“子どもにはもともと権利がある”“子ども自身の本来持っている力を信じる”
子どもの権利条約ネットワーク主催
連続講座第5回
認定NPO法人国際子ども権利センター(シーライツ)代表理事
文教学院大学教授 甲斐田万智子さん
11月1日、早稲田大学にて、国際的に子どもの権利保障のために精力的に働かれている甲斐田さんのお話をお聞きしました。“かわいそうな子どもを助ける”という発想ではなく、“子ども自身の本来持っている力をエンパワメントする”という徹底した考え方に至る活動の原点に触れるお話でした。
大人の役割は、子どもの本来の力を信じること。子どもにはもともと権利があることを知らせること。そして子どもの声を聴ける大人を増やすこと。実践から得た、子どもを信じる強い思いが伝わってきました。
“子どもを守る”“子どもを支援する”と大人目線で考えがちなこの社会には示唆深いお話でした。
甲斐田万智子さんと司会の荒牧さん
●子どもの権利との出会い
学生時代、フィリピンでのボランティア活動の中で、たくましい子どもたちに出会う。ユニセフに就職、国際援助に携わるが、アフリカ飢餓キャンペーンの最中、“かわいそうな子どもを助けよう”という発想に違和感。子どもの逞しさを伝えたい、“援助ではなく、開発教育やアドボカシーを”、“チャリティーではなくエンパワメントを”と思った。ちょうど出合った本を「未来を奪われた子どもたち」(明石書房)として翻訳出版。“子どもが主人公”、“子どもの権利”という視点を確固としたものにする。
●児童労働の問題
インドの児童労働、搾取の問題は深刻。NGOバタフライズとNGO・CWCは子どもたちをエンパワーする支援をしており、子どもたち自身が自分たちの権利を守る運動、子ども銀行を運営するなど、参加と発信、“子どもが主人公”を実現している。
●シーライツとのかかわりとカンボジアでの活動
シーライツに就職。インドから子どもたちとNGOスタッフを招致。児童労働の問題と子どもの権利を伝える。カンボジアの人身売買、性的搾取、児童労働をなくす活動を始める。子どもたちが活動する場を提供、子どもの権利を子ども、大人、社会に知らせていく活動を展開。
カンボジア、ネパールでの人権啓発活動
教育が大事だということ・「学ぶ権利」のあることを伝えるキャンペーン
●子どもに対する暴力撤廃に向けて政府への働きかけ
日本における体罰や虐待、性的搾取は海外からも批判されている。子どもの権利重視という視点がない故に結愛ちゃんの事件が起こった。2018年、日本は子どもに対する暴力撲滅グローバル・パートナーシップのパスファインディング国となったため、子どもへの暴力をなくすための計画策定やデータ整備の取り組みが求められるが、その計画に子ども参加を提案している。
●マイノリィティーの子どもの声を聴く
子どもの権利、特に子どもの参加の権利が学校で教えられていない。マイノリィティーの子どもの権利が保障されていない。「子どもの声を聞いてそれを活かしていくこと」、「権利のレンズで子どもをみる」、「最善の利益が優先されているかどうか」の観点から考えることが求められる。どのような仕組みを作れば、子どもの権利が守られるのか考えていかなくてはならない。
子どもがありのままの自分をだせるようになるには、受けとめてくれる大人が必要。まず、大人に権利教育をすることが先。
GPeVACパスファインダー 子どもに対する暴力撤廃の進め方素案
★本の紹介
「世界中の子どもの権利をまもる30の方法」合同出版
認定NPO法人 国際子ども権利センター+甲斐田万智子(編)
荒牧重人(監修)
甲斐田さんと世田谷・生活者ネットワークの金井えり子さんといっしょに