子どもが求めているものは何か、子ども食堂の取組みから学ぶ その2

 

★「ラーメン子ども食堂」訪問記(南六郷2-35-1-121)

  

素の自分を出すことができて、素の自分を認めてくれる場があることで、人は元気になれる、幸せになれる。そんな「居場所」の力を教えられた子どもラーメン食堂です。特に高齢者との関わりの濃厚な地域性は多世代交流の奥深さを教えてくれます。

 

  • 放課後の基地・子どもたちの育つ場所

 

大きな団地群の一角にある小さな商店街の中に「ラーメン子ども食堂」はあります。UR団地に初めてできた子ども食堂ということで、話題にもなり、毎日11時半から19時まで子どもや高齢者で賑わっています。

  

ラーメン子ども1杯200円、大人は500円。主催者の武井さんは嫁ぎ先がラーメン屋なので、野菜を煮込んだ本格的なスープで数種類のラーメンを提供しています。子どもたちはラーメンを食べるだけではなく、宿題をしたり、カードゲームをしたり、荷物を置いたまま目の前の公園で一遊びしてからまた戻ってきて遊んだりと、すっかり子どもの基地となっています。

店の壁にはスケジュールが書き込める大きなカレンダーがありますが、いつの間にか子どもたちが自分の誕生日を書き込むようになったといいます。まるでマーキングをしているかのようです。

  • 子どもと地域との接点、世代を超えた交流、大人から学ぶもの

団地ができて50年、高齢化は進み、店の前のテーブルで日がな1日将棋をしている高齢者もいます。そういう人もラーメン食堂に入ってきては、ラーメンを目当てにというよりは、スタッフや子どもと話をするのを楽しみにしている人もいるそうです。趣味のSNSで「子ども食堂ができたおかげで、団地が活気づいた!」と流してくれたおじいさんもいました。

 

ある方は子どもたちを喜ばそうとしていつも蝉を捕まえてきては、見せてくれるそうです。「気持ちわるーい」という子どももいますが、そのおばあさんの優しさは感じるようです。ある日、毎日来ていたそのおばあさんが来ないので、子どもたちは心配して、民生委員に訪ねに行き、入院したことを知ったそうです。

 

あるときは、外から子どもたちがかけこんできて、「おじいさんが倒れたよ」と。その子どもたちはおじいさんが、急に倒れたところを目撃していたそうです。ちょうど近くにデイサービスがあったので、事情を話して、所長さんと一緒に車イスにそのおじいさんを乗せて、みんなで家まで送り届けたそうです。子どもたちは所長さんの行動に見入っていて、すっかり車イスの操作を覚えたようでした。ちょうど出てきた自治会の役員さんとも子どもたちは顔を合わせ、挨拶もしたそうです。地域デビューが自然とできる子ども食堂です。

 

  • 子どもが育つ場所

小学6年生の不登校の女の子二人が警察官を見つけて、補導されるかもしれないと思って駆け込んできたことがあるそうです。日頃から“自分たちの気持ちを先生も親も聞いてくれない”と学校や親への不満をもらしていましたが、スタッフは“批判能力”も成長の証しだと捉え、見守っていたそうです。

ちょうど店に居合わせた青年が、自分も不登校だったこと、いじめられていて、学校には行きたいのに行けなかったこと、心配かけたくなくて、親にいえなかったことなどを話し、最後に「そういう時期があってもだいじょうぶだよ」と励ましたそうです。またそこに居合わせた地域の人たちの心配そうに優しく寄り添ってくれるまなざしは彼女たちの心をなぐさめたようでした。

武井さんは、「ここにいてもいいけど、どこにいるかわからないと探されるから、“学校に行きたくないから子ども食堂にいるよ”って言っておいでよ、とアドバイスしたそうです。

 

次の日から学校に行き始めた女の子たち。親たちも来て、「お世話になりました」というのだそうです。

親子で話し合いができたのか、自分のもやもやした気持ちから、少し抜け出せたのか、この後、この子どもたちが、強くなったように見えたそうです。

ラーメン子ども食堂では、“がんばってみる”という子どもに育ってほしい、自分の意見の言える子どもになってほしいと願いながら子どもたちに接しているそうです。

子どもたちを応援する温かいまなざしの中で、子どもたちは安心して“素の自分”を出すことができて、その子どもなりスピードで成長していけるようです。そして図らずも子ども食堂が社会との出会いを経験させてくれる場となっているようでした。人が成長するプロセスを教えていただいた子ども食堂でした。