【きたざわ潤子のプロフィール‐2 】 幼稚園教諭をしていた頃の話

子どもにこそ本物を

東洋英和女学院短期大学保育科では、人格形成期である乳幼児期の大切さを「発達心理学」を中心にたたきこまれましたが、さらに実践の場で学ぶことになったのが、「幼稚園」という職場でした。

はじめに地元、埼玉県狭山市の狭山ひかり幼稚園に就職しました。「子どもにこそ本物を」という園の方針で毎年、プロの演奏家のコンサートや優れた児童演劇の鑑賞会がありました。劇団銀河鉄道の「龍の子太郎」を観たあとは、子どもたちの「龍の子太郎」ごっこが延々と続き、「感動」は子どもの生活(遊び)に大きな躍動感を与えるのだな、と教えられました。本物といえば、園で飼っている動物はヤギ、白鳥、孔雀、うさぎ、ハッカン、鶏で、子どもたちといっしょにエサやりなどの世話をしました。就職の時の面接では「ヤギの乳しぼりはできますか」だったので、面食らいましたが、楽しい園生活を送れました。子どもの感性を尊重し、意欲や好奇心を大事にする幼児教育の在り方を教えてもらいました。

結婚して大田区に住まうようになって、最初に勤めたのはめぐみ幼稚園。池上本門寺の山の斜面2000坪の敷地に保育室が点在していて、子どもたちは広く起伏のある園庭を自由にのびのびと遊びました。当時の園長先生は「子どもにとって大事なのは自分に自信を持つこと」とよくいわれていました。子どもが発見したことを「すごいねェ」と驚くことしかできない未熟な保育者でしたが、植物の根っこを次から次に引っこ抜いては眺めている子どもがやがて大学で自然科学を深く研究するようになったという話を聞いて、やはり子どもの感性に敬意を払う保育でよいのだと思いを新たにしました。

 

子どもの心は大きく優しい

キリスト教主義の幼稚園でしたので毎日礼拝がありましたが、4歳の子どもを受け持っていた時、「何かお祈りしたい人」と聞くとYちゃんという子どもが手を上げてお祈りしてくれました。「みんなのおふとんをお守りください」と。これは早生まれのYちゃんがなかなかおねしょを卒業できずに、気に病んでいたことから、“みんなもきっと苦労しているのだろう”と思ってのお祈りだったのです。私しかこのYちゃんのお祈りの意味はわからなかったでしょうが、私はYちゃんの優しさに感動しました。

子どもの優しさ、心の成長に触れることができることは喜びであるとともに、“人は何をめざして生きていくのか”、自分自身に問いかける日々でもあり、実に奥深い、やりがいのある仕事でした。