吹田市:義務教育9年間を一体的にとらえた小中一貫教育の推進 行政視察報告2
先の記事、
⇒子ども読書サミットとは? 子ども文教委員会・行政視察の報告
に続いて視察報告の第2弾です。
校舎は別々のまま、2つの小学校と1つの中学校が連携しての、小中一貫教育。
先行き不透明な時代、未来を切り開いていける若者を育てていこうとする、市の意欲的な取り組みに大いに学ぶことがありました。
■吹田市の教育ビジョン:
「今 吹田市から未来(あす)の力を」
そ の具体化であり、重点的取組に「小中一貫教育を通した『総合的人間力』の育成」があります。「総合的人間力」の育成に向け、義務教育9年間の一貫性・継続 性のある指導の充実、学校力の向上が図られています。現在の教育現場では、いじめ、不登校、体力の低下、人間関係の希薄化等が課題になっていますが、一貫 教育によって、何が解決されるのか、どのような効果があるのか、大変興味深く感じました。そのご報告をいたします。
■連携のブロック
●千里たけみ小学校と桃山台小学校と竹見台中学校、合わせて千里みらい夢学園
市 内の学校は、全て小学校2校と中学校1校が1ブロックとなり、施設は分離しているままで、連携・連続性に取り組んでいます。PTAは各校ずつではなく、一 つの学園としてあり、学園祭り、小中レク、様々な体験学習、避難訓練も学園としてのブロックで、また地域の町会と連携して取り組みます。
吹田市立千里たけみ台小学校
●小小の連携
2つの小学校で、演劇や音楽などの合同鑑賞会をいっしょに行うことで、同じ中学に行ったとき、共通の思い出を持ち、友だちへのなじみもできています。
●小中の連携・6年生の中学校登校
年間を通じて、毎週、金曜日、6年生は中学校に通います。専用の部屋が用意されており、授業は50分×6時限として、小・中の教員によるティームティーチング等での学習です。
たとえば、理科の授業では、小学校の教師がリードする中、中学校の教師が実験を見せてくれるなど、中学校での学習に期待感を持てるように工夫されているそうです。小小交流の時間や小中合同の時間も組み込まれています。
この日の昼食は、中学生と同じに、弁当、あるいは、購買部でパンを購入、中学校給食(デリバリ方式のお弁当)を選択することができます。放課後は、中学校のクラブ活動に参加することも可能で、一日、中学生生活を送るのです。
道を隔てて隣の吹田市立竹見台中学校へ移動しているところ
●効果
・小学校は1限が45分、中学校は1限が50分だが、この日は中学校の単元で行うため、
中学校の教師が授業に参加しやすい。
・授業を観る経験や、いっしょに学習することで、中学生への憧れを抱く経験になっている。
・中学1年生で多く起こるといわれる、不登校などの「中1ギャップ」が軽減された。
・常に小中での教師間の交流と連携があることで、
子どもの様子を追っていくことができ、子どもの成長発達への適切な手助け、
精神的なサポートができ、長く関われることでの教師のやりがいにもつながり、
子どもたちにとっても安心感が大きい。
・数学など、中学校の教師が、小学校のどの時点でつまずいているのかを知って、
指導に活かせる。基礎学習の徹底が図られる。
・2つの小学校の生徒は同じ経験を積んでいくことから、
中学生になったとき、スタートラインがスムーズ。
規模にもよるのでしょうが、「連携」がうまく機能していることで、子どもたちの安心感が大きくなるであろうことは想像できます。6年生で 中学校に通った子どもたちが、次に中学生になったときは、共感しながら出迎えるなど、小中一貫であることで、いい循環が生まれ、無意図的な自然な交流も含 めて、コミュニケーションが生まれることは今の時代、とても大事な経験だと思います。コミュニケーション能力が育まれる土壌が学校にあるかどうか、は大き なポイントではないでしょうか。「総合的人間力」の要と言えるかもしれません。
吹田市は、英語教育、特に会話能力に力を入れているという ことですが、ここでも「コミュニケーションをとりたい」という意欲が育まれているかどうかが問われてくるのではないでしょうか。中学生は、一人一人が、修 学旅行で広島に行ったとき、出会った外国人にインタビューするのが目標だと聞きましたが、“勇気”と“失敗しても乗り越えられる強さ”が試される“通過儀礼”も、義務教育の総仕上げにいいことかもしれないですね。