子どもが求めているものは何か、こども食堂の取組みから学ぶ その1

★子ども食堂「Tsumugi」訪問記(大森北1-15-6)

全国に3,700以上も広がり、多くの人から支持を得ている「子ども食堂」。スタートは2012年、大田区蓮沼にある「気まぐれ八百屋だんだん」からです。大田区内には20近くの子ども食堂が生れていますが、現在は、新型コロナウィルス感染予防のためにやむを得ずほとんど休止中です。子どもたちは学校にも行けず、地域の居場所からも遠ざけられています。

「子ども食堂」の提供している「食」と「居場所」から、“子どもが求めているもの”を真摯に考えていきたいと思います。

今、非常事態であるからこそ“見失ってはいけないもの”を確認し、私たちはできうる限りの最善を尽くしたいと思うのです。

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街には様々な人が住んでいます。子ども食堂は子どもと街の人との接点となり、人との出会いを紡ぎます。人との“つながり”が日々の喜びやしあわせにつながります。

子どもが輝き、街が輝く機動力、「子ども食堂」!

  

 

  • 地域の子どもたちの居場所「Tsumugi」

区内で、一番新しい子ども食堂だと聞いて訪ねてみました。大森の鷲(おおとり)神社の裏の一角にその子ども食堂はありました。といっても昨年8月から子ども食堂立ち上げの準備をして、いざ始めようとしたのが3月6日、地域にとっては歓迎すべき門出のはずが、ちょうど社会は新型コロナウイルス感染拡大予防のために人が集るのを控えるようにといわれはじめた時期でした。そこでTsumugiはやむなく食堂での食事提供ではなくテイクアウトのお弁当提供に変更しました。100円の「つむべん」はもちろん地域の人に、子どもたちにとても喜ばれました。

i子ども食堂つむぎのチラシのサムネイル

Tsumugiは子ども食堂を始める前から、“地域の子どもたちの集える居場所”として開放されていたので、絵本やカードゲーム、人生ゲームなどが置かれ、子どもたちは中でも外でも自由に遊んだり、宿題をすることができました。外には大きな黒板があって、落書きができたり、あまり車の入らない通りなので、なわとびもできるそうです。

 

  • 子どもに活躍の場、みんなで創り上げるコミュニティー

Rちゃんは高校受験のためにTsumugiの中に自分の勉強スペースをゲットして、12月、1月、2月と大学生に勉強を見てもらっていました。それまでは大型ショッピングセンターのフードコートを利用していましたが、Tsumugiはそこよりもずっと落ち着いて勉強ができたそうです。そのうちRちゃんは「ボランティアリーダー」を任命され、時にはキッチンに入って、皿洗いをしたり、小さな子どもたちといっしょに遊んだり、次第に様々なお客さんが来たときの対応もするようになりました。

他にお店のグランドメニューを作ってくれた高校生もいますが、子どもたちには得意分野を生かして力を発揮してもらいたいというオーナー(本人は雑用係だといいます)です。

オーナーの石和田直孝さんは“まち全体で子どもを育てたい”という願いの中で、Tsumugiを拠点にした様々な夢とプランを持っています。たとえば地方との文化交流やワークショップ、スポーツ、アート、食の体験等、現に交友関係の広いオーナーの影響か、外国人の来客も多く、最終的には子どもたちと“世界を紡ぐ”という大きな挑戦をしていきたいという夢を持っています。

 

3月はじめには、山梨県大月への自然体験ツアーキャンプを企画、高校受験を終えたRちゃんも参加、初めて山の斜面を歩く経験をし、山、川、空気、星、月明かりに照らされる景色の美しさに圧倒されたそうです。

 

  • 子ども食堂の可能性、街全体で子どもを育てる

Rちゃんは、“Tsumugiがあったから、自分は大きく成長できた”と実感するそうです。それまで同年代の友だちとしか付き合ってこなかったけれど、いろいろな人としゃべることができるようになったこと、いろいろな人と出会って、学べたことなど、ボランティアリーダーという役の中で、自分の存在価値、有用感を掴んだという実感は貴重な体験だったようです。

 

子ども食堂で、あるいは街の人たちの出会いの中で、子どもたちがその存在を認められ、力が引き出され、自信をつけることによって、子どもが輝くのであれば、それに勝る環境はないのではないでしょうか。

Rちゃんの話を聞きながら、出会いは人を豊かにし、元気にし、それは街の輝きにも通じるに違いないと確信しました。