子どもの権利を守るためにオトナにできること  ~いじめ・虐待・居場所の不足、どうにかできない?~

前回は「遊ぶことは、生きること」と題して天野秀昭さんのお話を伺い、今回は喜多さんのお話を通して、改めて子どもの育つ環境を俯瞰しながら、子どもの権利をどのように守っていけばよいか考える機会を得ました。

 

子どもの権利を守るためにオトナにできること

~いじめ・虐待・居場所の不足、どうにかできない?~

喜多明人さん

(早稲田大学・子どもの権利条約ネットワーク代表)
9月29日 キッズな大森にて
主催:大田区教育委員会(家庭・地域力向上支援事業)
実施団体:おおたっ子権利条例をつくる会

 

喜多明人さん

 

 

大人主導ではなく、子どもの視点から考える大切さを、高根沢町の不登校対策、奈井江町の子ども参加の町村合併の是非の投票など、先進事例からは大いに学ばされました。まずは、「子どもの権利に関する歴史」から、簡単にご報告いたします。

 

1.子どもの権利の国際化

・戦災孤児の救済活動をしたジェップ・エグランティン(1876~1928年イギリス)
・敵国の子どもを救うのか、という批判を浴びる
→バーナード・ショウ「子どもは敵にあらず、子どもは人類の未来」と応援
→セイブ・ザ・チルドレン、世界児童憲章につながる

2.1959年国際連合「子どもの権利宣言」から
  1989年国際連合「子どもの権利に関する条約」

・生存や発達は守る、しかしそれを一方的に決めているのは大人。
→1989年「子どもの参加の権利」が加わる
・1994年、日本が批准。
地域で生かそう→川崎市が条例作り

 

3.条約を地域で実現

・身近なところで意見をいう場が必要。地域の中にホッとできる場所がほしい
・栃木県高根沢町の不登校対策
学校復帰を目指さない、町営のフリースクール「ひよこの家」15年間運営
“子どもにとって大切なのはどこで学ぶかではなく、何を学ぶか”との町長の英断

「ひよこの家」に行っていた子どもがやがて学校に復帰する。休養が必要だった。
自分のやりたいことを実現するために学校に行きたいと思うようになった。
学ぶ意欲は、子どもの本能、本性。子どもは自分から環境に働きかけていく。
“指導ありき”ではない。“自分の意志である学び”を支援するのが本来の教育。

・学校の意識変革が必要
・子どもが学校に来ない = 教師の力量がない、と捉えがち。
→学校にくるように説得、子どもは逃げていく
・日本の不登校児13万4千人、学校に行っていない20万人
・適応指導教室が利用されない→税金の無駄使い

 

 

 

 

 

 

 

講義中

 

●なぜ「権利条例」が必要か

・権利の視点があって、居場所の意味が深まる。
・奈井江町(北海道)子どもを含めた投票で町村合併の是非を問う
→町役場の職員になった子どももいる。
町のことをしっかり考える経験→子どもの成長・発達につながる
・杉並区「ゆう杉並」の初代企画運営委員長→杉並区役所のまちづくりを担う
・救済機関、緊急に必要 「せたがやホッと子どもサポート」のような。
千葉、学校のセクハラ問題多発。行政の縦割りが問題解決を遅らせている

 

●条例制定の道のり
議会では全会一致をめざす。子どものことでは一致すべき。本質的な対立はないはず。

 


 

●喜多さんの講義のあとは、参加者全員でワークショップ
テーマは「条例ができたら、どうなってほしい?大田区」
・子どもの権利意識を高めたい
・子どもの心と体が元気になってほしい
・学校にも家にも居場所のない子どもがいる。学校復帰を求めないフリースクールがほしい
・継続して子どもの声をくみ取ってほしい
・子育て中の親にも安心しておせっかいができるようになりたい
・品川区民広場の冒険遊び場に行く親子の3分の1は大田区民。遊び場の充実。
・守らなくてはいけないのはいじめている子ども、救わなくてはならないのはいじめている子ども
・ストレスのない子どもはいじめをしない
・資源がない。遊ぶ場がない。選択肢がない。もっと遊び場をふやしたい。
・不登校の子どもたちには、学ぶ権利がない。
法律ができると行政との連携がつきやすいので早く条例がほしい。

 


 

●最近心配なこと、子どもや学校・・・
・自己主張ができない
先生の顔色を窺う:とても暑い日、道の途中で水筒の水を飲めばよいのに、途中で飲んでよいのかどうかわからない、先生がダメっていったから飲めない、という子ども。自分の主張がなくなってきている。やるな、といわれてやって痛い目にあって成長するものではないのか。
・学校という幹が細くなってきている
障害というレッテルを張られるとすぐに分断、みんなといっしょに見てもらえない
子どもたちも人とのちょっとした違いが受け入れられなくなっている
・親の過剰反応
子どもの不登校で、深刻になりすぎる親
リスク回避の度が過ぎると、子どもの成長をとめてしまわないか
・教師のストレス
感情的な怒り方で子どものプライドを傷つけることがある


子どもの成長や学校の役割を考える時、単に学力ではない“人間力”を育てる“地域力”を育てる視点が大事ではないか・・・・話は尽きないのでした。

 

 

 

 

 

 

喜多さんを囲んで

 

 

2018年11月3日(土)・4日(日)に、栃木県足利市で『子どもの権利条約フォーラム2018inとちぎ』が開催されます。

「子どもの権利条約フォーラム2018inとちぎ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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