医療・福祉の課題に真剣に取り組む場を訪問・愛知&長野〔視察報告〕

大田区議会 健康福祉委員会で視察に行ってまいりました。 (2018年8月28~30日)

各地の先進事例に学ぶことが多く、ここに簡単に報告いたします。
 

1.浜松市発達医療総合福祉センター(障害児・者の在宅支援の拠点)浜松市
2.NPO法人つくし(聴覚・ろう重複センター)名古屋市
3.春日井市総合保健医療センター(健康づくり拠点)春日井市
4.松本市(健康寿命延伸都市)松本市
5.相澤病院(救急医療体制と地域連携)松本市

 

1、浜松市発達医療総合福祉センター

約3万7千㎡の敷地に4つの機能(療育・医療・福祉・相談)をそれぞれ備える施設、診療所、児童発達支援を行う療育センター、就労支援、生活介護、地域活動支援を行う福祉センター、相談支援事業所などが連なっています。障害の早期発見・早期治療、訓練など一貫した障害福祉支援の提供、幼稚園、学校などとの連携に力をいれています。

 

 

 

 

 

 

 

浜松市発達医療総合福祉センターにて

 

年々増加している発達障害ですが、平成28年度の浜松市の出生数6783名、うち18%、約1200人が1歳6か月検診で要経過観察を含めて発達障害の疑いがあるとされました。
支援としては2~3歳にかけて市内7か所にある発達支援広場(たんぽぽ広場:遊びを通して訓練を受け、医師とも相談ができる)に週1回3カ月、幼稚園や保育園に通いながら通うもの、発達医療センターに毎日通う施設型があります。
早期発見は早期治療に結びつくこと、乳幼児のうちから「受給者証」を受け支援を受けるので、保護者が家庭での関わり方を学び2次障害を防ぐことにもなっているということは重要なポイントだといえます。

 

 

 

 

 

 

 

発達障害支援の流れ

 

もう一つ参考になったのが、初診時にソーシャル介入が必要とする人が約半数あるということで、医療だけでは解決できない面を把握し家庭全体を支えていくことが、障害への適切な理解や治療にも通じるという考え方で家族に向き合っているという点です。たとえば、姉弟共に同じ障害をもっている、保護者も疾患を抱えている、経済的な困難を抱えているなどですが、対応するための計画相談が増えてきているということです。

知的や身体障害を持つ人の就労支援施設と隣り合って、立派な体育館とプールがありますが、たとえば体育館は車いすバスケットに合わせた低いゴールがあるなど配慮がなされており、在宅の障害のある人への開放や一般開放も行っているそうです。

 

 

 

 

 

 

 

体育館

 

2、NPO法人つくし(聴覚・ろう重複センター)名古屋市

聴覚・ろう重複児者のために愛知県を中心に生活介護事業や就労継続B型、放課後デイサービスなど、10事業所を展開している団体です。人にとって、コニュニケーションはとても重要で、現状の施設(聾学校)だけでは、地域の中で生きていくことは難しい状況があります。

 

 

 

 

 

 

 

NPO法人つくし・就労継続支援B型事業所の前で

 

たとえば聾学校を卒業しても地域に手話のできる人がいなければ人とのコミュニケーションがとれず、実際、聾学校を卒業して30年間、家に引きこもっていた人もいたといいます。仕事ができたとしてもコミュニケーションが取れなければ孤立してストレスがたまり、親への暴力に発展することもあります。

また重複の場合は、身体障害者の施設に行っても、知的障害の施設に行っても、言葉が通じず、障害がさらに重くなるということが懸念され、人権に関わる大きな問題だといえます。  NPO法人つくしは障害があっても暮らしやすい地域づくりをめざして果敢に挑戦を続けています。制度の枠組から外れた問題を解決するには当事者の声を聞いて政策を積み上げていくことが大事であること、障害とはコミュニケーションの障壁があるということで双方から歩み寄る工夫をすべきであると教えられました。

 

 

 

 

 

 

 

目的

 

 

 

 

 

 

課題

 

実際、代表者会議に聴覚障害者が出席することで、はじめにはなかった「手話通訳」がつくようになるなど、改善がみられているとのことでした。団体の理念「万人が願う人間らしい生活を実現するために私たちは行動しよう」という言葉が心に響きました。

 

 

 

 

 

 

作業所で生み出される質の高い石けんや入浴剤、化粧品

 

 

3、春日井市総合保健医療センター(健康づくりの拠点)

市民病院と併設のこの「保健医療センター」は定期的な健診、脳ドッグなど人間ドッグの拡充、乳幼児の発育や発達に関する相談や指導など、総合的な健康管理のための場と機会を提供しています。春日井市は高齢化率が25.3%で、地域福祉と医療は重要な課題ですが、特に4万2千人の人口を擁する高蔵寺ニュータウンは高齢化率が30%なので、専門部署を置き、保健センターも稼働しています。健診は上げってきていますが、「ヤング健診」は実施率が低く課題であるとのことです。
市民にとって安心なのは、休日と平日夜間の救急診療の実施で、年末年始は日に300人を超える患者があるときもあるそうです。また案件によっては併設している市民病院救急センターとの連携がとられるということです。

 

 

 

 

 

 

 

春日井市総合保健医療センター・緊急診療の入口

 

妊産婦ケアとして、妊婦または1歳未満の子どものある母親が専門職への相談、一日ゆっくりすごすことのできるスペースが用意されていることも参考になりました。

 

4、松本市(健康寿命延伸都市)

現市長は医師であることもあり、急速に進展する超少子高齢型人口減少社会を見据えて「健康づくり」「子育て支援」「危機管理」を施策の柱に掲げ、更に現在はそれらを強化したうえでの「健康寿命の延伸」を掲げています。
山間地もある広い松本市では、35の行政区にわけて、全てに「地域づくりセンター」があり、地区別の地域づくり計画を立て、住民自治力、地域教育力、地域連帯力によって、地域課題の解決を目指しています。たとえば「福祉ひろば」では地域住民が中心となって健康づくり(健康や福祉の講座、ウォーキング、サークル活動、子育て支援など)に務めています。具体的には任期2年の「健康づくり推進員」が市民の健康作りの一翼を担うべく、自分がまず学び、家族や地域に学んだことを広めていったり、同じように「食生活改善推進員」「体力作りサポーター」など市民の活躍が地域の健康度を上げていっているのです。

取り組みのキーワードは「若い時から」「一時予防」「地域・企業との連携」。学校では、中学2年生での血液検査による健康への意識づけ、食・運動に関する講座、企業へは朝礼の時間などに出前講座で「健康講座」を実施するほか、市独自の検診も充実しており、予防に力を入れています。

結果、長野県は全国トップクラスの平均寿命と高齢者就業率。野菜の摂取の日本一です。公民館の数が日本一ということは地域で人が集まり活発に活動することが健康の秘訣であることを示しているのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

松本市役所、入ったところ(婚姻届を出した人の写真スポットのようです)

 

 

5、相澤病院(救急医療体制と地域連携)

地域の人々の望むことは困った時にすぐ視てくれること。「全ての患者を受け入れる」「本気の救急医療」を標榜する相澤病院は、救急車やドクターヘリで運ばれてくる重症の患者だけでなく、自家用車でくる患者も365日、24時間、決して断りません。いつでも検査も相談も緊急手術も入院もできるように各診療科医師の連携・協働に務めています。

 

 

 

 

 

 

 

相澤病院・緊急で入院したら

 

そして救急医療を実践していくためにはその後の受け皿確保、地域医療との連携は必須。その体制作りに「医療連携センター」を設立、地域の全ての医師と連携を取り(ドクターネットシステム)、診療情報提供の管理、在宅調整、転院調整、症例検討会、高額医療機器の共同利用案内などを行っています。

 

 

 

 

 

 

 

退院に向けてのお手伝い

 

 

 

 

 

 

 

退院支援

 

登録医対応や地域医療連携の実際は、かかりつけ医がいつでもどこでも迅速に入院、外来、検査の予約ができるように、電話は地域医療連携室1本で受け付け、かかりつけ医からの紹介での検査や治療は「診療情報提供書」を詳細に作成してかかりつけ医との連携をとりあいます。安心をつなぐ医療は急性期から地域での在宅療養へ、そして医療と介護の橋渡しも今後の大きな課題であり、相澤病院は現状の課題と将来を見据えて果敢に体制作りを行い、日本の医療をけん引するモデルともいえるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

病院屋上のヘリポート