公園―障害があってもなくてもだれもが楽しめる場所 オーストラリアの最新の公園事情

12月11日、WUPジャパンと一般財団法人公園財団主催の海外情報講演会があり、公園についての先進事例を聞いてきました。

オーストラリアの多くの公園を管理している「パークス・ビクトリア」においてコーディネーター”をされているデボラ・プレンティスさんがその公園事情を紹介してくださいました。

Parks Victoria

 

講演者、真ん中はデボラ・プレンティスさん(パーク・ビクトリア)、左は通訳者
右は、柳田宏治さん(みーんの公園プロジェクト代表、倉敷芸術科学大学教授)

 

オーストラリアには、Healthy parks Healthy people、つまり“健全な生態系が人々の健康を支える”という考え方があるそうで、雄大な自然、生物多様性を保護する観点と健康増進に活かす観点から公園を捉えるそうです。公園での活動は地域社会への参加であり、医師も孤独感や疎外感は不健康の要因だとして、“社会的処方箋”として公園でのウォーキンググループに入ることを勧めることもあるそうです。

そして、障害があってもなくてもだれでもが楽しめる公園作りに対するソフト・ハード両面からの取り組みは、日本のこれからの公園作りにとっても多いに参考にしたい事例でした。
公園は、共生社会の大事なインフラであり、コミュニケーションを育む環境になり得るものです。だれもが行きたくなる公園、だれもが共に楽しめる公園の在り方を追求していきたいと思いました。簡単にご報告します。

 

公園におけるインクルーシブな取り組み
オーストラリアではインクルーシブは大きなコンセプトで、障害があってもなくても自然の中に出かけようと呼び掛けています。

たとえば、素晴らしい自然を背景にしたナショナルパークにおいては、「トレイルライダー」という山道用の車イスが自由でアクティブな動きを可能にします。また海岸の砂場を自在に進むことのできる車イスも開発されています。障害があってもなくても、公園を楽しむことができるように常に改善、改良が図られているのです。

 

 

アダプティブマウンテンバイク

 

砂浜でも走れる車イス

 

公園ではボランティアが重要な位置を占め、車イスを押す人、弱視の人にはいっしょに歩きながら、まわりの景色を解説し、サインがあれば音読するなど、会話も楽しむボランティアが待機しています。

 

インクルーシブな遊び場
海外のインクルーシブな遊具や公園も紹介されました。障害があっても遊ぶことのできる様々な工夫のある公園です。活動しやすい地面、車イスで登れるすべり台。日陰のある砂場、身体を固定して乗ることのできるブランコ・・・。多彩な遊び要素と挑戦の機会があり、多様な人々が安心して集い交流できる公園です。

 

 

身体を固定されるから安心して乗れるブランコ

 

車いすごと乗れるブランコ

 

この講演会を紹介してくださった永峰さんはお子さんが車椅子ユーザー。彼女は以前、こんな話をしてくれました。“どんなに障害があっても、子どもは遊ぶことが大好き。スリルや刺激を求めている。揺れたり、はねたり、回ったりしたい。風を感じたい。障害を持っている子どもたちがわくわくして遊ぶことのできる遊具や公園はほとんどない。公園こそが地域の子どもと交流できる場所なのに。障害があってもなくてもだれもがいっしょに遊ぶことのできる遊具や公園があってほしい”と。

 

回転する遊具。中に座れる

 

回転する遊具

 

だれもが一緒に遊び、楽しめる公園を日本も真剣に研究し、創っていくべきです。
国内には現在、インクルーシブ公園がまだ20ほどしかありません。「みーんなの公園プロジェクト」代表で倉敷芸術大学教授の柳田宏治さんが「日本の遊び場事情」を報告してくれましたが、多様な子どもにとってはまだまだ課題があります。

1. アクセシブルでユーザブルか?
勾配が急すぎる、狭すぎる、長すぎる

2. 公平でインクルーシブか?
分離してあって、特別扱い、障害の強調、役割の固定

3. 生き生きと遊べるか?
限られた遊び要素、限られた挑戦レベル、限られたシナリオ

 

 

多様な人々と話し合いをして、障害のある人に主導権をもってもらいながら、公園を作っていくことの大切さを教えられました。私もさらに学びつつ、提案を続けていきたいと思います。

今年度中に世田谷区砧にもユニバーサルデザインパークが開設するそうですが、完成が楽しみです。

 

この講演会にさそってくれた永峰さんと