「そうだ、地域とつながろう」、ある児童養護施設職員の挑戦! 二葉むさしが丘学園

二葉むさしが丘学園の「地域連携・自立支援コーディネーターとは」

 
 
4月25日、東京都小平市にある児童養護施設 二葉むさしが丘学園に視察に行きました。
 

 

 

 

 

 

 

入口

 

目的はこの施設独特の制度外の役職「地域連携・自立支援コーディネーター」の役割を知るため。職員の一人、武村雅裕さんが自らの課題意識から創り出したこの役職は一体どういうものなのか、施設の概要とともにお話を伺いました。
(東京ネット・多摩北エリア企画の学習会)

 

 

 

 

 

 

 

武村さんのお話を聞いているところ

 

社会的養護とは

保護者のいない子どもや、様々な理由で保護者が監護することが適当でない子どもを公的な責任で社会的に養育すること。施設と里親がありますが、今は施設が主流ですが、改正児童福祉法では今後、里親を主流にすることをめざすとのこと。入所理由は虐待によるものが一般的には6割、こちらの施設は9割が虐待だということです。

 

二葉むさしが丘学園・施設の概要

昭和51年、都立施設として設立され、平成22年に民営化。定員数78名、うち一時保護事業枠が6名。小規模ユニット型+グループホームで、6~8名が生活単位。支援内容は生活支援、家庭支援、心のケア、自立支援、里親支援、退所者支援、一時保護と多岐にわたっています。特に虐待が心に及ぼす影響は大きく、心のケアの充実が求められています。

 

 

 

 

 

 

管理棟の玄関。木の質感に温かみがある

 

 

 

 

 

 

 

体育館の中で説明をしてくださっている武村さん

 

施設退所後の課題

(都における児童養護施設等退所者の実態調査H29年2月より)

・雇用状況⇒半数以上が非正規・派遣
・収入状況⇒半数以上が手取り15万以下
・連絡がとれない退所者が約3割(全社協調べ)
頼れる親がいない⇒仕事(収入)がなくなる=住まいを失う
・退所後に困ったこと⇒孤独感、孤立感、金銭管理、生活費
奨学金を得るためにはたくさんの書類を用意しなければならないがそれも難しい。
またうつや自殺未遂、ホームレスや性風俗に行ってしまうこともある。
 

「そうだ、地域とつながろう」、施設長に直訴

職員だけでは子どもたちにやってあげられることに限界がある。施設生活と地域生活とのギャップが卒業後のつまづきになる。突破口は地域とつながりをもって地域にも育ててもらおう・・・武村さんは施設長に頼み込んで「地域連携・自立支援コーディネーター」を創設、地域に出かけるようにしました。たとえば学校の参観日や保護者会、社協や子ども家庭支援センター、子育て支援のNPOの方々とネットワークを立ち上げ、交流会やイベントを開催、学園でも月に一度の「オープンカフェふたば」、年に一度の青空まつりには地域の人を呼びます。体育館は地域の様々な団体に無料で開放、老若男女が通ってきているそうです。

 

 

 

 

 

 

 

体育館

 

武村さん自身が積極的に地域に出ていき、地域を知り、つながり、協働する、という活動がそのまま、施設を越えた「社会的養護」になってきているのではないかと実感されているところだそうです。

 

 

 

 

 

 

 

武村さん(地域連携コーディネーター)としての地域活動履歴

 

地域連携で得たもの

・たくさんの面白いことを子どもたちに提供できた
畑仕事、福島被災地バスツアー・・・
・僕らが困ったときに支援してくれる人が増えた
学校の部活が遅くなったとき、近所の人が自分の子どもといっしょに施設まで送り届けてくれた
・地域の人から相談を受けることが増えた。
どこに相談したらよいかわからないでいた人が多かったことがわかった
・何より社会的養護を理解してくれる人が増えた

様々な職業体験を実現、特別養護老人ホームのクリスマス会でコーラスを披露させてもらったときは、高齢者に感謝されて、喜んだ子どもたち。親からは「死ね」と言われていた。デイサービスでの職業体験がきっかけで不登校の子どもが継続して手伝いにいっている例も。

 

地域に必要な支援

さまざまな支援があってもそれをつなぐ人がいないと必要とするところに支援が届かない
「気づき」「もれなく」「つなぐ」ことを「しかける」人・部署が必要。

 

 

 

 

 

 

 

広い中庭

 


武村さんのお話を聞いていて、やはり要になるのは「人」であることを思います。
武村さんが地域の多くの人と顔見知りになること、施設を開放することが、子どもたちの世界をも広げていくのですね。