片付け事業フォーラム  リサイクル事業で地域に働く場をつくろう!

片付け事業フォーラム

リサイクル事業で地域に働く場をつくろう!

                              2020年1月18日 生活クラブ館にて

 

だれしもが尊厳を持って働くことができる、自分の居場所があるということは基本的に重要なことです。しかし、障害をもっていたり、ひきこもりが長かったり、様々な事情からホームレス状態になった人など、働きにくさを抱え、居場所のない人もいます。社会的な経験を積みながら、あるいは、傷ついた人が立ち直りながらの就労の場、居場所が必要ですが、公的な支援だけでは必ずしも解決には至りません。

“働く場の創出”“社会的課題を解決する場”をキーワードとしたフォーラムが開かれました。持続可能な社会を考える上で、示唆の多い提言が多くありましたので、自身の備忘録を兼ねて報告いたします

 ●貧困の現場から社会を変える 

稲葉剛さん(立教大学大学院特任教授、つくろい東京ファンド代表理事)より   

稲葉剛さん(立教大学大学院特任教授、つくろい東京ファンド代表理事)

この年末年始は9連休、日雇いの人にとっては仕事がなく、行政窓口も閉まっており、助けを求める場所がなく、結果、“その日暮らし”のネットカフェから押し出されるようにして初めての野宿をした人もいたといいます。東京都が昨年公表した調査によると家がなくてネットカフェやサウナなどで寝泊まりする人は、都内に推計約4000人だそうです。

つくろい東京ファンド代表理事)では「年越し大人食堂」を開設し、2日間で102人の人に暖かい食事の提供と生活相談を行い、行くところのない人には「東京アンブレラ基金」から宿泊費が支援されたそうです。可視化されにくいけれども、親の理解が得られずに家を出てきたLGBTの若者や行政からの住宅支援を打ち切られた原発事故避難者、さまざまな背景を持つ人たちが今夜、雨露をしのげる場所を求めているとのことでした。

年越し大人食堂

「住まいの次は、仕事と居場所」、「つくろい東京ファンド」では住宅支援の他、最近、カフェを開設、元ホームレスの人たちがコーヒーやランチの提供をする中で、徐々に地域の人との交流も始まったとのことです。

 

●“貧困化社会におけるリサイクルを軸とした社会的企業の可能性” 

 若畑省二さん(企業組合「あうん」の前代表理事)より

若畑省二さん(企業組合「あうん」の前代表理事)

 「あうん」は野宿者・元野宿者の仕事おこしから始まった事業体で、片付け仕事を中心とした便利屋事業、リサイクルショップ事業で事業を構成しています。特徴的なことは、当事者が仕事を主体的に創り出すという発想を持ち、皆が同じ時給で働く協同労働の形式で運営されていることです。このような一般労働市場で働くのが困難な人々を包摂して共に働く労働統合型社会的企業を、もっと各地域に広めたいこと、また高齢化社会が進んでいる中で、片付け・リサイクル事業は大きな可能性を秘めているとのお話しでした。

 

また現行の日本の就労支援は、能力や技術をまず習得することに力点が置かれていること、賃金始め、利用者と支援者が明確に区別されていること、当事者が主体的に就労の場を創り出していくという発想がないことが問題だとの指摘がありました。

 

●共働事業所「よって屋」の実践  

 重田益美さん(一般社団法人共働事業所よって屋代表)より

重田益美さん(一般社団法人共働事業所「よって屋」代表)

「さまざまな背景を持つ就労困難者が、社会の一員として存在と尊厳を認められ、対等・平等に働くことのできる、就労を通した社会的包摂の場が必要」という志のもと、あうんモデル片付け事業「共同事業よって屋」が開始されて2年目に入り、その報告でした。産業廃棄物取り扱い資格取得、古物商許可、軽トラック購入を経て、生活クラブインクルーシブ事業連合助成金を取得し設立準備資金の一部を担えたとのことでした。メンバーは片付けの技術を徐々に習得し、仕事の依頼も順調に増えているとのことです。

超高齢化時代、かたずけ事業は必要とされるでしょう

 

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生活クラブ運動グループではすでに生活クラブ東京ではユニバーサル就労や東京ワーカーズ・コレクティブやNPO法人エコメッセでも働きづらさを抱えた人への就労を支援していますが、超高齢社会、孤立やコミュニティの喪失など社会的なニーズを捉えた“新たな仕事の創造”への取り組みはさらに研究していきたい分野です。

 

稲葉さんたち民間の支援活動がホームレス自立支援法や改正住宅セーフティネット法の法制化を後押ししたように、私たちが地域の現状を把握する中で、何ができるのかを考え、実践していくことが社会全体をよくしていくことにつながるのだということを強く感じさせてもらったフォーラムでした。