職活動が満足にできない人も少なくありません。母子家庭も増えています。
就職を希望する場合、「子どもを預けられるから、働ける」のであって、「預けられるかどうかはわからないが、働きたい」で、契約を結んでくれる会社があるでしょうか。
常勤でフルタイムの人が11点に対して、求職中で常勤に内定している人が4点、非常勤に内定している人が3点、未定の人は1点。これではあまりにも不利ではないでしょうか。求職中の人の選考基準指数は少ないのはなぜでしょうか。
【6】保育料の格差補填
認可保育園に入れないのは、その人の落ち度ではなく、十分な量がないという、ただそれだけの問題だとすれば、保育料に大きな差があるというのは、公平ではありません。
同じように税金を払っているのに、一方は税金で保育料が賄われ、しかも所得に応じた保育料です。認可と認可外との保育料の格差を補填することと、所得に応じた保育料にするべきではないでしょうか。財政投入するべきで、必要経費であると考えます。
また加点目的で、認証保育園に入ることは、0.1.2歳の時期に保育の場がすぐに変わってしまうということで、子どもにとって、問題があると考えます。また「認証保育で待つ」という考え方は、区の保育需要を支え、独自の保育理念でいっしょうけんめい経営している認証保育園を軽んじることでもあり、経営を不安定にさせているといえます。
この間、民営化、民間委託を進め、その分のコスト削減を保育需要につぎ込むことはできなかったのか、ということも気になるところです。
《入園した後の使いやすさ》
【7】延長保育の枠の拡大
区は、順次、保育園を民営化することにともなって、延長保育・延長定員の拡大をするといっています。しかし圧倒的に保育園が足りない状況で、生活圏の中に入れる保育園を見つけることも容易ではないのに、その中のサービスも限定されているのでは、働く人の苦労を強いるばかりです。
ある親は、やっと手に入れた延長枠。けれども下の子どもの出産で育休をとっている間に、上の子どもの延長枠の権利は取り消しに。復職時に途方にくれたとの報告がありました。3歳になったときがピンチで、フルタイムの会社員は2人目を生んだら、退職せざるをえないのか、と悩んだそうです。
子どもが3歳になるまでは、時短勤務という制度があるけれども、3歳以降はなくなるので、3歳以上の延長保育の枠の拡充は必要です。
そこでうかがいます。 区立区営の保育園では年齢ごとに5人ずつの枠しかない、とういうこのくくりはどのような考え方にもとづいているのですか。社会の変化、ニーズや実績などを見て、見直しをする必要があるのではないでしょうか。
延長の定員枠をあらかじめ決めるのではなく、個人の事情に寄り添って、希望に合わせて対応することはできないのでしょうか。必要があるから、保育園に入っているのであり、延長保育もその一環という位置づけとは考えられないでしょうか。
【8]病児・病後児保育にファミリーサポート
現在は、病後児保育室は田園調布・多摩川・中央・久が原・西糀谷の5か所しかありません。圧倒的に足りていない、地域による偏りがあるということも問題です。施設が少ないうえに、許容量も多くはないので、特に感染症のはやっているときなどは、定員はすぐ埋まってしまいます。感染する病気であれば、部屋の都合で2種類が限度だということです。
乳幼児ですから、熱や下痢などよくあることですし、保育園という集団生活においては、感染はやむを得ないところもあります。そのたびに保護者が会社を休むのは大変に難しいことです。
非正規職員だったある人は、子どもの流感で3日続けて休んだら、退職を迫られたということです。絶対にはずせない仕事についている人も少なくないでしょう。病児・病後児保育の拡充が必要です。
もちろん、子どもが病気のときぐらい、会社が快く休ませてくれるような社会のシステム・また風土であるべきですが、今の時点では、まだ病児・病後児へのサポートが必要だと考えます。
新宿区、中野区、清瀬市では、ファミリーサポート事業の中で、病児・緊急対応強化事業を実施しています。一般のファミリーサポートとは別に研修を受け、医療機関との連携もとりながら、病児・病後児を預かるしくみです。
ファミリーサポート制度は大変すぐれた仕組みだといえますが、大田区においても病児・緊急対応強化事業を実施できないでしょうか。研修制度、あるいは、たとえば、リタイアした看護師さんなどにも呼びかけて、病児・病後児対応ができるスタッフを要請することを今後考えられないでしょうか。
提供会員さんの家で預かるのがファミリーサポートの基本ですが、病気の子どもをあまり移動させるのには、無理があるかもしれません。依頼した会員の家で、見ることもできる柔軟な対応は考えられないでしょうか。
出生率が減ってきている中、大田区には、転入で子どもたちが増えているときいています。期待に沿うように子どもたちと子育て家庭を優しく育む大田区であってほしいと思います。