産前産後の支援はまだまだ足りない! 大田区マタニティパス条例に賛成の討論
討論その2 議会最終日:12月7日
大田区マタニティパス条例に賛成の討論
自分の子どもを産んで初めて赤ちゃんに接するママが多くなりました。嬉しい反面、不安も大きく、多方面からのサポートが必要です。特に大田区は児童虐待の相談がうなぎのぼりで増えています。少しでもストレスを取り除いて、妊娠をみんなで祝福するムードを作ることは大切だと考え、この条例案に賛成の立場で討論しました。結果は、否決でした。
◆健康福祉委員会の時の賛成討論はこちら
⇒大田区議会中間報告【2】「大田区マタニティパス条例」について
以下、全文です。
大田・生活者ネットワークは、議員提出第14号議案「大田区マタニティパス条例」について、採択を求める立場から討論いたします。
この条例は、母子健康手帳交付の際に、その後の妊婦健診の他、外出を支援するために公共交通に使える、6千円相当のICカードを交付するというものです。
大田区の合計特殊出生率は2016年は1.18で23区中16位、しかも下降傾向です。厚生省の人口動態統計によると2016年は全国平均が1.44なので大田区はそれよりかなり低いことがわかります。子どもが生まれにくい、産みにくい状況の原因を探り、改善が必要です。
合計特殊出生率は一人の女性が一生のうちに出産する子どもの予測数ですが、1975年に2.0を下回ってから下がり続けています。人口を維持できる水準が2.07なので国全体としても、今のままでは産む人も減るということであり、高齢化と人口減少は避けられず、国をあげて、子どもを産みやすい、育てやすい環境作りに真剣に取り組まないと納税者の減少と社会保障費のさらなる増大とで経済発展はのぞめないと思います。
そのような中で都内各自治体も産前産後の支援事業には今、かなり力を入れてきています。港区は、合計特殊出生率1.45、現在23区中第1位で全国平均よりも高く、しかも年々上げてきています。支援の中身はたとえば、これは港区独自のものですが、出産費用の補助、これは健康保険からでる出産育児一時金42万円を差し引いた、上限60万円までの出産費用を補助するというものです。たとえば60万円の出産費用だったら、18万円の補助がうけられて、つまり出産費用は自己負担なしということです。また港区コミュニティバスの無料乗車券も子育て支援の一環として母子健康手帳を見せることで交付され、出産後1年間使えます。もちろん経済的な支援だけではなく、港区は母親学級を1コース3回制で妊婦さん同士の情報交換や地区ごとの交流タイムも設けたり、出産後、これは有料ではありますが、家事支援や育児支援の産後ドューラの派遣など孤独な育児をサポートする体制も創っています。第2位の中央区は出産支援タクシー利用券を1万円分、新生児に対して区内共通買い物券を3万円分贈呈しています。
妊娠、出産は嬉しいことですが、日常とはちがう出費があることはまだ若く蓄えもない世代にとっては、経済的な大きなストレスを抱えることになります。核家族で孤独で不安な妊娠期です。自治体はさまざまな方面からのサポートを考えなくてはならない時代です。
大田区では東京都からの補助金を活用して妊娠届出をしたときに、商品カタログを手渡し、1万円相当の品物か家事支援か区外にあるヨガ教室への1回の参加のサービスを1つ、選んでもらうサービスをしていますが、経済的な支援がまだまだ足りないと考えます。産科の少ない大田区では遠くの産院まで検診にいくための交通費は負担の一つでしょう。
マタニティパスというネーミングは出産を祝福するというメッセージを感じられ、とてもよいと考えます。PASMOはタクシーにも使える場合もあるので、今いくつかのタクシー会社が実施している「陣痛タクシー」、登録しておけば、陣痛がおきたときに優先的に安全に迅速に産院に運んでくれるシステムでも利用できるでしょう。しかし6千円ではすぐになくなってしまうので、今後は増額も視野に妊婦さんの応援を考えるべきではないかと考えます。運動が大事な時期でもありますので、海沿いの公園の散歩を進めるなど、区内の散歩コースを案内しながらプレゼントするのはいかがでしょう。もちろんこれは一つの試みであり、妊婦さんからの意見を聞きながら、今後さらに、大田区の未来のためにさまざまな産前産後の支援策を打ち出していくべきです。
以上、大田区マタニティパス条例について採択を求めての討論といたします。