学校教育を本質から問い直す・麹町中学の挑戦
学校教育を本質から問い直す
教育の目的とは? 千代田区立麹町中学校
2月18日、東京ネット・子ども部会視察
東京ネット・子ども部会での視察で千代田区立麹町中学校に行った。
今の社会には解決すべき課題が山積している。当事者意識、問題解決能力はこれからの時代を切り開いていくための重要な力であり、生きるからにはお客様ではなく、社会を創っている一員だという意識が必要だ。子どもの育ちに本質的に必要なもの、教育の目的は何かを突き詰めていく姿勢は私たち大人が常に持つべき姿勢だと教えられた麹町中学の視察だった。教育の可能性に希望を感じる一日だった。
永田町の官庁街、ビル群の中に、麹町中学はある。
1時15分からは自由に授業参観。大勢の参観者の中、授業が淡々と行われている。授業は教師と生徒が対話的で、リラックスした空気感がありながらも生徒はみな授業に集中している印象を受けた。
続いて2時からは工藤校長の講義。熱のこもった講義は質問時間も入れてなんと4時間続く。工藤先生の教育への情熱、”教育の力は社会を変え得るのだ”という思いがずんずん伝わってきた。 “本質を問う教育”は今の教育現場の問題を鋭く突く考え方であり、どんな子どもになってほしいか。どんな社会を望むか、最上位の目標を意識し、“手段と目的”を取り違えないように、との示唆に富んだ話だった。
たとえば、麹町中学には校則がない。校則がなくても、自分で考えて自分で律していく子どもを育てるのが本来の教育である。指示を与えてばかりだと、自分自身で考えない子どもになってしまう。サービスを求め、人を批判するばかりの人になってしまう、と職員間での徹底的な議論の末、行き着いた結果だそうだ。
他にも改革は、宿題も定期テストもなくし、わからないことを自分で克服していく学びの形態、自分の学級が一番大事になりがちな「固定担任制」をやめて全員担任制にするなど数々ある。どれも風通しのよい職員体制を心がけ、生徒や保護者とも民主的な話し合いを持ちながらの数々の改革であり、結果、いじめや不登校がなくなり、子どもたちは学ぶ楽しさを知り、自ら学ぶようになったという。
2019年の日本財団の18歳意識調査を見ると「自分で国や社会を変えられると思う」と考える子どもも「社会課題について家族や友だちなど回りの人と積極的に議論している」子どもの数も日本は先進国の中で圧倒的に低い。このことを大問題だと考える麹町中学。当事者意識を持って、他者の存在や社会との結びつきを意識していく教育のあり方を追求し、”早く社会に出たい”、”社会で自分の力を発揮したい”と思わせることが学校の役割だという。
麹町中学の教育目標は、自律(自ら考え、判断し、行動する)・尊重(違いを理解し、他者を尊重する)、創造(豊かな発想をもち、創意工夫する)。学校のすべてのプログラム、行事において、子どもたちは“当事者意識”をしっかり持つことを学校生活の中心においている。