クリスマスには絵本を!ー【3】  目に見えない“すばらしいもの”に気がつく静かなひとときを

 『おまたせクッキー』

ハッチンスさく  乾侑美子やく  偕成社

 

子どもにとって、おやつの時間はとびきり楽しみなものです。どんなお菓子か、いくつ食べられるのか、は大きな関心事です。おなかがすいていれば、なおさら早く食べたいし、たくさんたべたいものです。この絵本はおやつをめぐってはらはらドキドキ、子どもたちの気持ちを釘付けにします。4、5歳くらいに。
 

おまたせクッキー
 

あらすじ

おかあさんがおやつにクッキーを焼いてくれたので、2人の子どもが食べようとすると「ピンポーン」玄関のベルがなります。友だちがやってきたので、クッキーをいっしょに食べることに。ところが食べようとするとまた「ピンポーン」。次々に友だちがやってきて、迎え入れるので、そのたびにクッキーの分け前は少なくなりそうです。いつになったら、クッキーを食べられるのか・・・。

 

絵本の力

パット・ハッチンスの絵本はユーモアがあります。繰り返される「ピンポーン」というベルの音のたびに、子どもたちは「まただ」と言って、友だちと顔を見わせます。(どうしよう、どうなるのかな)と困ったようなおかしいような表情を見せてくれます。それなのにいっしょに「ピンポーン」と声を合わせて物語を楽しむ子どもたち。どんどんクッキーの分け前は減るでしょうが、だれがくるのかな、という期待もある、複雑な心境を味わったあとの思いがけないハッピーエンド。繰り返しのおもしろさ、単純だけどはらはらドキドキのストーリーに子どもたちのリクエストの多い絵本でした。
子どもは成長するにつれて、集団生活の中で、「待つこと」「分けること」がだんだんできるようになります。そして「許すこと」も。絵本を読むことで、子どもの成長の一端を確認できました。私にとって絵本を読む時間が至福の所以でもあります。
クリスマスにはサンタさんからプレゼントを贈られるうれしい体験があるでしょう。「喜びを分かち合う」といった他者との関係を豊かにする経験を積み重ねていきたいものです。
 

 

 

 

 

 

 

絵本「おまたせクッキー」