東京都済生会中央病院附属乳児院に見学に行ってきました

「一人一人、どの子どもも抱っこしてあげたい。みんな抱っこされたがっているのです。それが十分できないことが私たちの一番のストレス」

 

日本で最初の乳児院

愛情を傾けて小さな子どもたちに真摯に向き合っている乳児院。東京都済生会中央病院附属乳児院の歴史は大正12年、関東大震災の震災孤児救済のために北里柴三郎氏が事業を開始したことに始まるそうです。7月13日、見学をさせていただき、施設の看護師、社会福祉士の方にお話をお聞きする機会をいただきました。

 

 

 

 

 

 

 

全景

 

生後5日から3歳までの子どもたちが35人。病院附属なので低体重児や疾患のある子どもたちも医師との連携の中で、きめ細かく発達支援、健康管理を受けています。幼児になると(1歳以上)午前中は外遊びで、近くの芝公園や東京タワーにお出かけをしたり、暑い時期は庭で水遊びを楽しんだりしています。お花見やすいか割りなど、たくさんのイベントがありますが、お誕生日を迎えたら、その子ども一人だけを担当職員が東京タワーに連れて行ってあげることもしているそうです。

 

 

 

 

 

 

子どもたちの靴

 

年々、入所児が低年齢化していて、年間20名入所に対して0歳から3カ月の子どもが6割、全体の8割が0歳から8カ月の乳児だそうです。新生児枠が3名分しかないので、予約になっているそうです。

虐待を受けた子どもの場合は、入所時、緊張感が強く、話さない子ども、無表情の子どももいて、信頼関係を築くのに時間がかかるとのこと、また虐待の後の後遺症(合併症)がある子どもも少なくなく、頭部外傷による「てんかん」、ゆさぶられにより目の毛細血管が切れて網膜剥離「失明」なども見られ、保育士がつきっきりにならざるを得ない子どももいるそうです。

課題

人員が足りないこと。特に夜(16:30~8:50)は35名の子どもに対して3名の大人。愛情を強く求めている子どもたちは、「抱っこ」を求めますが、応えてあげられないのが辛いとのことでした。

 

 

 

 

 

 

 

給食室

 

親支援のあり方

首がすわっていないのにゆする、など危険の予測ができない、養育スキルがない、生活力がない、ひきこもっていて地域や人と関わりを持てない、風俗など夜の仕事に出ていくなど養育環境を作れない、虐待の世代間連鎖の中にある、あるいは精神疾患があるなど、家庭育児に戻すには、親支援が絶対的に必要。乳児院は家庭訪問など家族支援が2年間しかできないが、2年間では足りない。子どもを保育園に入れたとしても人との付き合いができるかどうかが問題。子どもを養育するときのキーパーソンがいない場合が多い。

地域とのつながりをどう作っていくか→子育て世代包括支援センターが必要。

しかし、乳児院につながった子どもはまだいいけれど、見えないケースをどう見つけるかが課題。妊娠期からの相談機能が必要ではないだろうか。

親になる覚悟や子どもへの愛情の醸成に少なくとも高校生から赤ちゃんに触れ合う機会が必要ではないだろうか。

 

施設改築に向けて

老朽化した施設は、近いうちに改築されるそうです。そこには乳児院の居室の他に地域に開かれた「子育てひろば」や「ショートステイ」、「病院職員のための保育室」など新しい機能が加わるそうです。地域の子育て支援環境の一つのモデルとなっていくことでしょう。

 

 

 

 

 

 

玄関前で

 


 

保育室を見学させていただきました。子どもたちのなんとかわいらしかったこと。保育士の目を見つめ、笑いかけ、何度も微笑みの応答をしている赤ちゃん。
子どもにとっては、温かい人との触れいが何よりもの栄養であると実感します。
社会から虐待がなくなるように、少なくとも連鎖が断ち切られますように、と祈らずにはいられません。