助けを求める人は後を絶たない。SOSに応えるぷーさんの家

子育て支援の必要性から大田区にファミリーサポート事業の開設を訴えた小野さん(NPO法人「矢口子育て支援ぷーさんの家」代表)。その活動から2002年に大田区に※ファミリーサポート事業「ファミリーサポートおおた」が誕生します。しかし緊急的な対応には追いつきません。なんとしても虐待はなくしたいと願い、自宅を開放して、仲間と共にファミリ-サポート事業を補完する機能をもつ、NPO法人「矢口子育て支援ぷーさんの家」を立ち上げました。

小野さんは、現在80歳、今では、家族も同じ思いで、地域の子どもたちのサポートに当たっています。事例の数々を聞きながら悲しい社会の歪みを知ることになりました。あまりにも足りないサポート、子どもがしあわせに生きるための環境作りを追究してこなかったことを突きつけられる思いです。

“子育て支援は、子どもを抱く親を抱くことだ”とだれかが言っていましたが、小野さんの実践からはそれを窺えます。実態を知ることから出発したいと思います。

【数え切れない事例から】

・夫のDVから逃げてきた母子。さらに逃げるためにはお金が必要。働く間、赤ちゃんをあずかる。

・生まれてから10日目の赤ちゃん、母親がインフルエンザにかかる。保健所から連絡があって、田舎から祖母が来るまでの一日半、赤ちゃんをあずかる。

・産後うつの母親、何も手に付かない。保健所からの連絡で、生後1ヶ月の赤ちゃんの世話にかけつける。数日、通って、赤ちゃんの世話をし、母親を休ませる。母親、赤ちゃんの抱き方もわからず自信を失っていたが、見よう見まねで、覚えたよう、やがて元気になる。

・1歳の子どもを置いて、失踪した母親。残された父親は乳児院ではなく、なんとか自分で育てたい。児童相談所の職員と保健師と父親が訪ねてくる。保育園では足りない時間を世話し、赤ちゃんの世話の仕方を父親に指導する。

・母親が0時に出産予定。上の子どもをあずかってくれるところはない。一晩あずかる。

・料理屋で働く両親。17時から22時まで子どもをあずかる。

・ひとり親。キャバクラで働く母親。子どもは1歳。夜中の2時にあずけに来て、次の日の朝、8時半に迎えにくる。

・ひとり親が4人。みんなキャバクラで働く。子どもはまだ生後7,8ヶ月なのにコンビニのおにぎりを持ってくる。ほぐして柔らかくして食べさせる。迎えに来た母親たち、座り込んでひとしきりおしゃべりをしていく。話しを聞くのも役目。休むひまもないであろう母親たちにもおにぎりを渡す。

・母親からの虐待を受けている高校生。態度の豹変する母親だが、子どものいうことより母親のいうことを信じてしまう児童相談所。行き場のない高校生を2週間あずかる。

※ファミリー・サポートおおた:育児の手伝いをしてほしい人(利用会員)と育児の手伝いをしたい人(提供会員)を結ぶ会員制の育児支援ネットワーク。区がこの援助活動をバックアップし、双方の要望を調整する。対象は4ヶ月から12歳まで。保育園の送迎及びあずかり。学校の放課後のあずかりなどで、あずかりは提供会員宅で。1時間800円。