予算編成は大型開発(新空港線・羽田空港第1ゾーン)よりも区民生活に寄り添って! 2020年度第1回大田区議会定例会報告

新型コロナウィルスの感染拡大のニュースに触れると“社会のあり方”を改めて考えさせられます。大型開発や大規模なイベントよりも、基礎的自治体のなすべき事は、安定した区民生活の維持ではないかとさらに強く感じさせられています。

大田・生活者ネットワークは2020年度大田区一般会計予算、大田区国民健康保険事業特別会計予算、大田区後期高齢者医療特別会計予算、大田区介護保険特別会計予算、全てに反対をしました。以下が討論の内容です。(2020年度第1回大田区議会定例会報告・3月25日)

 

  • 予算編成は今日的な課題を解決しつつ、将来世代にツケを回さないシステムを!

今予算は「防災力の強化・新しい世代の礎となる予算」として編成され、一般会計は昨年より1.9%増し、約2,873億8千7百万円で過去最高の予算です。昨年の台風19号による多摩川氾濫の危機感から、自然災害の大規模化を予想しての災害対策だと思います。防災力は大変重要で、マイタイムラインの普及や迅速な水防活動ができるように仲六郷に「水防資機材センター」を設置、排水ポンプ車購入、全区立小学校への防災ヘルメットの配備など、日頃の災害への備えは必要不可欠です。

しかし、私たちは、一方で猛暑や集中豪雨という異常気象の根本原因、温室効果ガスの削減に本気で取組まないとなりません。気候変動の要因となる地球温暖化を食い止め、未来の命を守る取組みに今すぐ着手すべきです。再生可能エネルギーの利用拡大や省エネルギーの推進、緑地の拡大など、私たちの行動が世界や地球、子どもの未来に影響を及ぼすという自覚をもって「温暖化対策」を実践的な行動に移すべきです。しかし今予算からは地球温暖化への危機感や対策を見ることができません。

 

  • 人権尊重を教育の土台に!

子どもを取り巻く環境はますます厳しい状況です。2018年度の公立小中学校でのいじめ認知件数は前年度比67%の増加で、過去最多5万1674件だったと都教育委員会が発表しました。大田区では数の公表はありませんが、増加傾向です。また児童虐待も警察の発表では、昨年、被害に遭った子どもはやはり最多の1991人で、54人が死亡事例と言うことですから深刻です。

大田区での虐待相談件数も増加を続けています。いじめも虐待も将来にわたる心の傷となり、子どもの人権を踏みにじる、深刻な権利侵害ですから取組みを強めなくてはなりません。

小さいうちからの人権教育、実際に自分の意志や意見が尊重される経験、表現できる環境、学校組織に属さない、第3者機関のオンブズマン制度や相談しやすい環境は児童相談所設置以前に必要です。中高生の居場所ができたことは評価しますが、深刻な相談を受け留める機能はどの年代の子どもにとっても必要です。児童相談所における一時保護所からは学校に行けず、「学ぶ権利」や「子どもの意見表明権」が奪われているということが課題とされています。大田区の子どもの人権への認識や指針を明確にするためにも「子どもの権利条例」策定にむけての研究を望みます。

宿泊型の産後ケアの創設など、産前産後のケアを厚くしたことと、離婚と養育費に関わる総合相談の設置など、きめ細かなサービスの充実は大変評価しますが、近くに頼る人がなく、不安な中で子育てをする人が多いので、民間の子育て広場とも連携して、安心して子育てができる環境作りに向けてニーズを捉えながら取組んでいただきたいと思います。

 

  • 公園のあり方に見る庁内連携と区民参加のシステム構築を!

これまでに何度も指摘したボール遊びのできる公園作りや、ボール遊びができないとしたら、その看板のあり方、また子どもたちの主体性、「やってみたい」「試してみたい」という自ら育つ権利を、応援するという意味合いのプレーパーク作りを真剣に考えていただきたいと思います。

都市基盤整備部が踏み出せないのは、公園作りと言えば、整地をして、遊具や植栽を配置することが専門であり、「子どもの冒険心や探究心を育む公園とは」などという理念やビジョン、つまりソフトの部分を入れ込むことは苦手だということなのでしょうか。もちろんプレーパークの場合はただ公園を作れば良いのではなく、プレーリーダーという子どもを見守り、公園を管理する役目の人が必要なので、部局間連携、地域振興課や子ども家庭部、あるいは教育委員会との連携が必要です。連携は大変なことではあると思いますが、ぜひ取組んでください。

これからの区政の課題は全てにおいて、連携が必要になると思います。超高齢社会は、高齢福祉部だけでは地域での高齢者の安心した生活は回っていきません。地域振興課、都市基盤、防災、環境清掃、あらゆる部局との連携を考えていかなければなりません、連携が当たり前という風土を作って、住民福祉の向上を図っていただきたいと願います。

公園の続きでいえば、せせらぎ公園は調布地域に自然の姿をとどめている貴重な公園です。極力建物は建てないで、自然をそのまま残したいと考える人がいて当然です。今後、ワークショップが開催されるとのことですが、建物を建てることを決めてしまってから微調整だけをワークショップで考えるのは住民の意見を無視した行為だといえます。ワークショップという手法は様々な人の意見に耳を傾け、理解し合いながら、合意形成を図っていく民主的な手法であり、評価いたしますが、せせらぎ公園の場合は、もっと早くから公園全体のあり方を多くの区民と一緒に考えていく必要があったと思います。

大田区は今後、このような施設整備や施設の合築、複合化の計画が続くでしょうが、複合化することでのメリット、効果的な活用方法など、区民ニーズを捉えて、事後報告ではなく、事前に意見を聞く場をしっかり設けて、区民といっしょに汗を流しながら街作りに取組んでほしいと思います。

 

  • 大田区は23区で医療費トップ、それが保険料にも跳ね返る。

国民健康保険は保険料の負担が多すぎて、生活を圧迫してきています。世界的な新型コロナウイルス伝染の様子を見ると、国民皆保険を実現している日本はすばらしいとは思いますが、このままでは持ち堪えられません。特に大田区においては、区民一人あたりの医療費が23区中トップという不名誉な状況から早く脱出できるように医療費削減のための分析、改善策が急がれます。

長い目では、子どもの頃からの保健指導・栄養指導、運動の習慣など、ここでも部局間連携の必要性を感じるものです。

 

  • 負担ばかり大きくて、使い勝手の悪い保険制度では困る。区民ニーズを踏まえた地域との連携構築の助け合いの仕組みを!

介護保険制度は、介護が必要になっても住み慣れた地域で安心して自立した生活を送れるように社会全体で支える仕組みですが、団塊の世代が75歳以上になる2025年に向けての財源不足が強調され、給付の抑制が繰り返されています。

重度化防止の視点で言えば、軽度の状態から専門性をもつ適切な支援が必要なのに、要支援に該当する人が一年で卒業を促されているという状況は心配です。給付抑制から不健康な状態、危険な状態になるという悪循環に陥らないように、予算ありきではなく、その人にあった必要な支援は何かを見極めながらの生活援助が継続できるような仕組みにしていただきたいと願います。

今、高齢者が何に困っていて、何が必要なのか、地域では何を生み出すことができるのか、その可能性をもっと探る必要があります。先手先手を打っていかないと、地域が回っていきません。

そのためには町会だけではなく地域包括支援センターと出張所、民生委員、社会福祉協議会が連携して地域に目配りをしていく必要があります。日常生活の支援にシルバー人材センターの絆サービスと社会福祉協議会の虹のサポートが合わさって、絆サポートを始めることになりましたが、まだまだ担い手が足りません。

地域の助け合い、地域作りをしようというモチベーションは早いうちからの生涯学習に負うところが大きいと思います。地域活動から地域の課題が見えてくる、そこから助け合いがうまれるという流れを大田区にはぜひサポートしていただきたいと願います。

 

  • 地域作りには生涯学習へのサポートと地域課題の共有を!町会を超えて。

ここでも地域振興課との連携が望まれるところですが、例えば、ある出張所は地域で活動する区民活動団体には出張所の会議室を貸してくれずに、町会にしか貸さないというそうです。区民活動を通して、地域の人同士のつながりが強まり、また広がることや意欲的に学ぶ高齢者を支えることは、元気高齢者を増やすことでもあり、地域づくりにもなると思うのに大変残念なことです。

町会は地域を面で捉えながら、地域愛のような志で運営され、とても意義深い活動ではあると思います。しかし今、町会に属さない区民も増え、地域への意識も薄くなってきています。このような中で、大田区がどういう地域作りへの姿勢を持つかは大変重要です。町会だけを優遇するのではなく、多くの区民の主体的な活動を応援する環境整備を望みます。

以上、大型開発や観光施策などよりも、区民生活に寄り添った、様々な生活課題を解決するための施策、区政運営を求め、反対の討論といたします。