「放置自転車を考える」 区議会報告その2・陳情が教えてくれるもの 区民の声に学ぶ
前回は、第4回定例会での「一般質問」の報告をいたしました。
今回は区民から提出された「陳情」に対する私の意見をご報告いたします。毎回、議会には区民からのいくつかの陳情が提出されます。まず委員会で審議され、多数決で「採択・不採択・継続」のいずれかになり、「採択・不採択」のいずれかになった場合は本会議場でまた採決がなされます。委員会には全議員が集まっているわけではないので。
このときに“採択すべき”とか“不採択にすべき”と訴える説明のことを「討論」と言います。私は、今回、以下の討論をしました。陳情者には共感するものの、まず、大田区が「自転車利用」について、区民への利便性を公平に整理して提供するべきだと考え、今回は「不採択」を主張しての討論です。
みなさんは、どうお考えになりますか。
久が原駅前の様子
29第55号・平和島駅周辺の「自転車等放置禁止区域」の範囲拡大に関する陳情について、反対の立場から討論いたします。
この陳情は平和島駅前から平和島口までの国道15号線の歩道に自転車が放置していることから「自転車等放置禁止区域」に指定することを要望するものです。
区では「自転車等放置禁止区域」は駅の周辺や通行に支障をきたす場合に設置されるとのことですが、この「支障」をどう考えるかは難しいところです。陳情にある歩道よりももっと狭い歩道での放置自転車、車道にまではみ出てたくさんの放置自転車が並んでいる駅付近もあります。放置自転車が歩道を占拠していれば、人が通りにくく、まして車いすなどは通りにくくなり確かにルール決めが必要だと考えます。
しかし、どのようなルール決めをするべきか、この陳情は、私たちに大事な問題を提起しています。まずなぜ放置自転車があるのか、地域によって原因がさまざまでしょう。この陳情の場所においては、ふち義務がまだ課せられていなかった時代のマンションの住民の自転車や近くのうどん屋などに入るために短時間においている人もいるとのことです。
いいか、悪いかは別にして、短時間の食事や買い物に際しては、近くに駐輪場があればいいですが、ない場合は、しかたなく歩道に自転車を止めてしまうことはだれにでもあるのではないでしょうか。つまり現状、道路や歩道は自転車に乗る人にとっての利便性はほとんど考えられてはいません。以前、浜松に自転車利用の推進の事例を視察に行ったときは、広い歩道のところどころにきちんと並べておける自転車駐輪地帯が設置されていて、放置自転車を見かけませんでした。土地の限られている東京ではそのような整備は難しいですが、自転車駐輪地帯が適当な間隔で配置されていれば、放置自転車問題もなくなるわけで、公平に多くの区民の生活の利便性も考えたうえで、ルール作りはなされるべきだと考えます。たとえば、車道であっても時間決めの駐車帯が設置されていて、短時間の用事には大変助かります。
自転車も一定の幅の歩道であれば、点字ブロックを敷き、その上には自転車は載せない、そのうえで、きちんと並べられる場所に30分以内、あるいは1時間以内というルールで置けるようにするなど工夫ができるのではないでしょうか。大田区は現在、コミュニティサイクルを推進していますが、外からのお客さんには自転車とサイクルポートを用意して、自転車を所持している区民の利便性は考えなくてよいのでしょうか。取り締まりだけが強化されるとなると出かけることに躊躇し、街や商店街の活性化にも影響するのではないでしょうか。
健康的にも、排気ガスを出さないクリーンな乗り物である自転車は優れた乗り物で、大田区のように観光スポットが点在しており、途中の景色も楽しめる点では観光の足にもアピールできるものだといえます。陳情者の訴えには大変共感しますし、基本的なマナーはもちろん守るべきです。しかし現状では、大田区は自転車を推進するのか、もしそうなら規制を厳しくするだけでよいのか、矛盾を感じるばかりであり、自転車対策の研究を希望するものです。以上のことから今回は不採択を求めて討論といたします。