視力を失っても最大限、その人の能力が生かされますように。大田区議会・第4回定例会報告

第4回定例議会が終わりました。今回は一般質問において「中途視覚障がい者へのサポートについて」というテーマでの提案をしました。

緑内障や糖尿病で人生の途上で、視力を失う人は少なくありません。見えないことでの不自由さから外出を控えたり、行動がせばまりがちになる人も多いことでしょう。しかし適切なサポートを受けることで、生活の幅をひろげることもできるのです。実際に中途視覚障がい者の方からお話を伺い、また専門施設の見学や※ロービジョンケアに取組む眼科医のお話を通して、大田区のサポート体制の拡充を求めました。特に視覚障がいに関する専門機関は新宿区など遠方に集中しているので、少なくとも区内、障がい者総合サポートセンターにおいては、白杖や優れた福祉機器の見本に触れられたり、歩行訓練士を呼んで区内で訓練を受けやすくするなど、配慮が必要ではないかと訴えました。

 

※ロービジョン:全盲でなくても、メガネなどの矯正をしても見えにくく、日常生活に不自由をきたす、広い意味での視覚障がい者

 

質問の概要

  1. 地域福祉課など、視覚障がい者に対応する職員は、日本点字図書館など専門機関に行って、研修を受けてほしい。
  2. 障がい者総合サポートセンターに白杖、基本的な福祉機器の見本をおいてほしい。
  3. 中途視覚障がい者への就労支援を強化してほしい。
  4. 眼科医と連携をとって、生活支援につなげる情報提供をしてほしい。

答弁を含めて13分です。ぜひお聞きください。

https://www.youtube.com/watch?v=O61wNPuRrIw&feature=youtu.be

 

以下、質問全文です。

 

「中途視覚障がい者へのサポートについて」伺います。

緑内障、糖尿病、網膜色覚変性症、あるいは事故で人生の途中で視力を失う人が少なくありません。私たちは日頃、意識せずに今日は富士山がよく見える、とか紅葉がきれいなどと景色を見ては、気持ちが癒され、またあらゆる情報を目から取り込みます。情報の80%は視力から取り込むそうです。全く見えない状況や、視力がだんだん落ちてくることを想像することは難しいことです。

 

大田区では視覚障がいで手帳をお持ちの方が1309人と聞いていますが、手帳がなくても、病気の途上だったり、あるいは、高齢によって視力を落とした方を含めると低視力・弱視等の方はかなり多いと考えられます。全盲でなくても、メガネなどの矯正をしても見えにくく、日常生活に不自由をきたす、広い意味での視覚障がい者のことをロービジョンといいますが、日本眼科医会の調査では国内の視覚障がい者人口は164万人、うち、失明者が18万8千人で、145万人がロービジョンだという推定値を公表しています。

高齢化の進展のことを考えても、残存する視力を使って日常生活を多角的に支援する「ロービジョンケア」に取組む必要があると考えます。

 

大田区で手帳を取得した知人は、現在、同行援護サービスを受けて、ガイドヘルパーの付き添いで、高田馬場にある「日本点字図書館」に生活訓練に通っています。そこでまず自分に合った白杖を手に入れたそうです。白杖は、身長に合わせた長さはもちろん、材質や重さ、折り畳み式かどうか、先端が路面に沿って回転するものとしないものなど機能別にいくつかの種類があり、実際に使ってみないと使い勝手がわかりません。白杖の使い方は歩行訓練士によって、実際の道路を歩いて行われますが、点字ブロックの意味、横断歩道の渡り方、階段の歩き方など、丁寧に教えてくれるそうです。

 

日本点字図書館はその名称の通り、点字図書やCDの貸し出し、対面朗読なども行っていますが、その他に相談支援、ニーズに合わせたサービス利用計画の作成、合わせて訓練のメニューも揃っています。また視覚障がいを補う様々な機器の展示と販売も行われていますが、文字を100倍にも拡大してくっきり見せてくれる拡大読書器、音で時間を教えてくれる音声時計、音声体温計など様々な福祉機器を見て、日本の優れた工業技術に感心しました。他にもパソコンの音声機能、アイパットの拡大機能、パソコンやスマホの画面が白地に黒の文字では見えにくいので、黒字に文字を白、あるいは黄色にする色反転機能など、さまざまなアプリケーションを活用して、残存視力で生活をしやすく、あるいは仕事を可能にする工夫、研究がなされています。生活の道具にしても白いまな板に白い大根では見えませんが、黒いまな板だとよく見えるとのこと、生活の便利グッズも展示されていました。知人はここでスマホの使い方を習い、また訓練士はどこにでも来てくれるので、今は自宅にきてもらい、調理をならっています。

 

1,お聞きします。

地域福祉課、障害者対応の職員、障がい者総合サポートセンターの職員には、日本点字図書館など、専門支援施設に行って、どのような福祉機器があり、それによって、何ができるのか、どのような訓練が受けられるのかを実際に見てくることを提案しますが、いかがですか。

 

答弁:福祉部長 今岡正道

障がいがある方に対して、個々の障がいの特性に応じた適切な情報提供ができるよう、職員の能力を向上させることは重要です。地域福祉課などの職員などには、庁内で研修を行っているほか、東京都心身福祉センターの専門研修などを受講し、必要な知識の習得に努めています。また毎年行われている国際福祉機器展で、実際に最新の機器を見学することや専門的な施設を訪問し、知識の習得を図っています。そのほか、他自治体の動向等の情報収集も行っています。職員の知識習得については、研修参加や専門的な施設への見学など多様な方法を用い、引き続き取組んでまいります。

  

現在、地域福祉課の窓口では、リストを渡しているだけですが、職員が様々なサポートの実際を実感することで、少しでも中途視覚障がい者に対して、具体的な寄り添った対応ができるのではないでしょうか。

 

さて、障がい者総合サポートセンターでは声の図書室があり、本など印刷物の音声化、点訳して貸し出すというサービスを行っていますが、さらに視覚障がい者の生活を支えるサポート体制を拡充することを希望します。

 

視覚障がい者にとっては、白杖は命綱ともいえますが、現状は地域福祉課でリストを渡されるだけで、見本さえ、区内の行政機関のどこにもないことは大変残念です。このことは多くの視覚障害者やロービジョンケアに取組んでいる眼科医からも指摘されているところです。現状、区内では白杖を持たずに歩行訓練も受けたことがないロービジョンの方も多いと聞いています。訓練士はどこにでも来てくれるのですから、多くのロービジョンの方が、自分に合う白杖を手に入れ、歩行訓練を受けられるようにするべきです。

ちなみに白杖は、品川区は社会福祉協議会に、目黒区では、障害者支援課の窓口に見本が置かれています。世田谷区では5つの総合支所で無料配付されています。

 

2,お聞きします。

障がい者総合サポートセンターに白杖の見本を置けませんか。また拡大読書器や音声時計など基本的な福祉用具や生活に便利なグッズの紹介をすることはできませんか。これは視力が衰えた高齢者をはじめ、手帳を持たない、多くのロービジョンの人にとっても有用なものです。豊富な機器の揃う専門的施設に行ければよいのですが、遠方まで出かけることは視覚障がい者や高齢者にとっては、難しいことです。身近なところで、手にとって、安心な生活につながるものに出会うことや、遠方であっても訓練に通う意欲喚起がなされれば、さらに喜ばしいことです。

 

答弁:障がい者総合サポートセンター所長 森岡剛

白杖は、体格や歩き方、使用目的によって、形状や材質、長さなどが異なるため、専門家のアドバイスをうけながら購入することが推奨されています。障がい者サポートセンターでは、白杖や福祉用具に関するご相談があれば、丁寧にお話を伺い、必要に応じて適切な支援機関等をご紹介しております。現時点で白杖や福祉用具の見本を揃える予定はございませんが、今後、中途視覚障がいの方に向けて、どのような支援ができるか、調査研究してまいります。

 

次に就労支援について、お聴きします。

ハローワークに相談に行った区内の視覚障がい者は2019年度18名で、うち就職できた人は5名でした。サポートピアで、昨年就労の相談に来た人は3名、現在、就労定着支援をしている人はたったの2名といいますから、かなり少ない状況です。

中途失明者の就労支援に20年以上関わっている「NPO法人タートル」に聞いたところ、今は拡大読書器や音声機器、音声パソコンや音声ソフトなど、IT の力を借りて、工夫次第で就労は十分可能だと言われていました。それまで培った仕事の実績、スキルや知識を活かさないのは、職場にとっても損失なはずです。

現状、履歴書提出などの問題もあり応募さえできない状況もあります。行政として、働くことをあきらめている人へのアプローチ、代筆などの柔軟なサポート、企業の受け入れ体制、環境整備へのサポート、合理的配慮の周知、啓発が必要です。

 

3,お聞きします。

サポートピアには企業への働きかけとマッチング、訓練士の活用を通して、中途視覚障がい者に向けた就労支援、就労定着支援を強化していただきたいと考えますが、いかがですか。

 

答弁:障がい者総合サポートセンター所長 森岡剛

失明や急な視力低下により、それまでの日常生活を送ることができなくなった方には、計り知れないご苦労があると推察します。そのような状況でも前向きに就労を希望する方には、区としても丁寧に寄り添い、支援する必要があると考えております。障がい者サポートセンターでは、相談はもとより、求人情報の提供や履歴書の書き方といった個別指導を行っております。また就労前の訓練が必要となった場合には、東京都視覚障害者生活支援センターなど、視覚障がいの専門職がいる訓練機関をご案内しております。今後も引き続き、関係機関と連携し、中途視覚障がいの方が、一人でも多く就労できるよう努めてまいります。

  

失明原因の第1位の緑内障は、40才以上の20人に1人の有病率といいます。高齢化と共に増加しますが、自覚症状がないので、気が付いたときには視野が狭くなるなどの進行を止めるのが難しく、早期発見、つまり検診が重要だといわれています。大田区では2019年度の特定健診のうち眼科検診の受診者数が1642人、緑内障罹患者が57人で3.4%の発生率、精密検査を要する人が367人ですから、検診のさらなる推進と共に、ロービジョンケアへの取り組みの必要性が示唆されます。徐々に視力が落ちていく現実にある区民に対して、少しでも有益な情報を提供する必要があります。

 

4,お聞きします。

区内の眼科医と連携をとって、大田区のサポート体制、福祉メニューの情報提供をしていき、生活支援につなげることが必要だと考えますが、いかがですか。

 

答弁:福祉部長 今岡正道

区は、区内三医師会と健康政策部・福祉部などの関係部局による会議体をはじめとしたさまざまな機会を通して、医療機関に必要な情報を提供し、課題等を共有しております。また個別の相談においては、相談者の個々の症状や相談内容に応じ、障がい者手帳の取得手続きや今後の生活に必要な障がい者サービス等を決定しています。その過程の中で、視覚に障がいのある方に関しては、指定医として診断書・意見書を作成する眼科医と、必要な情報等の共有・確認しております。引き続き、中途視覚障がい者支援のため、医療機関が必要とする情報については、適宜適切な提供に努めてまいります。

 

今年、視覚障がい者を目的地まで誘導するスーツケース型の移動支援ロボット「AIスーツケース」の共同開発が日本IBM、アルプスアルパイン、オムロン、清水建設、三菱自動車の5社により開始されました。発起人兼技術統括者に就任したのは、長年日本IBM社で、研究開発に関わってきた浅川智恵子さんです。彼女は中学2年生で失明しましたが、工学博士となり、さまざまな技術開発で世界に貢献しています。障がいから見えてくるニーズが社会のインクルージョンの実現につながることを示しています。

区内においても障がい者理解をさらにすすめ、そのニーズを吸い上げ、だれもが自分の力を発揮し、生き生きとくらしていける大田区であることを願って質問をおわります。