羽田空港対策特別委員会で審議された陳情への討論

12月4日の羽田空港対策特別委員会で審議された陳情全てへの討論です。
陳情文そのものは、区役所2階の情報コーナーで見ることができます。
「令和元年度第4回定例会 請願・陳情文書表」です。

 

元第95号
B、D滑走路から川崎石油コンビナート上空への飛行ルート変更を国に求める陳情

この陳情は新飛行ルート案の南風時、B滑走路西向離陸、及び現行B、D滑走路の着陸やり直し(ゴーアラウンド)時、川崎石油コンビナート上空を低空飛行する危険な飛行ルートの変更を求めるものです。

川崎の巨大コンビナートにおいては、もし落下物などで危険物貯蔵容器や配管等のひび割れなどで、油の大量流失がおこれば首都機能や自然環境への悪影響が計り知れないということを理由としています。

国はこれまで「原則として川崎石油コンビナート上空を避け、適切な飛行コースをとらせること、それ以外の航空機については3000フィート、914m以下での飛行を行わせない」と川崎市に約束し、遵守してきたので、今回の飛行ルート案はその約束を破るものだともいえます。

昭和41年、1966年3月10日に川崎市議会は全会一致で「臨海工業地帯上空の飛行禁止に関する意見書」を採択しました。石油化学工場の多くに一触即発の危険物施設があり航空機が墜落した場合の惨事は想像を絶するものがあり、市民の安全を守るため「即刻本市臨海工業地帯を飛行禁止区域に指定されるよう強く要望する」という内容で、直後の3月29日にも同趣旨の請願が全会一致で採択されています。
さらに昭和45年、1970年7月、当時の市長と市議会が運輸大臣宛に「石油コンビナート地域上空の飛行制限措置強化を」と要望書を提出。それに対し、1970年11月に東京航空局長は回答、「原則として石油コンビナート地域上空の飛行を避ける」という東京国際空港長への通知、指示に至り、この「飛行制限」は、今日に至っています。

陳情者が指摘するように、航空機事故は離陸直後に起こりやすいとはよく言われるところです。157名の犠牲を出した今年3月のエチオピア航空機においても8月のモスクワでのエンジン停止による緊急着陸においても離陸直後の事故でした。

巨大なコンビナートへの部品の落下、あるいは墜落事故が起こった場合の恐ろしさは想像を絶するものです。

今年の第2回川崎市議会での審議の中で消防長がこのように答弁していました。「石油コンビナート等特別防災区域において航空機からの落下物があった場合には、危険物施設等の火災や破損及び危険物等の漏洩などが、さらに、航空機が墜落すると、複合的な災害に進展し、多数の死傷者の発生が危倶されるところでございます。」

住民の福祉、生命、財産を守ることを旨とする議会としては、新飛行ルート案におけるB滑走路西向離陸は容認するべきではなく、巨大コンビナート上空の低空飛行ルートには見なおしを求めるこの陳情の採択を求めます。

 

元第98号
羽田空港の新ルート及びヘリコプター飛行コースに関する陳情

この陳情は新飛行ルート、B滑走路西向き離陸に関する地元の方からの要望です。騒音測定基地を羽田小学校よりB滑走路に最も近い場所への移転、B滑走路西向き離陸の後、急上昇して早期の左旋回をするとしているが、そうなると騒音、排気ガスが羽田住宅地域に向かうことになるので、再検討を求めること、ヘリコプターの騒音一極集中の回避のために旧整備上に残っているヘリポートを移転するか、現飛行コースの見直しを求めること、新飛行コースの騒音測定、モニタリング調査にヘリコプターの分も含めて公表し、対象地域、住宅防音工事などの見直しも随時求めるものです。

最も住宅地に近いB滑走路西向き離陸はこれまで運用されていませんでしたが、新飛行ルート案での復活は地域の人々に失望を与えるものになっています。この陳情は歴史的経過と現状を見据えての地域住民からの陳情であり、飛行場と共存する大田区はしっかり受け止めるべきです。

B滑走路西向き離陸後の急上昇と早期の左旋回は、大型機であれば特に、多大な騒音と排気ガスが羽田住宅地域にもたらされることは、2017年の飛行検査機、6人乗りの小型セスナで85デシベルを越えていたということからも想像できます。

また、ヘリコプターの騒音被害の問題です。旧整備場は羽田空港の西、天空橋駅付近、つまり住宅地に近い場所であったものが、新整備場は東方向、D滑走路方向、住宅地とはかなり離れた場所に移転しています。ヘリコプターの発着と整備に関しては、旧整備場が使われており、したがって、騒音は住宅地に影響を及ぼしているわけです。海上保安庁のヘリコプターが最大95デシベルを越えていたということですから、大変な騒音被害です。ヘリコプターの飛行経路とヘリポートについて、区は国と協議をしながら対策を講じるべきです。

B滑走路西向き離陸の問題、ヘリコプターの問題、それぞれ日々の生活に支障をきたす、騒音被害は看過できない問題で、この陳情の採択を求めます。

 

元第103号 
B滑走路西向き離陸の影響に関し、騒音と排気ガスの予測数値を公表してほしい陳情

この陳情はB滑走路西向き離陸の際には、燃料満載でエンジン出力全開のために相当な騒音や排気ガスが予測され、地域住民への影響が大きくなることから、騒音や排気ガスの予測値を早期に公表することを求めるものです。

国土交通省のホームページ「羽田空港のこれから」の中の「機種ごとの音のデータ」を見ると離陸時の1000フィートの騒音レベルの指標が示されていません。地域住民にとっては、毎日の暮らしに影響する、大型機の離陸時の騒音や排気ガスの影響です。説明会資料に「排気ガスの影響はごくわずかで影響は限定的」と書いてあったとしても正確な誠実な予測値を示すべきです。速やかな公表がなされるように国土交通省に働きかけをするように要望し、この陳情の採択を希望します。

 

元第89号 
新たな飛行ルートによる騒音被害を周波数世帯ごとに動的に計測し公表を求める陳情

この陳情は、健康被害は航空機騒音とともに各周波数帯域ごとに様々な被害が想定されるので、今後、起こりうる被害からの防護の立場からも騒音被害を周波数帯ごと動的に計測、公表をしてほしいとの陳情です。

平成12年環境庁・低周波音測定マニュアルには、低周波を原因とする影響として、「物的なもの」として戸や窓ががたがたする、置物が移動する、「生理的なもの」としてよく眠れない、気分がいらいらする、頭痛・耳鳴りがする、吐き気がする、 「心理的なもの」として胸や腹を圧迫されるような感じがするといった症状が紹介され、低周波音が原因である場合は、20Hz以下の超低周波音による可能性と、20Hz 以上の可聴域の低周波音による可能性が考えられると述べています。

航空機の種類や離陸、着陸に応じて、経時的に変化する周波数帯ごとの騒音被害を計測することの必要性がわかります。

平成17年、D滑走路建設に際して、国土交通省は「環境影響評価」が行いましたが、その中で低周波の影響の測定が20か所、大田区内では14か所で実施されました。

調査結果では、音圧レベル、G特性音圧レベルともにおおよそ70~90デシベル程度であり、感覚閾値と睡眠閾値の評価の目安、100デシベルを越える地点がなかったという結果でした。心理的、生理的、物理的影響のそれぞれの観点から評価した結果、いずれもほとんど影響はないと考えられると述べています。
しかし、評価のところにはさらに次のように書かれています。
「新設滑走路、つまりD滑走路、供用後の低周波音の予測については、音圧レベルで評価されることから、将来住宅地域を低空で飛行するような、現状と大きく異なる経路の設定、あるいは想定した航空機より低周波成分の多い航空機が就航しない限り、現況の環境が継続すると考えられる」
これは裏返せば、“住宅地域を低空で飛行するようなルートや低周波成分の多い航空機の場合は低周波の環境影響は少なくない”ということです。

以上のことから様々な被害想定を研究し、対策を図るべきであり、この陳情の採択を希望します。

 

元第96号
温暖化進行の要因を生む羽田空港離着陸増便を減便へ調整を国交省に求める陳情

航空機の排ガスは地球温暖化の一要因であることから、発着枠の調整、減便を国交省に求めるものです。

陳情者の示す、2017年度国交省環境政策課提出報告によると運輸に占める二酸化炭素排出量は2億1300万トンで全co₂排出量の17.9%、その中で航空機は1040万トンで4.9%を占めています。

大きな割合ではないとしても持続可能な社会をめざす方向性のうえから、様々な分野でco₂の削減をめざすことは当然です。世界的な温暖化の影響は異常気象に見られるように私たちの生活を脅かすものであり、地球の未来、次世代への責任を考えるとき、目先の経済性、経済成長だけを追求してよいものではありません。今の社会の課題を解決していくことこそが私たちのやるべきことであり、平和で成熟した社会をめざすべきであり、陳情の採択を求めます。

 

元第100号
羽田空港増便、飛行経路変更実施時の大田市場の環境影響評価実施を都に求める陳情

大田区東海3丁目の中央卸売市場、大田市場は、新飛行ルート、南風時の着陸コース、AC滑走路に挟まれた位置にあり、有害物を含む排ガスにさらされることが危惧されることから、大気汚染が市場に及ぼす環境影響評価を求めるものです。

新飛行ルートでは南風時に毎時44機が100mの超低空で飛びます。直下による航空機による大気汚染は特に直接、外気にあたる生鮮食品、野菜や果物、鮮魚貝類に影響を及ぼすと考えられます。食品の安全性と信頼性は消費の要であり、消費者、住民の健康、食品の安全性は確保されなくてはなりません。

事業者が安心して運営できるように、また住民も安心して消費行動をとることができるように東京都に環境影響評価を求めるこの陳情の採択を求めます。

 

元第87号
羽田新飛行経路について学校や保育園、幼稚園等の関係者向け説明会の開催を求める陳情の採択を求めます。

これまで国土交通省は住民説明会を開催してきましたが、特に保育園、幼稚園、学校関係者向けに特化してきたわけではありません。子どもたちの日常、生活権、遊ぶ権利、学ぶ権利の環境の確保に関わることなので施設を通して丁寧な計画の周知や説明は必要だと考えます。大田区が仲介をして国土交通省に説明の依頼をすることもできるのではないでしょうか。
よって、陳情の採択を求めます。

 

元第93号
新飛行経路に関係する国交省との協議内容を羽田空港対策特別員会に報告を求める陳情

区民生活に多大な影響を与える新飛行経路の問題について、大田区と国土交通省との協議の内容の詳細が委員会に示されるようにという陳情です。

大田区は本年1月30日に区民の不安にこたえるためにも国交省に要望書を提出し、この11月に回答が得られました。しかしこれで不安が解消したわけではなく、注視していかなくてはならないことは多くあります。これまでも委員会に対して様々な報告がなされており、今後持たれる国交省との協議について、委員会への報告は当然なされますが、遅すぎる協議でもあり、その進捗を心配する区民の思いは当然であり、陳情の採択を求めます。