クリスマスには絵本を!ー【4】  目に見えない“すばらしいもの”に気がつく静かなひとときを

『ざぼんじいさんのかきのき』

すとうあさえ・文  織茂恭子・絵  岩崎書店

 

柿の木の実が色づいてきたり、八百屋にきれいな柿の実が並んだりする頃、秋から冬になると必ず読む絵本です。世の中にはいろいろな人がいて、いろいろな考え方があるもの。現実にはもうあまり地域の中でいろいろな大人に出会うことが少なくなってきているのかもしれませんが、子どもにとってはたくさんの“生き方”に出会うことは貴重な学びとなることでしょう。絵本では大笑いしながらそんな出会いができるのですね。5,6歳頃に。

 

ざぼんじいさんのかきのき (のびのび・えほん)

 

あらすじ

ざぼんじいさんはみごとな柿の木を持っていますが、だれにも分けることなく柿を独り占めして、しかも見せびらかしながら食べます。そんなざぼんじいさんのとなりに引越してきたのはまあばあさん。まあばあさんがざぼんじいさんにあいさつにいくと柿の実ではなく、くれたのは食べ終わったあとの“柿のヘタ”。しかしまあばあさんは、“りっぱなヘタ”だと喜び、子どもたちとその柿のヘタでコマを作って遊びます。それを知ったざぼんじいさんは、柿のヘタさえあげたくないので柿の実を全部落としてしまいます。役に立たないと思ってあげる柿の葉も枝も次々まあばあさんは喜び、楽しい遊びに替えてしまうので、ついにざぼんじいさんは我を忘れて柿の幹まで切ってしまいます。
我に返って呆然とするざぼんじいさんを今度はまあばあさんと子どもたちが助けてくれるという話です。

 

絵本の力

人生にはマイナスだと思えることがたくさんありますが、それをプラスに替えることができるんだ、ということを暗示しているかのような絵本です。心の持ちようです。いじわるなざぼんじいさんに対してあっけらかんとしたまあばあさんの対比が見事で、役に立たない(と思われる)ものをもらって喜ぶまあばあさんをみて、ざぼんじいさんが「なんで、うれしいんだ?」という毎度のセリフに子どもたちは大笑い。

人は人の中で楽しみを見出して共に生きる。財産があっても孤独であるとき人は幸せか。
昔話が繰り返し教えてくれるような教訓。この絵本は教訓ぽくなくて、明るく、楽しいタッチで子どもたちの心に「おおきくなーれ」「逆境にめげないで」「前向きに生きよう」と語りかけているようです。

 

 

 

 

 

 

 

絵本「ざぼんじいさんのかきのき」